☆短編夢☆
至福の時
至福の時
バキバキッ
ドカンッ
ダンダンダンダンッ
ドンガラガッシャーン
先程から、キッチンは調理器具の大合唱状態に陥っている。
事の発端を呼び起こしたクラピカは、ソファに座りながら、キッチンからは絶対に聞こえてくるはずのない場違いなこの効果音を、はらはらと冷や汗を流しながら聞いていた。
そもそもの始まりは、クラピカの何気ない一言からだった。
時刻は正午。
昼ご飯を作り始めるにはちょうどよい時間だ。
「腹が減ったな。」
クラピカがそう言葉にした瞬間、クラピカに寄りかかるようにして座って、テレビを見ていたサクラが、勢いよく立ち上がった。
「私がつくってあげる!!」
実際、サクラが料理をしているところはクラピカも見たことがない。
いや、##NAME1##には料理をさせまいとしてきた。
そう―――――電子レンジで生卵を温めようとしているサクラの姿を見てからは―――――。
もちろん、今回も止めようとはしたが、サクラはとてもはりきっている。
何より、自分のために作ってくれるというのだ。
クラピカは、うれしさを胸の内に隠しながら、しぶしぶと承知した。
そして今に至るわけだ。
(やはり止めたほうがよかったのだろうか―――――。)
クラピカは指でこめかみを押さえながら、ため息をついた。
ドゴーーーン
本日最大ともいえるこの音が鳴り終わると同時にサクラはキッチンから料理を運んできた。
「できたよ、クラピカ!食べてv」
そう言うと、サクラはクラピカの口の中に、運んできたもの―――――ハンバーグを放り込んだ。
「・・・うまい・・・。」
あんなひどい音のするキッチンから、こんなおいしいものが出てくると誰が想像できるだろう。
不意だったとはいえ、クラピカの口からは、こんな言葉が勝手に出てきた。
その言葉を聞き、サクラ#はうれしそうに微笑んだ。
「良かった・・・。クラピカにそう言ってもらえて。
私、何にも力になれないから・・・。」
ギュッ・・・
クラピカはサクラを抱きしめた。
「クラピ「一緒にいたいと思える者は、力ではないのか?」」
「・・・え・・・?」
「サクラのことを想うだけで、私は強くなれるのだ。
力になれていないはずないだろう。
むしろ―――――。」
隣で笑ってくれていないと、だめになってしまうだろう。
そんなクラピカの言葉に、サクラは静かに抱きしめかえした。
ス―――ス―――
あれからしばらくして、サクラは眠ってしまった。
クラピカは、隣で眠るサクラの髪を一束すくいあげると、唇を落とした。
君が心から笑ってくれたとき、私が君を包み込めたとき―――――。
君の全てが私の至福。
―END―
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