桜蘭高校ホスト部
寒い日にはそれなりに(環ハル)
冬の寒さも程よければ
綺麗な白い雪に触れて楽しむ事が出来るのに
「さっ……む…!!!」
今朝見た天気予報では最高気温が2度だとか。
ちなみに最低気温は当たり前だけど氷点下。
家を出る前に父から「マフラーと手袋してきなさい」と言われて、常用しているそれらをしっかり装備して玄関を出た。
ゆっくり歩く道のりは肌を刺す様な寒さが襲う。
ピュウッと風が足元にじゃれつく。
少し歩くスピードを早めた。
学校着くと、いかにも金持ち学校に相応しい大きな校門の横に、これまたいかにも金持ち学校に相応しい一台のリムジンが止まった。
もちろん運転手つきの車から降りて来るのはこの学校の生徒。
…見覚えのある車。
「ハールヒ、おはよー♪」
こんな極寒の中でも爽やかに、且つ鬱陶しく挨拶してくるのは間違いなく環先輩。
「…おはようございます」
小さく吐いた言葉が白く残る。
ホント、元気だなぁこの人。
「最近めっきり冷え込んできたなー」
環先輩は白い手を擦り合わせる。
「おじさんクサい言い方ですね」
よく見ると白い手が少し赤みがかっている。
「じゃあ自分の手袋貸してあげますよ」
そう言って手袋を外そうとしたら、環先輩に止められた。
「俺はさっきまで車に乗ってたから大丈夫。それに」
ニコッと笑って白い手を差し出す。
「それに?」
何を企んでるのか、環先輩の事だからどうせ下らない事なんだろうけど。
環先輩は自分の頬を両手で包む。
少し冷たくて、ピクっと身体が反応する。
「こっちの方が温かい」
今日が特別寒い日だったから
環先輩の冷たい手が可哀相で
振りほどけなかったのはそのせい。
決してその冷たさが心地良かった訳ではなくて。
それを自分が求めてた訳ではなくて。
だって、
ただ、
自分から積もった雪に触れるには、冷たさに恐れを抱いてしまうけど。
降ってくる雪を迎えるのは少しワクワクするから。
こんな寒い日にはそれなりの楽しみ方で。
そういうのも有りかなと思う訳で。
少し不思議そうな顔をする彼に微笑みかけて。
彼の雪の様に白い手を、自らの頬で温めてあげよう。
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