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DMC4 短編
【お題】Cat Panic!!【後編】1D2D+ダンテーズ
Cat Panic!! 1D2D+ダンテーズ

「と、いうわけなんだ」
「な・・・るほど・・・」


ズズッと2様はコーヒーを啜る。
ソファに長い脚を組んで目を伏せて何時も通りの2様。
でもつい目が言ってしまう。あの大きな猫耳に。
話を聞いて推測するにグルルとかいう悪魔は最後の力を振り絞って2様に呪いをかけた。
周りに居た猫はグルルによって猫にされてしまった人間。その時はグルルは正常だったから特に異常無しに全身が猫になった。
でも呪いをかけるその時、息絶え絶えになっている時に無茶をして呪いをかけたせいか何らかの誤作動が起きて耳だけ猫になってしまったんだろう。

初代は目の前に座っている2様の横に移動して『触っていいか?』と本人に断ってから耳に触れてみた。


「実に作りモノでした。とかいうオチだったりする?」
「you damn fool」
「すいません」


(真剣に)ふざけてみたらズバッと言葉で切られてしまって。初代は慌てて謝った。
指先で弄ぶ様に耳に触る。作りモノだったら無いハズの体温が感じられる。これはどうやら本物らしい。
先端を指で摘んで少し引っ張ってみるがやはり取れない。


「だから本物だと言っているだろう・・・」
「ん〜・・・らしいなー」


本当に変な力だな。何に使うんだよこんなの。
まぁ相手を猫にしちゃえば楽に殺せるけど。
でも・・・2様可愛い。


「なぁ・・・まだ寒い?」
「・・・まだ少し」


2様の頬に口付け。
チュッと軽いリップ音が鳴る。それに擽ったそうに顔を反らす2様。ちょっときゅんと来た。
ヤバイと思ったらもう止まらない。


「ちょ、初代・・・!」
「いいじゃん。今日はもう誰も帰ってこないんだs」
「させねぇよ?」


ピシッ。
初代はカチンと固まった。
このリビングに居るのは2人だけのハズなんだが。
ネロは寝ているハズだし。それにネロにしてみれば声が少し低かった。
キョロキョロとして後ろを振り返ってみた。


「Hi, I'm back☆」
「・・・break down」
「やーだね(^ω^)」


おっさまが居た。
いつの間にか帰ってきたらしい。
こちらを見てヒラヒラと手を振って超笑顔。
思わずイラっとして毒を吐く。それにおっさまは特に反応せず“にしし”と笑うと鼻歌を歌いながら2階へ上がっていった。
“顔が近い”と2様には思いっきり手で跳ね除けさせられて2様も2階へ上がっていってしまった。


「・・・泣けるぜ」


居ないと居ないで寂しいし。
居たら居たでウザイってどういうこと?
人間って不思議ダネー。

初代は泣きながら部屋に戻るのだった。


††††††††††††


「あれ?おっさん?早かったな帰ってくるの」


次の日。
この事務所の毎日の食事は当番制になっている。
2様が作った当番表によって日替わりである。
丁度今日はネロとバージルが当番の日。昨日はこれだからと早くに寝たのだ。
もしも当番をサボったり寝坊したりすると2様からの超至近距離ロケランの刑に処される。(若とおっさんが何度か餌食になっていた)
あれは悪魔より怖い。まさにDevilMayCryである。
それを避ける為の処置なのだ。まだ死にたくないからね。

その為結構早起きしたネロが一階に降りてくるとおっさまが丁度洗面所から出てきてネロはびっくりした。


「それがなぁ、聞いてくれよ。あんな遠くまで出てったのにデマだったんだよ。だからさっさと帰ってきた」
「うわ。それ最悪じゃん・・・お疲れ」


まぁよくあることなのだが。
今回舞い込んできた4件の仕事の内一番遠かったのはおっさま。
わざわざ何時間もかけて向かったのに何も居ませんでしたーなんて。腹が立つ時は多々有る。
“ドンマイ・・・”とおっさまの肩を叩いて自身も洗面所で洗顔などを済ませて早速朝食の準備を始めた。

冷蔵庫を開けて卵を取り出す。
初代は以外にもどこになにを置くのかを分かっていたらしく食材が置いてある場所は何一つ間違っては居なかっので安心したのはここだけの話。
今日は何にするかと考えて買い物をしていたので食材はばっちりだ。ベーコンを取り出してその間フライパンを温めておく。
左手をかざして温度を見てからベーコンを入れた途端。“ジュー・・・”という良い音が事務所に響く。

するとデスクに居たおっさまがこちらに来てフライパンの中身を覗く。
中身を見て“ひゅー♪”と口笛を吹く。


「今日はベーコンエッグかぁ・・・坊やは気が利くな!疲れた俺にってか?」
「いや、別にアンタの為に作ってるワケじゃ・・・」


じとーっとした目線を送るがおっさまは特に気にせずにまたデスクに戻って行った。
一体何しに来たんだあのおっさん。
ご機嫌なおっさまにイラっと来たネロは近くにあったお玉をブリンガーで投げつけるのだった。

コーンというおっさまの後頭部にクリーンヒットした良い音が響いたと同時にベーコンエッグが完成。
おっさまが床に倒れると同時にバージルが起きてきた。どうやら彼も仕事を早々に終わらせて来たのか帰って来れたのだろう。
血だまりの中に倒れるおっさまを堂々踏みつけて洗面所に向かい帰ってきたバージルはまたおっさまを踏んでキッチンにやってきた。
既に2つ目にベーコンエッグを製作中だ。


「すまない、遅れた」
「いや、良いよ全然。大丈夫」


前回バージルは仕事の関係で1回食事当番を休んでいる。
その時初代が代理をやってくれた為、今日は初代の変わりにバージルがやる日。実際には今日の当番表には初代の名が書いてあるのだ。
バージルは律儀に詫びると水道で手を洗う。それに首を振るネロ。
時間軸は違っても今自分の隣で皿を用意してくれているバージルは自分の父にあたる(らしい)ワケで。
自分の時間軸にはもう彼の居場所も生きているのかさえもわからない状態だった。

でも今はこうやって言葉を交わしたり。触れたりできる。
・・・会えてよかった。

今まで横たわって居たおっさまがやっとむくりと起き上がったと思ったらそれを初代が踏みつけ再び床に突っ伏す。
何故誰もそのことについて触れないのか。何故床の一部として踏めるのか。
はじめて彼らと出会った時はまだ免疫がなかったから理解不能で何度も悩んだのだが。彼らと過ごして結構な日々を刻んだネロには段々平気になり始めていた。
これが半魔クオリティなのだということも分かってきつつある。


「Hello。良い匂いだな」
「おはよう初代。あれ?2様はまだか?・・・初代、悪いけど起こしてきてくれないか?」


個々に返事を返すが一方のおっさまは呻いているだけである。
普段は当番じゃなかろうとなんだろうと一番早く起きてくるのがほとんどの2様が降りてこないので、ベーコンエッグ3つ目を完成させてバージルが無言でさっと差し出してくれる皿に器用にフライパン返しで乗せながら初代にそう頼んだ。
初代は“へーい”と軽く返事をして2階に上がって行った。

そこでやっとおっさまが床から人間へと進化を遂げた。起き上がって凶器お玉をデスクに置いておき何事もなかった様に椅子に座ってアダルト雑誌を広げる。
バージルが暇を利用してポットでお湯を沸かしていると玄関が騒々しく開いて。


「Fooooooo!つっかれた・・・ただいまMyHome!お、良い匂い!」


若が肩をグルグル回しながら帰ってきた。
背にあるリベリオンをロングコートと一緒に壁に立て掛け何時もの半裸になると大きく伸びた。
血だらけのおっさまは“おかえり、遅かったな”とだけ言う。
何故血だらけなのかは全く触れず“結構手強くてさぁ・・・”と話出すこの人たちは恐ろしい。

デスクで段々話が盛り上がってぎゃははと笑い出し、遂にははしゃぎ出す2人にイライラし出したバージルは眉間のシワを増やして幻影剣を展開させ2人に狙いを定めて“さぁ、出陣だ!”という所で上から2人が降りてきた。


「起こしてきたぜー」
「すまん。寝坊した」


2様に挨拶しようとして顔を皆で向けた途端。
事務所の時間が止まった。

ネロは今、フライパンから出そうとしたベーコンエッグをべしゃりとシンクの上に落として口をあんぐり開けたまま固まり。バージルは背後に静止させたままの幻影剣を全て落として床に刺して、手にしていた皿をカチ割ってしまう。若は目をぱちくりさせて目を擦る。
おっさまは。


「Oh・・・So・・・Cute・・・」


とだけつぶやいた。

††††††††††††

「わっ。ちょーうめぇこれ!」
「坊やの料理は母の味ー☆」


若とおっさまがもしゃもしゃと食べながらベーコンエッグを絶賛してくれる。
それに冷や汗タラタラ、苦笑で返すネロ。
そのネロの隣でシャリシャリとレタスを咀嚼するバージル。2様はコーヒーをすすり。初代はドレッシングをサラダにかけている。

ネロは今すぐにでも叫びたくて仕方がなかった。
何故・・・何故誰も触れない?


その猫耳は何ですかっ!?

「どうしたネロ。食べないのか?」


2様が俯いて食事に手を付けないネロを見て心配そうに言った。
“いや、アンタのせいだよ”と内心でツッコミながらネロは精一杯の笑顔で“大丈夫”とだけ言ってフォークを手にした。
聞きたい聞きたい聞きたい聞きたい聞きたい聞きたい聞きたい聞きたい聞きたい聞きたい・・・っ。

若とおっさまがおかずの取り合いをしているのを見て更にイライラする。
なんだこれ!?俺が・・・俺がおかしいのか!?
これがダンテーズの常識なのか!?俺がKid(坊や)なだけなのか!!?
少しは慣れたと思ってたけどやっぱ違うわ、全く慣れてなんかいなかったぜコノヤロウ!!fuck!

カタカタと震えるフォーク。


「ネロ。具合でも悪いんじゃないか?」


ずいっと顔を近づけて額に手を当てられる。
ダラダラカタカタ。
“熱は無いみたいだな・・・”2様は首を傾げた。
く・・・ッ。くそ・・・ッ。言って良い?ねぇ、言って良い??


「ネロ」


どんどんと貧乏揺すりが激しくなって、冷や汗がダラダラで明らかに様子がおかしいネロの肩をバージルがポンっと叩いた。
そちらをゆっくりと見ると少し間があって。


「言いたいことは言うものだぞ」


お許しを貰った。


「2様その猫耳はなんですか!?」

ガタっとネロは立ち上がりテーブルに手をついた拍子に皿が数センチ飛び上がった。
シーンとその場が静まり返った。
今まではあーでもないこーでもないと騒いでいた若とおっさますらフォークを噛み合わせてギリリと火花を散らせていた状態のまま停止していた。
やっぱり皆気になってたんだね。だったら聞けよ。


「これには深い事情があって」


――ゴクリ。
何故だろう。何だか意味もなく緊張が走る。
特に深い意味は無い。ただ少し遠い目をする2様の顔から“タダ事ではない”ということを感じさせるのは確かだった。
何時の間にか全員(初代を除く)は2様に視線を向けていた。
あのバージルでさえも手を止めてじっと見ていた。


「実はな・・・」


――ドキドキ。
知らぬ間に自分の鼓動が速く大きく高鳴っていた。
早く、早くとネロの何かが疼く。
真実が知りたいと。ここまで強く願ったことが今までにあるだろうか。

2様は口を開いた。








「カチューシャなんだなこれが」


ドシャー!!
ネロは皿の上に顔面ダイブを果たし。バージルは持っていたフォークをへし折り。若とおっさまは床にコケて。
初代は『ぷっ』と吹き出した。


実は。
今朝初代が2様を呼びに行った時にはもう既に耳が元に戻っていたのだ。元々弱い呪いだったからか効果が短かった様で。
それを見た初代は酷く残念がっていた。“猫耳・・・勿体無い!”と。
だがそれでも初代は許せなかったらしく何処で手に入れたのか分からない猫耳を持ってきて2様に渡して。
『たまには俺の遊びに付き合ってくれよ☆』という初代のお願いにきまぐれに乗った2様。
それで皆を驚かせることにしたのだ。

まぁ、予想通りだった。
何も知らないダンテーズ+αに変わってネロが突っ込んでくれた。
敢えて触れないというのも薄々わかっていた。


「初代の遊びに付き合ってやっただけだ」
「ネロー、面白かったぞ〜♪」


2様は初代に付けられていた猫耳を返すとそれをそのまま皿に顔を入れたまま動かないネロの頭にそれをつけた。
バージルは気づいていた。ネロの身体に魔力が集まっていくのを。
なにを仕出すかわからないがとりあえず何が来ても良いように警戒しておく。


「ネロの貧乏揺すり凄かったよなwwww」
「いやぁ。笑わない様にするの大変だったぜwwww」


若とおっさまが呑気にネロの肩を叩く。
この愚弟が。気づかんのか。ダァァァァァァイ。


「こんの・・・ぉ」
「「「お?」」」


今まで黙って居たネロがやっと皿から顔を上げた。
黄身まみれの顔を上げて口を開く。その声には殺意がこれでもかというくらいにこもっていた。
バージルは皿を重ねて持ち上げて。コーヒーの入ったコップを手にした途端。

天変地異が起きた。


「break down!! die!!」

DTアッパーでテーブルが宙に舞い。
皿が飛び。1つのベーコンエッグが若の顔面にヒット。
おっさまは降ってきたマグカップのアツアツな中身を頭からかぶった。
重力に逆らった物が再び戻された時。
ネロはデビルトリガーと引いたせいで普段の蒼い目が赤くなった瞳を初代にギロりと向けた。
流石の初代も今の状況は笑えない。


「初代ぃ・・・!」
「ネロ、ちょ!待って・・・」


ネロはゆらゆらと初代に歩み寄っていく。
初代は立ち上がって後退していく。ネロは手を挙げた。すると背後にバージルのと似た幻影剣の様なものが4・5本浮く。
バージルは立ち上がって皿を片付けにキッチンへ。
若はそのままの顔で、おっさまは熱さに顔色ひとつ変えずにネロを見た。
2様はそこから離れて“Gootrack☆”とだけ残しテーブルを直しにかかった。


「ま、まま、待てよ・・・ネr・・・」
「Go To Herr!!」


DevilMayCry事務所。
そこで起きた事件はそれから“CatPanic”(猫騒動)と名付けられダンテーズ+αの黒歴史となったのだった。


「ぎゃああああああああぁぁぁ・・・」




End,




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あきゅろす。
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