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「シルフィア、散歩に行こうか。こんなとこに居て考え込んでたら気が滅入るだけだろ?」



シルフィアが頷いたのを見てシルフィアを抱きかかえ車椅子に乗せてやってシンクは中庭へと続く道を歩いた。


この間まで桜が咲いていてまだ春だと思っていたのに木々は青々と生い茂って太陽は真上に上がり光り輝いていた。



〔気持ちいい〕



その文字を見てシンクはよかったとそう笑った。

シンクのその姿をシルフィアはじっと見つめた。首を傾げたシンクに見てと言うように紙を指差した。



〔どうかしたの?最近凄く悲しそう〕



「…僕?」



シンクはシルフィアの書いたその文字に吃驚して足を止めた。首だけを回してシンクを見つめているシルフィアはゆっくり頷いた。



「昔のこと思い出してたんだよ。そんなに昔じゃないんだけどシルフィアと出会ったときのことを」



シルフィアは首を前に戻すとシンクには見えていなかったが少しだけ微笑んだ。



〔もう忘れて。前に進めないから。後ろばかり見てると〕



前向きになっているシルフィアの姿にシンクは驚いた。この間まで自分の置かれた不運に泣いて荒れていたシルフィアは其処には見えなかった。


シンクは仮面の下で隠された顔を困ったように眉根を寄せて、嬉しそうにふんわりと笑った。



「…そうだね」



もうシルフィアは僕のところから離れてくのかな。もう傍に居ることはできないのかな。僕には愛する権利なんてないから。

シルフィアの未来を奪って、翼を千切っておいて、こんなにも綺麗で純粋なシルフィアを、愛していいだけの触れていいだけの汚れてない手は持っていない。

…僕は、汚れてるから。







早く忘れて。もっといい方向に考えていきたいの。じゃないとこの気持ちは枯れてしまうから、。来が見えてこないから。


私、シンクの傍に居たいから。でもこんなお荷物になる私なんて、邪魔になるだけなのかな。

今も仕方なく傍に居てくれてるだけかもしれない。同情の愛なんて欲しくない。







二人の愛、気持ちはすれ違い人知れず育ち、切ないものへと姿を変えていく。









修正090419





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