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ダイヤのA
3 (御幸side)





「名字。」




その名前が呼ばれただけで、ぴくっと反応してしまう。












彼女の名前は名字名前。






顔はかわいい、成績は上の上。

=モテる



だか、彼女はそれだけじゃない。






彼女はどこか不思議だ。




授業中はだいたい上の空。

窓際の席なので1日ぼーっと空を見続けていたり、何か考えごとをしていたりととにかく授業をきいていない。(なのに頭いいとか…。)





休み時間も一人でぼーっとしていることが多い。


話しかけても返事はいつも曖昧だから好んでしゃべろうと思う人はいないのだろう。





モテる女はたいてい輪の中心人物が多い。



が、彼女は他人と全く関わろうとしない。



だから誰も彼女の素性がわからないから『不思議ちゃん』などと言われているらしい。



謎の多いため倍にモテるとかモテないとか。




とにかく、俺は野球一筋だし、モテるけど女のこととかはよくわからなかったし興味もなかった。







そんなことを考えていたりしてぼーっと彼女を見つめていたらどっかからぐしゃぐしゃに丸められた紙が飛んできた。



ふと飛んできた方向を見ると倉持がにやにやしながらこっちを見ている。




訳がわからず丸められた紙を開いてみると






『なに熱い視線送ってんだよ』







ぼーっと見ていただけだったが、倉持から見たら見つめているように見えたらしい。




苦笑いして紙をぐしゃっと丸めて倉持を見ると口に手をあててまだにやにやとこっちを見ている。





そんな顔にイラつき手元にあった消しゴムを倉持に投げた。



消しゴムは一直線に倉持の額へ



当たった。





強く投げたから相当痛がっている。


おかしくて笑いをこらえるのに必死だった。





笑いをこらえながら投げてしまった消しゴムの代わりに筆箱に入っているもうひとつの消しゴムを使おうと取り出したら


スコーンと頭に衝撃が与えられた。

その拍子に取り出した消しゴムを落としてしまった。


頭に当たったモノは紙に消しゴムが包まれていた。


犯人は誰かなんてわかりきっている。飛んできたモノの中に入っていた消しゴムは確かにさっき俺が投げたものだった。




だが、向こうは知らんぷりでペンをくるくるとまわしている。





このやろう。






とりあえず落ちた消しゴムを拾おうと思い身体を傾けると


前から手が伸びてきて消しゴムが拾われた。



「どうぞ。」


と頭上から声をかけられて顔を上げるとさっきの彼女が俺の消しゴムを拾ってくれていた。



すると彼女が不意に微笑んだ。




外見はかわいいので笑顔がとてもかわいかった。


そんな彼女の微笑みにドキッとした。





「ありがとう。」


赤面しそうな顔をなんとかしてばれないように俺も彼女に負けないくらいの笑顔を送り、消しゴムをとった。




当の彼女はなにごともなく軽く会釈をして自分の席に戻っていった。


あれー。俺笑顔には自信あったのになー。




ちょっとショックをうけて軽く肩をすくめた。





倉持がにやにやして見ているのも知らずに。










この時から俺はちょっと名字名前という女に興味を持ちはじめていた。














このあと、授業が終わると倉持が俺のところにきて、さっきの出来事をからかってきたから教科書で殴っておいた。



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