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歪みの国のアリス
2度目の拒絶(兎アリ※流血表現有り)





目の前の現実に。
零れ落ちてく雫を止める事が出来なかった。


ただ、ぼやけた世界から抜け出したくなくて。
見たくない。見たくないとひたすらに願うけれど。
現実は背後からやってくる。


立っているのがやっと。

そんな私に、紅く染まった鈍く光る物を手にした白ウサギがそっと近付いてくる。
その気配を怖いと思うその片隅に、温もりを感じたのは後で知った事。

白ウサギは私の頭を優しく撫でた。

「僕のアリス。泣かないで。アリスを悲しませる物はもういないんだよ」

白ウサギは私のぼやけた視線の先を促した。

ひとつ、瞬きをすると、紅く染まった大好きな人が横たわっていて動かない。

「アリス…」

白ウサギは温かい手で頭を撫でてくれるけれど、私の指先の冷えはそれだけでは温まらない。



「…いないのよ」


「アリス?」

首を傾げて白ウサギはアリスを覗き込む。

「白ウサギなんていないのよ…!」

「ア…リス…?」

今度は、白ウサギの視界が歪んだ。

「僕はアリスの望みを叶えただけ…」

アリスは力なくそこに膝をついた。涙が畳を濡らす。

「私は…!!こんな事望んでなんかない」

白ウサギの視界にいるアリスはみるみる歪む。











アリスの頭を撫でていた手がそっと離れた。

「もう、大丈夫」

視界の中のアリスから歪みが消えた。同時にアリスの涙も消える。

「あ…」

「アリスを傷つける物は、この世から消してあげる」

「…違…っ!!」
慌てて振り返ったアリスの瞳に映ったのは霧がかかったように薄くなった白ウサギ。



「それが僕でさえも」
声が出ない。


そしてひとつ瞬きをした後に、そこにいたはずの白ウサギの姿はなかった。

そして。
アリスの記憶から白ウサギという存在が消えた。





最後に吸った歪みは、自身をも歪ませて。



再びアリスの元へ舞い戻る。




   アリスを求めて…





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