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どうして…?私は、ただ歌があればよかったのに。声どころか満足に歩ける足まで無くなってしまった。
歌うことも働くことも一人で生きることもできなくなってしまった…。
どうして、私から何もかも奪うの…?
目の前にはペンと紙束。横には何時でも乗れるように待機させてある車椅子。車椅子に付けられた点滴。存在してる場所は病院。
人生と声を奪った場所。
先日医師に告げられた事実が##name1##の脳内で繰り返し蘇っていた。
「貴方はもう声を出すことは可能性から言うとできないでしょう。リハビリ次第では歩くことはできるようになるかとは思いますが…。
貴方の歌はとても有名です。だからこそ、残念です。
貴方の声帯は魔物に傷つけられ、大部分を取り除く以外助かる方法はありませんでした。
少し残っていますが、その声帯なら話すこともままならないでしょう。許して下さい。貴方を助ける方法をもっていなかった私たちを」
声が無くなるくらいなら、死んだってよかったのに。もう歌えない、話せない。私の声は、醜い…。
「アンタ、また暴れたんだ?」
見舞いに来たシンクは、床に散らばった花瓶だった物と、萎えて元気がなくなった花を見た。
呆れたような表情の仮面を外したシンクを##name1##は睨んだ。近くにある物を投げつけるが、シンクは難なく避ける。
「いい加減認めなよ。アンタはもう前には戻れない。歌が上手だった##name1##には戻れないんだ!」
手首を掴み顔を近づけ、シンクは声を荒げ怒鳴る。
見る見るうちに##name1##の目には涙が溜まり、音もなく流れ落ちた。
悲痛な彼女をシンクは、見つめるしか出来なかった。自分がしてしまった罪を認めるために。
声を失い意思表示ができなくなったために黙って俯いて泣く##name1##にシンクは心が痛んだ。
「許してくれとは言わないよ」
今傷心の##name1##に掛ける丁度良い慰めの言葉が見つからなかった。
シンクはまた来ると告げて病室を後にした。
扉の閉まる音を聞いて##name1##は膝の上に掛かる真っ白なシーツを握りしめて心が痛むままただ静かに泣いた。
泣き叫ぶこともできない喉を憎んで##name1##はただ泣くことしかできなかった。
修正090418
白
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