[通常モード] [URL送信]

蜘蛛の仮面
髪と唇
あたしの目の前ではサーカスの団員さん達の宴会が行われている

大変賑やかに。

「サンドラー! 酒もってこぉい!!」

と、顔をりんごのように赤くしたリオさん

「俺は右団長だぞ!? 下っ端のリオがいけぇー」

呂律が回ってないようであぶなっかしいサンドラさん


「ぬぁーんだとぉ!?」

サンドラさんとリオさんは胸ぐらをつかんでの大喧嘩

いつものことだと笑うサーカス団員さん達

「フレアさん」

「あ、サブリナさん」

上下真っ黒なあの服を脱ぎ、カジュアルになったサブリナさんがあたしの方へ手を振りながらやってきた

「ありがとうございます。 しかし貴女がこのようなご親戚を持っているとは驚きました」

「よくみんなで来るんです。 ここでバーベキューとかしたら楽しいですしね!」

――――――――――――――――――――――

「私の知り合いにペンションを開いている方がいるんです。 気前のよい人なのでペンションを貸してくれるかもしれません!」

あたしは知り合いを思い出した。

脳裏には気前の良い叔父さんの顔が浮かぶ

親に連れられてよくあそこに泊まったのだ。

「だが…」

「ペンションは民宿風の言わばホテルです。 遠慮はいらないですよ」

あたしは半ば強引にサンドラさんを引っ張っていった。

「サーカスで必要になる道具を揃えるまで泊めて貰えますよ! 」


「しかし…」

やたらと逃げ腰なサンドラさんをあたしは説得した。

「四の五の言わせませんよ。 さぁ、サンドラさん団員達を集めて下さい。歩いて数分の所にあるんです。 」

――――――――――――――――――――――


「ライモンを出て少し歩いたらこんなに自然豊かな場所があるとは思いませんでした」

「あたしは自然が大好きだから…ここに来ると嫌な事も吹っ飛びます」

あたしはサブリナさんにブイサインをした

サブリナさんは笑ってくれたが、何故か違和感があった。

短いため息までついている
サブリナさんの頬は、お酒に酔ったのかほんのり赤い。


「…フレアさん」

「はい?」

「一目惚れ、したことありますか?」

その瞬間、搾りたて果汁100パーセントのジュースが地面へと降り注いだ


「だっ、大丈夫ですか!?」


…油断した

恋愛と言うモノに関心を持たない人だと思ってたからそんな話はでないと思っていた

…油断した…いくらあんな事を言ってもこの人は一人の乙女なんだった…。

「…私がこんな事言うのは可笑しいですよね。今まで男性と言うものに関わらずに生きてきたのですから…」

「いやいやいやいやいやいやっ! サブリナさんだって女の子ですし、恋ぐらいしたっていいと思いマスッ!」

「…私ではなく車掌さんですよ。 リサちゃんの話だと私に恋愛感情を抱いてしまったらしいので、どうやってお断りしようかと悩んでいるんです」

…車掌さんが可哀想になってくるぐらいの他人事っぷり

「私は恋をした事がありませんし、する気もありません。 ですから、私の事は忘れて貰おうと思います。 しかし、車掌さんの期待を無駄に膨らませば彼が可哀想です。恋の痛みとは出来る人間をだめ人間にするほど。 そんな苦しい思いをあの方にしてほしくはありません」

…今絶対、恋に苦しむ女子を敵に回したな

…でもまぁ…一理あるっちゃあるかな

「…友達になってあげたらいかがですか?」

「…え?」

「ほら、一期一会って言いますし、いい友達になったらそれはそれでいいじゃないですか」

もしかしたら新たな展開が出るかもしれないし…

「そうですね…その方がいいのかもしれません」

サブリナさんはあたしに微笑むと、お酒の入ったグラスに唇をつけた。


その光景は正に絵のようで。

びっくりするぐらい優雅にお酒を飲むサブリナさんは、また一段と赤くなった顔を隠すように俯いた。

お風呂に入ったせいかかなりサラサラで、艶やかな髪が、彼女の魅力を引き立てていた

「酔いが回ってしまったようです。 私は先に失礼しますね」

さっきと同じ微笑みをあたしに、見せたサブリナさんは一人、ペンションへと戻っていった。





…その翌日、サブリナさんがリサちゃんに手を引かれ、ペンションを出て行ったという。


…行き先は…リサちゃんのお家だそうで。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!