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ダイヤのA







窓から吹く風が顔にあたる。
風はもう夏の暑さを忘れさせるほどほどよく涼しい。





もう夏もおわったな、と窓の外をぼーっと見ていると




「えー、次の問題を……名字。ぼけっとしてんなー。罰としてこの問題といてみろ。」





前からうっとうしい先生の声が聞こえた。





当の先生はニヤリと笑みをうかべて黒板の問題を指していた。







はぁ、と小さく短いため息をつき席を立った。







周りはまたか、と言わんばかりに視線を向けてきたがそんなことどうってことなかった。









黒板にたどり着き改めて問題を見ると、新しく入ったばかりのところらしく初めはなんの問題か分からなかった。





しばらく問題を見つめていると







「ほらみろ、聞いてないからだぞ。聞いていればできるのになぁ。」





と嫌味ったらしく腕を組みながら言ってきた。








ほんとにうざい。







そんな先生を横目に、チョークをとり答えを書きだした。







すると、先生の表情がみるみる崩れていった。






自分で言うのもなんだが頭はかなりいいほうだ。





それに、予習もしてあったのでこんな問題難しくもなんともなかった。






答えを書き終わりちらっと先生のほうを見ると、苦虫を潰すような顔でこっちを見ていた。







内心ざまぁみろ、と思いながら静かにチョークを置いて無言で後ろに振り返った。





背中の後ろから小さい舌打ちが聞こえたが気にもとめなかった。








席に戻ろうと歩き始めたら、通り道に消しゴムが落ちたのを見た。






歩き始めていたので落とした人が拾うより先にそこにたどり着いて消しゴムを拾った。









「どうぞ。」





少し低い声ではあったが、軽く微笑んだから感じ悪い印象は与えていないだろうと勝手に解決し、顔を上げて落とした人の顔に焦点をあてると











彼は……














「ありがとう。」





と人懐っこい笑顔で私の手から消しゴムを取った。






取ったのを確認して軽く会釈して自分の席に戻った。














彼は確か…………























これが初めての野球部との関わりで、これからの人生を大きく変える物語の始まりであった。



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あきゅろす。
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