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自転車が加速度を上げながら坂を下っていく。


其処にはスリルがあったが、それと同時に退屈もあった。


一気に坂を下りきった後、いつもの物足りなさを感じて地干支(じえと)はため息をつく。


確かにスリルはあるのだがそれは決まりきった恐怖と感覚になり、最終的には慣れきってしまい、退屈になってしまうのだ。


地干支が感じたいのはそんな退屈なスリルではない。


もっとハラハラして、次の瞬間が予測出来ないような、そんなスリルを味わいたいのだ。


「本当に自転車馬鹿ね。」


芝生の坂の上に、地干支のクラスメイトである万里(ばんり)が呆れた顔で自転車に跨っている。


「おー、万理!其処からブレーキなしで来るとすごい迫力だぜ!」


「絶対嫌よ。」


冷たく断ってから自転車で坂を下ろうとすると、思っていたより勢いがついていたらしく万理の自転車は操縦出来ずにすごい勢いで下ってくる。


「きゃあああっ・・・!」


万理の悲鳴と共に自転車がすごい音を立てて転がる音がした。




激しい痛みを感じるはずなのに、何ともない・・・・・・。


不思議に思って目を開けると、下には文字通り体を張って守ってくれた地干支がいた。


「ご、ごめんっ・・・!地干支!どこか痛いところない!?」


必死に呼びかける万理に地干支は不敵な笑みを浮かべる。


「分かった!自転車以外でスピードを極める方法!道具は俺の性格に合わねぇんだ!」


そう言うなり、地干支はあっという間に坂を駆け上っていなくなってしまった。


地干支はいつも自分の走りにしか興味のない、走り屋男。


いつもそればっかり考えていて馬鹿だ、馬鹿だと思っていたけど・・・。


あんな真剣な地干支の顔は初めて見た・・・


(ひとつのことに真剣に打ち込んでいる人ってあんな顔をするんだ・・・)


地干支の不適な笑みが胸を過ぎる。


(あんな・・・真剣な顔見たことない・・・)



あなたはだれ?
(それは見たことのないもうひとりのあなた)



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1、2、3。様の企画に参加させていただいた小説です。
ありがとうございました!!






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