桜蘭高校ホスト部
開いた扉(馨ハル)
開かないで
開かないで
扉の前に立って誰も入れないように。
中を見られないように。
そっとしておいてほしい。
なのにどこか心の隅で誰かに求めてる。
扉の鍵を持った誰かに。
解放して下さい。
解き放して下さい。
僕と言う名の南京錠を壊して下さい。
僕を…解放して下さい。
「おーい、ハルヒー?」
午後のおやつ時。
ソファに座った僕の右隣。
姫達の接客をしててどーしてこんなとこでしかも話の途中で。
寝れるんだろうか。
確かに午後の授業の途中から瞼を重そうにしてたし、話しかけてもボーッとしてたからもしかしてとは思ってた。
そんなに眠いのなら帰って寝ればいいのに。
まぁきっとハルヒの事だから奨学生制度とか気にして、なるべく早退とか避けたいのかもしれないけど。
「ハルヒ君、学校から帰ってからも家事をしてるのよね、きっとお疲れなんだわ」
姫達が心配そうな顔してる(目はハートだけど)。
せめて接客の時間まで頑張ってほしかったなー。
ハルヒはカクンっとたまに舟をこいでいる。
「ハルヒ君もお疲れのようだから、今日はこのへんで失礼するわ」
気をきかしてくれた姫達は笑顔で(寝顔はレアだったからかな)音楽室を後にする。
遅れてギイッと扉の音が響いた。
「鏡夜先輩にノルマ追加されてもしらないよー」
下から覗き込んでみたけど全く起きる気配を見せない。
近くで見ると睫毛長いなーとか肌白いなーとか、やっぱり女の子なんだなぁと実感する。
不覚にも、ちょっと、ドキっとしてしまった。
またカクンっとハルヒの体が揺れた。
するとズルズルと上体が傾いて、どうしようかと焦ってる内にハルヒの頭が僕の膝の上に落ちた。
黒い髪が顔にかかって、肌の白さが際立つ。
膝からハルヒの体温が伝わる。
また、扉の音が響いた。
おかしいな。
もう閉店したはずなのに。
他のみんなも適当にくつろいでる(環先輩は一人でミーティングしてるし、鏡夜先輩はあのノートに何か書いてる)。
顔だけ振り返ってみても扉の前には誰もいない。
また音が響く。
あ、そうか。
開けてくれたんだね。
もう、開いてたんだね。
こんな形の鍵があるなんて気付かなかったから。
「…ん」
「あ、起きた?」
ハルヒが目を擦る。
「馨…?」
「おはヨー」
「…嬉しそうだね」
ハルヒは怪訝な顔をしてる。
「いい事があったからね」
―君のおかげで。
*
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