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小さな救世主

俺って、馬鹿だよな――。


気付いた時には、もう遅かった。
こーゆーの、なんてんだっけ。
下克上?否、違う。それは戦国時代のやつだ。それにしっくりこねぇ。
じゃぁ、リベンジ?復習とか?……植物に感情なんてあんのかよ。
何だっけ。弱肉強食?油断大敵?(これは俺にだな)よくわかんねぇや。
どっちかってと下剋上のがしっくりしてきたし。

やっぱ油断大敵だな。


兎は自分の足元を見た。
木々の間から太陽の光りが射して少し眩しい。
空高くで鳥が鳴くような声がした。
ジャングルの違和感が少しずつ薄れていっているようだ。

んっとに良い天気だよな〜。洗濯日和ってこういうのを言うのかな。



―――――――何かおかしいと感じた人には拍手を送ろう。


何たって兎は逆さ釣りにされているからだ。
実際兎の視線は足元と言うより自分の足に向いていた。
膝から脹脛、そして足首にかけてきつく巻きつけられた太い木の枝に。
先刻まで見ていた木々とは比べ物にならない太さ。しかもただ太いだけでなく作りも頑丈になっているようで、簡単には解けない。殴ってみたり振りほどこうとしたがびくともしなかった。

「チッ。」

悔しくて舌打をした。奥歯を強く噛んだ。ギリッという音が身体の中で響いた。悔しいと思ったのは久しぶりだった。喧嘩で負けを認めた事も。

この植物達の親玉か。さっきまでのとは格が違うってわけ。

肩で溜め息をした。………が、それが何故か気に触ったらしく兎を捕らえる枝が鞭の様に撓(しな)った。思いっきり振りまわされて、内臓辺りが締めつけられるような感覚が兎を襲った。

ふ、振りまわすな!!足がちぎれるだろーが!!否、それよりも…


「――ぅ、ぐっ」

兎は掌で口元を押さえた。兎の顔色はどんどん青ざめていく。


やぁ〜〜〜めぇ〜〜〜〜ろぉぉぉ〜〜〜〜〜〜っぉぇ。



吐き気がする。
口の中に気持ちの悪い唾が溜まるのが分かった。
ぐるぐると回されて重力とか無関係なこの状況では、それを飲み込む余裕などないようで、吐き気はだんだん強さを増していくだけであった。一応抵抗はしてみるが相変わらず足を放してくれそうにはない。抵抗するのも無駄だと解り、力を抜いた。

俺、昔から、コーヒーカップ類いの回る系ってちょ〜嫌いなんだよ…。

えらい勢いで振りまわされる中、兎の意識は薄れつつある。






*************



ふわふわした意識の中、突然身体中に衝撃が走った。

「痛ってぇ………。」

激痛に耐えながら身を起こした。手に土の感触。

あ……地面だ。
何故か久しぶりに故郷に帰ってきた時のような、幼い子供が母親に擁かれる時の温もりで眠くなるような、そんな感覚になった。さすが母なる大地。大地賛唱。人間は知らない間に、母の温もりを大地に求めていたのだ。……兎がそれに気付いたのかどうかなんて知ったこっちゃないが。
足に絡まったままの木の枝が足をしめつけてはなさない。解こうと思って強く引っ張ったら、きつく絞めている枝が足に激痛を走らせた。力ずくで解く事はできないようだ。

すげぇ硬い枝…。

よく見るとその枝の先が刃物のような物でスパッと切断されていた。

「……」

なんだ。振りまわしすぎてちぎれたのかと思ったのに。…………ちぇ。


自業自得だバーカとまで思っていた事は伏せておいたほうがよいものか。


「君、大丈夫〜?」

突然何処からか声を掛けられてびくっと反応した。気配を感じなかったから。

誰だ?何処にいるんだ?

きょろきょろと辺りを覗ってみたが木々が立ち並ぶだけのジャングルに変りはないみたいだ。人がいる様子はない。気配も感じない。

気のせいだったのか?

「お〜い」

また声がした。今度ははっきりと聞こえた。気のせいではなかったようだ。声を投げかけられた方を見る。

……上?

兎は頭上に視線を向けた。幹が太く背の高い、何ていう名前なのか全く分からない木が重なり合って木陰を作っている、その合間に、かなり高い所にある枝の上に、微かながら人影が確認された。兎の視力を持ってしか見つけるには困難だったに違いない。視力2.0の人間が見ても、それは重なり合う枝と一体化して見えてしまうのだから。




「よっと。」

……………え?






重なり合った枝と一体化して見える程の高さから、紐無しバンジーする人間がどこにいるのだろうか。
いるのなら握手とサインをお願いしたいところだ。パチパチパチ。



声をかけてきた人影は、あらぬ事かその高さからくる恐怖心をもろともせず、宙へ飛んだ。
その姿は空を自由に飛びまわる鷲が、風を受けて滑空する様。両手両足を伸ばして優雅に。スカイダイビングを楽しむ若者達の様に。だんだんその人影が人間の視力でもはっきり分かるぐらいにまで降りてきた。

何て奴だ!あの高さから飛びやがった。……飛ぶか?普通。只者じゃねぇぜ!

兎は何故か疑問と興奮と感動を同時に味わっていた。

が、
「うわわわわわわわわわわわわわ――――――――――落ちるよぉ〜〜〜受けてぇ〜〜〜〜!」

「降りる」と言うよりも、「落ちる」と言った方が正しいらしい。
さすがにあの高さからの着地は不可能みたいだ。

しかも俺に受けろって言うのかよ!滅茶苦茶じゃねーか。やっぱ只者じゃねぇ!
兎はまだエクスタシーしていた。


人影は速度を増して落ちてくる。見上げていて何故か落ちる時の、あの感覚を思い出した。
あの何とも言えない気持ち悪さ。誰でも一度くらいは経験した事があると思うが、あれをただひたすら気持ち悪いとだけとらえる人は、たいがいジェットコースターの類いは苦手な筈だ。しかし、世の中にはそれを気持が良いと感じる、しいて言えば快感と思う人間もいるのだ。そういう意味では兎は前者だったのかもしれない。

そしてこの人影は。


どこだ!?もっと右か!?否、…後ろか!?……………よし、ここだ!!――来い!!!

兎は両手を前に伸ばして力を込める。両足も力強く踏ん張る。


   ―――ズンッ


黒い大きな塊が腕の中に収まった。……様に見えたのは兎だけ。多少のショックは吸収出来たが、絶えきれずにそのまま地面にめり込んだのだ。(兎の腕だけが。)腕がズキズキと痛む。指を動かしてみたら、ぎしぎしと痛むが何とか動いてくれる。何故か骨に異常は無いらしく、ありがたくも唯の打撲擦り傷程度で済んだ。
更に恐ろしいのは落ちてきた本人だ。どういった作りでできているのか、体には傷一つ見当たらない。ついてもいない砂埃を払うように、自分の肩を軽く叩いている。

「っふぅ〜危なかった。君、すごいねぇ!僕を受け止めるなんて。それだけの力があったら、さっきのでかい木だって自分で何とかできたんじゃないの?」

……悪かったな。それまでの雑魚で体力減ってたんだよ。ってか降りろ。重てーんだよ。俺の華奢な腕が痛がってんだよ。早くその足をどけろ。

兎の腕の上には、胡座の形に組んだ細い太腿、膝、脹脛を包む漆黒の衣。その先はじか足袋。これも黒い。

「君、普通の兎じゃないよね?どー見ても。よっこらせっと。」

兎の腕(地面と高さは変らない)から胡座の姿勢のまま宙返りをして降り立った。黒衣の左右の合わせに使っている小さな鎖が音も無く揺れた。首に巻かれた同じく漆黒の布が爽やかな風に靡く。それらに似合わない赤みがかった栗色の髪。

「はい、着地。兎さん、どうもありがとね。」

黄金色の瞳。


こいつ何者…?服装とか明らかに変だし。まるで…

「ねぇ、君は何者なの?」


…………………は?

突拍子な質問に息が詰まった。おかげで何度か咳き込んでしまった。

いきなり聞くか?そんな事。

「だ、大丈夫?」

気遣わしげに背中を擦られた。気に入らないがおかげで少し楽になった。肺の痛みに耐えながら何とか言葉を搾り出す。

「それはこっちの台詞だ。」

本当にな。まずそっちが名乗れ。それが礼儀だ。

「そーだよね、僕いきなり現れたんだもん、怪しいよね〜。」

姿勢を整えて立つ。そうすると服装のせいか少しかっこいい。

「僕の名前はアオイ。こんな格好しているからもう分かってるかもしれないけど、僕はこのジャングルに住んでる忍者だよ。あぁ、忍者とジャングルがミスマッチだなんて言わないでね。僕だって好きでいる訳じゃないから。それから、今投げたのは手裏剣だよ。一番お気に入りの中型。安定しててよく切れるんだ〜。命中率もいいしね。」

ま、いいのは僕の「腕」だけどねと付け足して軽く笑った。

つっこみたいのは山々だが、実際の所見えないぐらい高い木の上から動いている木の枝を性格に狙っているから何も言えない。

兎の足元に鈍く光る手裏剣が地面に突き刺さっている。
少しでも手元が狂えばこの手裏剣は兎の足を切断していただろう。

腕に鳥肌がびっちり浮き立っていたがこれは本人も知らないところ。




「で、君は?」

道具を一切使わずに、足に絡まったままだった枝を慎重に引っ張りながら尋ねた。目が手裏剣に釘付けなっていたが、アオイの声に振り向いた。尋ね方がいまいち気に入らなくて眉間に皺を作った。

「………卯紗義。」

兎は嫌々とか、渋々という言葉がぴったりの返事をした。しかしアオイはきょとんとしていて首を傾げている。

「え?それは分かってるよ。兎さんがこんな所で何してんの?どうやってここに来たの?ここにいる兎なんて、リラぐらいだと思ってたよ。」

質問に答えたのに軽く流され、その上間髪入れずに新たな質問をポンポンと出され、どうしたらいいのやら。という状態。
ひとまず質問には質問で返す事にした。

「リラって誰だ?」

アオイは少し目を丸くした。

「あれ?まだ会ってないの?リラっていうのはこのジャングルの創造主であり、管理人だよ。と言っても、まだ子兎なんだけどね。」

創造主…?

「時計を持った銀色の兎か?」

アオイはコクリと頷いた。

「そうだよ。」



兎の鬼ごっこの相手、リラはこのジャングルの支配者。
時を操る上級魔道師。
金の時計はその時魔法を発動させるための魔道具。
ありすの探していた兎。
リラを連れて帰る事が成功したら、元の人間に戻る事ができる。


そうだった。早くあいつを捕まえて帰らないと。こうしちゃいられない。

兎が駆け出そうとしたのでアオイは声をかけて引き止めた。

「もしかして君、リラと鬼ごっこしてるの?」


???


意味ありげな言葉に兎は足を止めた。

なんでこいつがその事を知ってんだ?

「あぁ、そーだけど。」

アオイは今までの表情とは打って変わって、目が真剣そのものだった。周りの空気が少し張っている。

リラって、一体何者なんだよ…………。そんなに危険なのか?

アオイの表情が険しい。眉根を寄せて、顎に右手をあてて何か考えている。暫くしてアオイが口を開いた。アオイと視線が合った。反らす事なく真っ直ぐ送られる視線。

「それ、僕も協力するよ。早く捕まえないと、リラに魔法をかけられてしまうから。ごめんね、時間とっちゃって。」

アオイは苦笑して言う。

何だこいつ。急に良い奴になった。そんなにヤバイんだ。あのガキ。

「なんで協力してくれんの?お前にメリットないじゃん。」

あまり深い意味はなく、なんとなく聞いてみた質問だったのだが、アオイは目線を反らして俯いてしまった。

…俺まずいこと言った?

「………僕も…ね、リラと鬼ごっこした事、あるよ。……ずっと昔にね。」

アオイはポツリ、ポツリと言葉を紡いでいく。

ずっと昔……?ガキなのに?なんでやねん。

心の中でつっこみを入れた。口に出すのは悪い気がして。

「でもね、僕は時間内に、リラを捕まえる事が出来なかったんだ。」

へぇ。そりゃあかわいそうに。

アオイは目を伏せたまま黙ってしまった。握った拳が小刻みに震えている。
少しの間沈黙が続いた。


「で?」

だから軽く促してみた。
アオイは一つ呼吸をして口を開いた。

「……ゲームを始める前に言われたと思うけど、時間内に捕まえれなかったらリラに魔法をかけられるんだ。」




    『3時間以内に僕を捕まえられなかった場合、お兄さんにとっておきの魔法をかけてあげますよ。』


挑発的なあの言葉。

あぁ、そう言えば言ってたな。そーゆー事。

思い返して確かに、と頷いた。

「僕は時計を持っていないから、どれだけの時間が経っていたのか分からなくて、リラを探して飛びまわってたら何時の間にか3時間が過ぎてた。時間切れって事に気付いた時には、もう魔法をかけられた後だったんだ。今も、その魔法は解けてはいない。解く方法も見つからない。」

「何で魔法かけられてる事に気付かなかったんだ?その魔法って何?どうなったんだ?」

アオイの視線が少しだけ上がった。

「リラは僕をこのジャングルに閉じ込めた。あれからずっと、僕はこのジャングルから出られないんだ。」

アオイはまた視線を落とした。もう目を閉じているのかもしれない。小さな溜め息が兎の耳に入った。
そんなアオイを、兎は冷めた目で見ていた。

へぇ。かわいそうに。まぁ、俺には関係ねーよ……。

………………………?


兎は小さな疑問が浮かんだ。冷たい汗が額から目の横、頬を伝って顎から落ちた。背中にも同じような冷たい汗を感じる。ジャングルは白い日差しを受けて暑い。

まてよ?

「もしかして、あの時計のガキ捕まえられなかったら、俺もここから出れなくなるんじゃねーだろうな……。」

最悪の展開を思い浮かべる。

ここから出られなくなって何十年も過ごして、俺の(自称)美しい顔も年とっていくうちにしわしわに老いてって、身体の節々も痛くなったりして、身動きもとれなくなってそのまま老死するんだ……。つまらねー人生をこれ以上つまらなくする人間なんていねーよ。ややこしいだけじゃん。

「まだ分からないよ。でも、リラの持ってる時計は特別だから…。君も、リラの魔法見たんでしょ?」

アオイは視線をちらっと兎に向けた。兎は軽く頷いて「あぁ」とだけ言った。兎の視線は自らの足元へ落ちる。

足、固められた。………そんなにすごいのか?あの魔法は。

兎の反応に少し不満を感じながらもアオイは続けた。

「創造主って言ったけど、このジャングル自体、リラの魔法でできてるみたいなものなんだよ。」

兎は一瞬、瞬きを忘れ口が半開きになった。半分は納得できたが、このジャングル全てが子供一人の魔法でできているとは到底思えない。たくさんの木も、動物達も、全て。

そりゃあ木が動く辺り普通じゃねーとは思ってたけど、まさか…。

「それにね、このジャングルの中は時間が進まないんだ。例えば其処に咲いてる花だって、もう何年もそのまま枯れずに咲いてる。」

アオイは兎の足元に咲いている白い小さな花を指して言った。

「今も時間は進んでないって事か?」

だからありすの発信機の通信機能も使えなかったんだ。外との時間の流れが違うもんだから無理だわな。

アオイは苦く笑った。太陽は皮肉にも、アオイに真っ直ぐ降り注ぐ。

「そうだよ、今も時間は止まったまま。僕もここに来てから少しも成長しない。何十年という時を過ごしたのに、髪も伸びないし、爪も伸びない。このジャングルに来た時と何も変らない。歳だって、本当なら明らかに君より上なはずだよ?」

今度は笑った。軽くだったけど。
何故か、腹が立たない。見下されて、腹立つような言い方されたはずなのに。まぁ、それが当たり前なんだろうけどさ。

「あのリラだって、僕が初めて会った時から全く変ってないよ。それにさっきも言ったけど、時計を持ってるのはリラだけだから、僕がこのジャングルでどれだけの時間過ごしてるのかもわかんないし。外の世界は普通に時間が流れてるから、僕の師匠なんてもうとっくに死んでるんじゃないのかな………。」

アオイは空を眺めた。濃い緑が空を覆っている。その隙間から見える空はキラキラ光るコバルト色。たまに遠くで野鳥の鳴き声が聞こえる。

「だから、早くリラを見つけて捕まえないと、君もこのジャングルの住人になっちゃうからね。」

アオイは鋭い視線を兎に向けた。一瞬身体が凍ったような感覚に陥った。


  “キミモ、コノジャングルノジュウニン”


半分冗談、半分本気で言われた言葉。
心の奥底に深く深く突き刺さる。胸がキリっと痛んだ。考えるとぞっとする事だった。

どうにかそれだけは免れたい。






何で俺はこんな事してんだろう。

本来なら高校行って、何も考えずに一日が過ぎてくのに。


この世界に来てからいろいろ考えるようになったかも。わけわかんない世界でわけわかんない事ばっか起きて、頭がついて行かなくなる。仕事を頼まれたと思ったらいきなりこんな所に送り込まれて。外の世界と隔離されてて時間の流れが違って。外にいる奴等はどんどん年老いてくのに俺は永遠に若いまま?(ちょっと嬉しいかも。)ついでにここから一生出られないかもしれない?ふざけんなよ。俺の人生俺のもんだ。誰にも左右させない。(実際かなり人生傾いてきているが。本人が気付くまでは触れないでおこう。)



兎はフンっと鼻を鳴らした。

「あの時計のガキを捕まえなきゃ、こっからでれねーんだろ?やるしかねーじゃん。俺はやるよ。」

絶対捕まえてやる。首洗って待ってろよ時計のガキ。

兎はぐっと拳に力を込めた。アオイの顔が綻ぶ。

「それだけ気合が入ってたら安心だね!(無理だったら、仕方ないから)僕も手伝うよ。ところで、そろそろ教えてほしいんだけど、君名前なんていうの?」

兎の眉間に皺が刻まれる。

どーりで名前言ったはずなのに「君」「君」「君」って呼ぶ訳だよ。

「卯紗義だ!何度も言わせるな!」

アオイはきょとんとした顔をする。

「あ、なんだ。うさぎって、名前だったのか。名前教えてくれないのかと思ってたよ。まぁいいじゃん、そんな怒んないでよ。よろしくね、卯紗義さん?」

明るい笑顔で手を差し出されて、気が引けたがこの満面の笑みに負けて手を差し出した。

「………あぁ。」


自然と相手をも笑みにさせる、その微笑み。

負けた…こいつのアバウトさに。俺の名前が本名だろうと偽名だろうと、お店では「マユリ」だろうと、どーでもいいんだな。唯単に、呼ぶ時に困るから仕方なくとかそーゆーレベルなんだな。悲しいぜちくしょう。

こんなやつといて、この先大丈夫なのか?時計兎を捕まえられんのか?ちゃんと生きたまま帰れんのかなぁ……。それより、元の姿に戻れんのか?
すげー不安。


アオイは握った手を嬉しそうにブンブンと上下に振った。腕が抜けそうなぐらい力強く振られたが、あまり嫌な気はしなかった。

まぁ、あのガキを捕まえてこのジャングルから出る事ができりゃいいんだよ。そしたらややこしい問題も全部解決するはずなんだ。その時にはこいつともお別れだな。せいせいするぜ。



そう思って握手の手を解いたら何故か兎の背に幾筋もの寒気がゾクゾクと走った。

「どしたの?」

兎の様子が少しおかしい気がしてアオイは首を傾げた。兎の腕は、アオイと手を握った時の高さのまま固まっている。

「いや、何でも無い……。」

そう言って固まった腕をぎこちなく下ろした。

「?」


アオイはまだ首を傾げている。


こういうパターン、多くないか?









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