3 アリスは鏡屋を見た。それに気付いた鏡屋は温かく微笑み、アリスの顔に自分の顔を近付けた。 「出してあげよう、アリス」 そして一瞬にして笑みを消し、冷たい目でアリスの瞳を鋭く捕えた。 ───ドクン アリスは身体から力が抜けるのを感じた。しかしその場に倒れることはなく、ゆっくりともう一人のアリスがいる鏡へと歩き出す。 アリスの瞳は輝きを失っていて、まるで何かに操られているかのようだった。 一歩、また一歩というように着実に鏡に近付くアリス。それを後ろから含んだ笑みで見つめる鏡屋。 それまで入ってきた扉の前で傍観者を決め込んできた猫が、ゆっくりと歩き出した。 鏡の中のアリスは、アリスが近付くたびに強く激しく鏡を叩き続けている。 「さぁ、鏡に手を触れてごらん」 鏡屋がアリスに指示を出す。アリスは鏡の前で立ち止まり、ゆっくりと右手を上げる。 [*前へ][次へ#] |