機械娘は気持ちを探す
#9
黒髪の青年以外、座る皆は同じ服装だ。制服というものだろう。
「まずはあの白髪、「銀髪言え!」彼はレイジ。欠番達の主力で、特技は料理よ」
割り込んだ発言がサラリと無視されて紹介された白髪はムスッとして腕を組み、長椅子の背もたれに身を預ける。
「次はこの青い娘。リージュって言うんだけど、ちょっと今機嫌悪いみたいだから後できちんと紹介するね」
リージュはほんの一秒程アイシアを見たが、すぐにプイッと視線を逸らす。蒼く、長い髪が追うように揺れていた。機嫌が悪いと言うのは確からしい。
「はい、続いては我が妹にして怪力幼女、栗毛のツヴァイちゃんで〜す!」
幼女、ツヴァイは俯いていて、こちらを見ようともしていない。よく見るとよだれが垂れている。要するに寝ている。
アインスは苦笑いを浮かべながら次の紹介にはいる。
「え〜っと、じゃ次。そこの黒髪は南部 十四朗、欠番達の武器を整備してくれている銃器技師(ガンスミス)よ」
「よろしく。南部でも十四朗でも好きに呼んでくれて構わない」
と、握手を求められた。なんと言うかすっごいマトモそうだ。少なくとも、彼は機人ではない。なんて、握手をしながら思ったりした。
「そして最後に、カウンターの奥にいるおっちゃん。マスターって呼んであげて、でないと怒って不味い料理を作るから」
カウンターから上半身乗り出してこちらを見るおっちゃんはもの凄くダンディーだった。片手にはコーヒーカップ、それをせっせとフキフキしている。口元のヒゲといい、喫茶店のマスターと言うよりパーテンみたいな人だ。 ニヤリと笑ってどや顔を浮かべるマスターに軽く挨拶する。
「たったこれだけしか居ねぇのか?」
「他にも、2人いるんだけど、今は出払ってるから」「へぇ」
まだ居るのか。
「さぁて、ではではメインイベント! 気になるこの娘の自己紹介のコーナーです」
「へ? アタシ?」
一同の視線が、アイシアにそそがれる。
「ほら早く」
「ん……ア、アイシア。歳は15くらい、かな」
短い発言だったが、妙に緊張する。
「それだけ? もっと教えてよ、趣味とか、好物とか」
「えっと、趣味はトランプ、かな。辛いものが好き」
「は〜い、という訳で新入生のアイシアちゃんでした!」
そういって抱き寄せてくるアインスにアイシアは感じていた。戦いのない、普通の女の子としての日常。青年といても感じられなかった空気を……。
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