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蜘蛛の仮面
黒い炎、赤い風
女性がサブリナさんのさの字を言おうとしたとき。
悲鳴が聞こえた
それもサーカスの方から。

「何かあったのかしら?」

「取り敢えずサーカスの方へ行きましょう!!」

あたし達はサーカスへと急いだ。

「練習中に事故でもあったのでしょうか?」

「それにしちゃあ叫び方が変だ。 俺達は練習中に何度も失敗してるんだ。 新米達もそれには馴れてるはずさ。」

…なんか怖いよサンドラさん。

しかし、サービスに近付くにつれて焦げ臭くなってきた
それに人溜まりも見える。

…嫌な予感がする

「あっ…!!」

本来あるはずのサーカスの幟がない
あった場所には炭が落ちていた。

「まさかっ…!!」

サブリナさんはあたし達を置いて顔を真っ青にしながら走り出した。

あたし達は慌ててその後を追った。


「急に熱くなってきたな…サブリナが心配だ」

あたしもかなり心配です。

その刹那だった
視界が真っ赤になった

「危ないっ!!」

サンドラさんに抱えられ、何がなんだか解らなかったあたしは目の前の景色を疑った。

あたしの上に覆い被さろうとしたのはテントの布だった
しかも絶賛燃え盛り中!!
…焼死するとこだった。
あ、それどころじゃない
「…サンドラさんっ、テントが燃えてます!!」

「わかってる!!!」

サンドラさんは素早くフローゼルを呼び出し、テントに向かって水鉄砲。あたしも慌てて鞄からボールを取り出し、ギャドラスを呼び出した。


「サンドラ!」

向こうから薔薇の花のようなのドレスを着た女性が駆けつけてきた。

火事の煙のせいか、体全体灰色になっている。

「シレーナ、これは何事だ」

「私もわからないの。 練習中にいきなり小火がおこって消す間もなく燃え広がった」

「…ツイてねぇな、今日は。 それより団員と客はどうした?」

「新入団員が負傷したけど、客はみんな無事」

「そうか…ならさっさとこの火事を消すんだ。 急がないと周りの木に燃え移って大惨事になっちまう…ところでサブリナは?」

シレーナさんは口ごもった
言いたくない事でもあるのだろうか。

「…団長は、テントの中に宝物があるからって…」

「そのまま行かせたのかッ!? …あんの馬鹿女!! あんなもんのために…」

サンドラさんは悔しげに舌打ちをした
歯ぎしりまでしている。
…あたしはいてもたってもいられなくなった
あたしの足は勝手に、テントの方へと走り出した。

燃えそうな物はすべて投げ捨て、真っ赤な門をくぐった。

中は酷いものだった
何もかも焼けて、黒くなっていた。
…怖い、すごく。

火ってこんなに怖いものだったのか…


「サブリナさーん! サブ……あっ!」

赤い火の中に横たわる黒
あたしはいそいでサブリナさんの元へと走った

「サブリナさん! サブリナさん!」

頬を叩き、体を揺さぶってみるが返答はない
あたしはサブリナさんをおぶって外へ出ようと試みた。

しかしあたしより身長があるサブリナさんをおぶろうとしても、足を引きずってしまい前へ躓いてしまう

(ダメだ・・・運べない)

こんな事ならリザードン連れてくればよかった
いや連れてきたほうがよかったんだ!

サブリナさんのスカートの破れる音が後ろで何回か聞こえたが、あたしは気にせずサブリナさんを引きずって出口を目指した。

そしてサーカスの出口が見え始めた時
頭がクラクラしだした
それどころか目眩までしてきた

煙を吸いすぎたようだ

・・・も、もう駄目・・・

次第に重くなる瞼にたえきれず、あたしは耳の奥で木が燃える音を聴いた





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あきゅろす。
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