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機械娘は気持ちを探す
#5
 砂漠。それは不毛の土地。
 僅かな生命とオアシスが点在するものの、基本的に日中の太陽光を妨げるものはない。それは同時に、夜間において熱を地表に留めておけないことを意味する。よって、砂漠の気温差は激しい。
 レジスタンスのアジトがある町から、北へ600mの地点。一台のオーブンカータイプのジープが停まっている。 乗っているのは二人。迷彩塗装が施された車体には、追加装甲と12.7mm×99mmを使用する、M2重機関銃が装備されている。
 M2重機関銃は、ジョン・ブローニングが第一次世界大戦末期に開発したM1重機関銃の改良型で、1933年にアメリカ軍が制式採用した重機関銃だ。口径が50口径であることから別名「キャリバー50」や「フィフティーキャル」と呼ばれるこの機関銃は、製作されて70年以上経つが、費用を考慮しての基本構造・性能トータル面でこの機関銃を凌駕するものは、現在においても現れていない。
 小柄で赤髪を一本の三つ編みにしたの少女がジープから降り、肩から下げていたM82A1に弾倉を挿入、機関右側面の排莢口ボルト・ハンドルを後方に引いて、薬室への弾薬装填を行う。
 そのまま放るように地面に置き、伏せて射撃体制に入る。
 無駄なものが一切なく、細身な外観を持つM82A1は、バレット・ファイアーアームズが開発した大型セミオート式狙撃銃だ。ヘリコプターや装甲車などにも損傷を与えられるようブローニングM2重機関銃等で使われている12.7mm×99弾を使用する。陣地、軽車両を標的とした対物ライフルに分類されるが、超長距離狙撃用として対人射撃に使用されることもある、高精度スナイパーライフルだ。この手のライフルにしては比較的軽量だが、外観に反して重量は約13kgと重い。
 だが、伏せて構える分には全く問題ない。
「えー、目標は……っと」 スコープを覗く少女は、とても銃を構えている時の様子ではない。
 トリガーのアソビをカチカチ、伸ばした足をパタパタと動かして、心底楽しそうで、すぐに何でも撃ってな顔をしている。
「おいおい、目標以外を無闇に撃つなよ」
 ジープから降りた小柄な見た目だけなら真っ当だが、砂漠用の茶色い迷彩の野戦服を着た青年が、またかよ。といった風に溜め息混じりの注意を促す。
「わーってるよ。一撃でキメなきゃなんだろ」
 首だけで振り返り、気分を害しましたよ。と、むすっとした表情を見せる少女。この表情だけなら歳相応である。
 青年はハハハと笑い、胸ポケットから取り出した双眼鏡を覗く。
「それに、弾代だってバカにならないんだぞ?」
「はぁ……それ、そこに乗っかってる機関銃ぶっぱなす為についてきた奴のセリフじゃねぇよな」
 少女は双眼鏡を覗いたままの青年をジト目で見る。 青年はタハハと笑うが、何かに気がついたようにキリッと表情が急変した。おちゃらけから、真剣へと。
「さぁて、おふざけはこれくらいにしようかね、相棒」
「ん。やっとお出ましか。あんまし待たせないで欲しいよな〜。砂熱いんだからさ」
 青年の変化を感じとった少女の顔は、再びスコープを覗いた時には、すでにニヤニヤに戻っていた。
「相手も機人だ。外すなよ」
「おうよ!」
 スー、ハーと長めに呼吸をとる少女の視界であるスコープの中心には、灼熱の炎天下の元に、青く、長い髪をフードから垂らした少女が居る。
「蜉蝣を修正。視界良好。左右の風、ほぼ無風。地磁気、自転による修正右に1.2mm」
 呼吸を一定に保ち照準を安定させ、スコープの目盛りを1mm分右に、更に1mm上にずらして、今までアソビだけをカチカチ動かしていたトリガーを少女の華奢な指が引き絞った。
 そして、爆音に近い銃声と、射手周囲の砂を巻き上げるほどの衝撃波と共に、盛大にマズルフラッシュを煌めかせ、銃弾が撃ち出された。

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