☆短編夢☆
零れるほどのおめでとう
「きょうはサクラの家に泊まってもいいか?」
そうキルアとクラピカに聞かれ、私は2人を見つめたまま固まってしまった。
零れるほどのおめでとう
決して、嫌とかそういうのではない。
むしろ一人暮らしの身にとっては、帰宅した際に誰かが出迎えてくれるということはとてもありがたい。
ただ、驚いただけ。
私の家に2人が泊まることは初めてじゃないけど、大抵がもう夜も遅いから、などと成り行きみたいなことが多い。
今回みたいにあらかじめ知らされるなんてことは一度もなかったので、そう言われることが不思議でならなかった。
「うん・・・別にいいけど、私今日は帰りが遅くなるよ?」
「あぁ、それでもいい。」
「オレとクラピカ、サクラが帰ってくるの待ってるから。」
「うそぉ〜、2人ともありがとぉ・・・。」
そうしてくれるのは、とても嬉しい。
「私は友達と外で食べてくるけど、何かご飯買ってこようか?」
「いっ、いや・・・いい!
オレたちは何か適当にするから!なっ、クラピカ?」
「あぁ・・・。サクラは気にするな。」
「ん〜・・・、そう?ならいいけど。」
2人の様子が変だったけど、私はあえて追求しなかった。
「じゃぁ私はもう行くけど、留守番よろしくね。」
「任せておけ。」
「帰り、気をつけろよ。」
「うん、ありがと。
それじゃぁ行ってきます!」
私はクラピカとキルアに見送られながら、扉を閉めた。
―パタン。
ドアが完全に閉まったのを確認すると、クラピカとキルアはどちらともなく安堵の息を吐いた。
「はぁーっ。第一関門、クリアだな。」
「あぁ。・・・キルア、お前途中でボロが出そうになっただろ。」
「しょーがねぇじゃんっ、こーゆーコトすんの初めてなんだしよ・・・。」
「私も、誰かを祝うことはあまりなかった。」
「何言ってんだよ。余裕そうな顔してたじゃねーか。」
「そうか?
けっこう必死だったのだが。」
「・・・嘘つけ・・・。」
「とにかく、今日はサクラのために頑張らなくては。」
「おぉ!」
そんなこんなで、キルアとクラピカの大作戦は幕を開けた。
******
「サクラ〜っ、誕生日おめでと!」
「うそ、覚えててくれたのっ!?」
「当ったり前でしょ。アンタの誕生日を忘れるわけないじゃん。」
「ぐすっ、ありがとぉっ。」
「いえいえ。
・・・それより、この間言ってた2人は?」
「え?キルアとクラピカ?」
「そう!その2人!
ちゃんと祝ってもらったの?」
「ううん。私の家に泊まるとは言ってたけど。」
「まぁ朝は忙しいからしょーがないだろうけど、“おめでとう”の一言は言ってもらえたんでしょーね?」
その問いに、私は首を横に振って答えた。
「ちょっと様子がおかしかったけど、特には何も・・・。」
「ん〜、サクラの話を聞く限りじゃ、こういう時は真っ先に祝ってそうだったのになぁ。」
「2人とも、記念日とかには興味なさそうだから。」
だけど、2人の誕生日にはちゃんとお祝いしてあげよう。
私は密かに心に決めた。
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