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黒の教団編
あれだよ、あれ、あの言葉。



嗚呼、何だろう、胸が渦巻くこの気持ちは。


例えるなら『イライラ』。違う、もっとこう奥底から煮え滾るような………そう、『ドロドロ』だ。


でもな、なんだっけな。この感情には適切な名称があったはず。
あー………出てこない。喉元に突っ掛かってるんだけど。


こーゆー思い出せないでモヤモヤした感じも嫌だな。



一人悶々と考えている僕の目の前でなんか演説してる痛い人が約一名。


浅黒い肌とまあまあ整っている顔。額に刻まれた聖痕と癖毛混じりの黒髪。


あんた、敵じゃん。


「なんてツイてるんだ、俺は。こんなところで少年に逢えるなんて……っ。この喜びを語り尽くせない自分の無知さに腹が立つよ、全く」


「………なんでここにあなたがいるんですか、ティキ・ミック」



ただいま、宿の角部屋に滞在中の僕。隣室にラビと探索部隊の部屋を取ってあるけど、調査のために街に出ていったのか静かだ。あの眼帯、肝心なときに使えない。



「この街に来たのは偶然だ。だが、しかし!少年と逢えたのは必然なんだっ。なにせ、俺らは鋼鉄の赤い糸で結ばれているからな!」

「馬鹿言わないでください。あなたの赤い糸はドブに住むミジンコと繋がってるんですよ」

「そうだな、俺は確かに器の小さい人間かもしれない。少年には迷惑かけてばかりだな。そのせいで機嫌を損ねているならすまない」

「聞けよ、人の話。あなたは器以前におつむが小さいんですよ。年頃の女の部屋に侵入するとかありえませんよ、ダニ虫野郎」

「そうだな、少年は少女だもんな。たとえ恋人同士であろうとお互いのプライバシーは守られて然るべきだ」

「あれぇ、空耳?空耳ですかね?聞き違いでも聞き捨てならないことってあるんですね」

「よし、非は俺にある。この身で出来ることなら何でもしよう。さぁ、言ってみろ少年」

「じゃあ、死んでください」



僕の極上スマイルとミジンコの婿の引きつった笑みが対峙して数秒停止。


「ははは、少年は冗談が好きだなー」

「いやだなぁ、冗談なら、マッパで街中走り抜けろって言いますよ」

「なるほど、愛の試練だな」

「だから聞けよ、人の話。この色黒天パ、マジでチリチリパーマにしますよ、バーナーで」

「ああ、いいなそのソプラノボイス。その声でなじられると正直、勃つ



ピシッと空気が凍りつくのに気付かずに、眼前で変態天パが照れる。








「ブッタ斬って干乾しにしてやりますよ」







閃いた『神の道化』の爪が変態天パに殺到する。


「―――っよし」


手応え有。と思ったら、床に穴が空いただけだった。
ああ、こんちくしょー。あの野郎は瞬間透明人間だった。

あの躯、蜂の巣にしてやろうと思ったのに。逃げ足だけは早い。



「……あーあ、宿の修繕費ちゃんと降りるかな」



これで経費が落ちなかったら、アイツ貧乏神だな。それと、疫病神も追加だ。


「―――――あ」



思い出した……『ウザイ』だ。





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あきゅろす。
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