☆短編夢☆
暑い、暑い日
「あっち〜!」
「言わないでよ。
余計暑くなるっ!」
私は、本日5回目となるこの台詞を言った。
暑い、暑い日
昨日、クーラーが壊れた。
しかも、今の季節は夏。猛暑は過ぎたものの、これは相当の痛手となった。
そんなとき―――――よりにもよって私が扇風機一台で奮闘しているときに、待ち焦がれていた人はやってきた。
「もー、キルア!何もこんなときに来なくてもいいじゃない!!」
「サクラのクーラーが壊れてるなんて、オレに分かるわけねーじゃん。」
そうやって唇を尖らせながら言ったキルアは、ちゃっかりと扇風機の前に陣取ってる。
キルアはハンターとして世界中を飛び回っており、滅多に会えないというほどでもないが、会って話せる機会はあまり多くなかった。
そんな貴重な時間なのだから、どうせならもっと快適に過ごしたかった。
外出でもすれば涼める場所はいくらでもあるのだが、過酷な任務をこなしているキルアには、この時間だけでも休息にあててほしかった。
折角会えたのに素直に喜べないよ!!
・・・けど、暑いものは暑い!
「キルア〜、私も扇風機の風にあたらせろ〜っ!」
キルアの場所を奪うためにタックルをかけた。
・・・はずなのに。
くるっ
ぼすんっ
「きゃっ!」
キルアが突然こちらを向いたから、私がキルアに抱きつく状態になった。
ぎゅーっ
「へへっ、捕まえた。」
「も〜、急に振り向かないでよぉ。」
私が見上げるカタチで言うと、キルアは軽々と私を抱き上げて向きを変え、後ろから抱き付いてきた。
「・・・キルア、くっ付くと暑い。」
風は前から吹いてくるから、キルアのいる背中のあたりは特に熱をおびていた。
「いーじゃん、久しぶりなんだしよ・・・。」
めずらしく拗ねているキルアに苦笑しながらも、私はキルアの胸板に頭を寄せ、体重をあずけた。
「キルア、家に帰らなくていいの?」
「は?」
私が何気なく訊ねると、キルアは少し不機嫌そうに顔を歪めた。
「だって、自分の家が一番落ち着くものじゃない。
いつも私の家に来てくれるのはすっごくうれしいけど、ちゃんと休めてる?」
ハァ・・・、と、キルアはため息を吐いた。
「オレの家に休むなんて言葉がないことぐらい、サクラだって知ってるだろ?あんな家、思い出したくもねぇし・・・。
それに、ここが一番落ち着けて、安心できるから来てるつもりだったけど?」
その一言が、すごく、すごくうれしかった。
ハンターとしてのキルアの姿を、私は一切知らない。
だからこそ、キルアは本当に休めているのだろうか、無理をしてはいないだろうかと、いつも考えていた。
否、そんな不安も、キルアの一言で吹き飛んだけど。
自惚れかもしれない。
けれど、キルアに必要とされている、と実感できて、私の口元は自然と緩んでいた。
後ろから私の肩に顔をうずめているキルアも、顔は見えないけれどきっと笑ってるよね。
だって、こんなにも優しく私を抱きしめてくれているんだもの。
部屋の中は先ほどよりも暑さを増している。
それでも私は、この愛しい存在から離れたくなかった。
−END−
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