機械娘は気持ちを探す
#6
巻き上がった砂が、右に流れる。
「やったか……」
「クククッ」
「?」
不気味に突然笑いだした少女に青年は怪訝な顔を浮かべる。
「驚いた。まさかあんなことが。クッ、ハハハハ!」
「おい、どうしたんだ!?」
問いかけながらも、青年は双眼鏡を覗き、目標を確認する。
「いやね、あまりにも楽しくなりそーでさ。つい」
笑い涙を拭きながら、青年の様子を伺う。
青年の視界には、AKを背負った蒼髪の少女。リージュがこちらに向かい疾走してくる映像が写し出されていた。
「外したのか!?」
「うんにゃ、違うよッ」
少女のニヤニヤとトリガーのアソビを動かすリズムは最高潮に達していた。一見ふざけた態度に見えるが、付き合いの長い青年には分かる。彼女はこうなった時が一番集中力が上がるのだと。
「だったら何故生きている?」
「ま、見てなって」
青年は双眼鏡を覗き直し、少女は射撃体制にはいる。狙いは向かってくるリージュ。少女はもう一度、トリガーを引き絞った。煌めいたマズルフラッシュ、爆発と舞い上がった砂を残し、二発目が撃ち出さた。
その瞬間。リージュが右へ吹き飛んだ。
しかし、当たったのではない。
「弾を避けやがっただと!?」
青年は、思わず双眼鏡を投げ出してしまう。
そもそも、いくら12.7×99mm弾であろうとも、人間を吹き飛ばす程の衝撃はない。もし吹き飛ばす程の衝撃があるなら、撃ち出す射手も反作用で吹き飛ばなければおかしいのだ。
「弾が足りない。予備弾倉ヨロシク!!」
三発、四発と連射するが、リージュはことごとく右へ左へに吹き飛んだように回避する為、少女は青年の同様を全く気にしていない。
「ほら! 早くしろ!!」
驚きの余り動きが鈍い青年に少女が催促を行い、そこで我に返ったのか、いそいそとジープから予備の弾倉を取り走る。
五、六、七発と撃ちまくるその表情はどこまでも楽しそうでいて、集中力のほとんどはスコープを覗く右目に集められている。 走るリージュに照準を合わせてトリガー……回避。吹き飛んだ先を予測してトリガー……回避。リージュは立ち上がる動作を回転運動により完全に殺しているので、吹き飛んだ先を予測しても当たらない。
リージュはすでに400mの地点にまで接近してきている。M82の弾丸をかわしながら、だ。
八発、九発と撃ったが、なおも避け続けるリージュ。
「ん!」
マガジンリリースを抑えながら、少女は左手を大きく後ろに伸ばす。
「あぁ!」
青年はすかさず予備弾倉をその手に預け、受け取った少女は、スルリと抜けた空弾倉の代わりにそれを押し込む。チャンバーにはまだ一発残っているので、ボルト・ハンドルを引く必要はない。
そのまま十発目を撃ち込む。
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