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桜蘭高校ホスト部
Mother's Day(父子愛ほのぼの)



「おかえりなさい」


夜も遅く、日付変更線を越えて疲れを背負って帰宅して玄関のドアを開けると、そこには愛する娘が笑顔で出迎えてくれていた。








「なーにー?どーしちゃったのよこれー!?」

小さな机の上にギッシリと乗せられた食事達。
色彩豊かなサラダや香ばしい香りの漂う鶏肉料理。
日本人の食事には欠かせない味噌汁。

中心にあるのは純白のクリームが惜しみなく盛られた苺のショートケーキ。
赤と白のコントラストが一層眼を引く。


「すんっごい豪華じゃないのー!!ケーキまで焼いてあるじゃない!?」

そして目につくケーキの上にある板チョコレートの文字。



『ありがとう』



少し、言葉に詰まってしまった。


確か今日は自分もハルヒも誕生日ではないから、これがバースデーケーキではないのはわかっていた。(ハルヒが間違って覚えていたら別だけど)


でも、『ありがとう』って?




  誰に?

  何に?









呆然とケーキを見つめたままの自分を見てハルヒはクスっと笑う。


「びっくりしたでしょ?」


うん、びっくりしたよ。

「でも、これ…」




「今日はね、

ウムムと考えてる俺の言葉を制してハルヒが割って入る。

机の向かいに腰を下ろし、正座して真っ直ぐ俺に視線を向ける。


母の日だから…」





あっ、と 思った。



「お母さんの仏壇にも、ケーキだけだけど置かせてもらったよ」

だから遠慮なく食べてねと、言葉と微笑みを添えて湯気の立つ茶碗を差し出された。



「お肉は鳥だけど許してね」

チラッと奥の部屋に視線をやりながらそんな事を言う。

茶碗を受け取ったものの、何だか呆気にとられてしまって箸がつけられないでいた。


「お腹減ってなかった?」

ハルヒはサラダを口に運ぶ途中で手を止めた。


「まさか!そうじゃなくてね。今まで母の日にこんな事しなかったじゃない」


ああそれで、と少し微笑みを見せてレタスの刺さったフォークを皿の上に戻した。

「亡くなった人の誕生日を祝うのは気が引けるけど、母の日の感謝はしてもいいんじゃないかと思って」

それはそれは


「お父さんにもね」


お母さんそっくりなその顔で、そっくりに微笑んで。

「ありがとう」



君の父親で良かったと思う。


父の日もここまでしてくれるんだろうかと淡い期待を抱いてしまった。



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