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 アリスは鏡屋を見た。それに気付いた鏡屋は温かく微笑み、アリスの顔に自分の顔を近付けた。

「出してあげよう、アリス」

 そして一瞬にして笑みを消し、冷たい目でアリスの瞳を鋭く捕えた。

───ドクン

 アリスは身体から力が抜けるのを感じた。しかしその場に倒れることはなく、ゆっくりともう一人のアリスがいる鏡へと歩き出す。

 アリスの瞳は輝きを失っていて、まるで何かに操られているかのようだった。

 一歩、また一歩というように着実に鏡に近付くアリス。それを後ろから含んだ笑みで見つめる鏡屋。

 それまで入ってきた扉の前で傍観者を決め込んできた猫が、ゆっくりと歩き出した。

 鏡の中のアリスは、アリスが近付くたびに強く激しく鏡を叩き続けている。

「さぁ、鏡に手を触れてごらん」

 鏡屋がアリスに指示を出す。アリスは鏡の前で立ち止まり、ゆっくりと右手を上げる。



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