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短編
また会える日まで (花京院)
(花京院死ネタ注意)

ふと、目が覚めて時計を見る。まだ深夜の1時をまわったばかりだった。なんでこの時間に目が覚めたのかわからなかったけれどとりあえず二度寝が許される時間だから遠慮なく寝よう。そう思って再び目を閉じる。
しかしいくら目を閉じても、羊を数えても、
眠れる気配がしなかった。
「…まじか…」
さて、どうしよう…。そう考えてると今日は星がでているか気になった。ベッドから降りてカーテンをあける。外は真っ暗闇の夜ですぐに光を持たない自分なんて窓を開ければあっという間に飲み込まれてしまうと思った。
でもどうしても闇に光る星を見たくて思い切って窓を開けてベランダに出た。夜の冷たい風がそっと頬を撫でていき、上を見上げる。
そこには満天の星空…まではいかなかったが
ちらほらと輝く星が幾つも見えた。
あぁ、今日の星はとても綺麗だ。星の光を見ると何処かホッとした自分がいることに気づいて思わず苦笑する。
「一体何に怯えてるんだろ…」
声に出してみたがその言葉は闇の中に静かに消えていった。
…そう言えば、彼は今何をしているのだろうか。学校が終わって単身赴任していた父を迎えに空港に行った時、偶然出会った彼。
おんなじ高校で突然転校して行った私の恋人…。転校する前はよく好きな本の話をしたし、一緒に手を繋いで帰ったり、他愛もない話をしていた。優しくて、頭が良くて…でも何処か寂しそうな彼…。そんな彼が好きだった。
でも彼はエジプト旅行から帰ってくると人が変わっていた。そんな彼の豹変に怯えて何も言えなかった、そして彼は転校して行った。
さよならも言えなかったことを後悔していた。もう終わった恋だと、そう振り切ろうと思っている矢先に、また空港で彼に出会った。
久しぶりに出会った彼は転校する前の不穏な空気はなく、元の、私の知ってる彼に戻っていた。
「花京院…くん…?」
「!!…ミア……」
「…偶然、だね…こんなところで会うなんて…」
「そう、ですね…。」
「えと、…元気に、してた…?」
「…ミア」
「なに…?」
「…突然、君の前から消えてすみませんでした…。」
「……。」
「僕は、大切な人を放ったらかしにして…恋人、失格です…。それに、僕はまた再び君を放ったらかしにしようとしている…」
「…別に怒ってないよ…私…。だから、だからもう…!」
「……すまない、ミア …。僕はこれから危険なところに行かなくちゃいけないんだ。もう、帰ってこないかもしれない…。」
「どういう、こと…?」
「君は、もう僕のことを忘れて…幸せになってください。」
「、待って、ちゃんと説明して…」
「今まで、ありがとう…ミア」


彼は最後に泣きそうな笑顔で私にそう言った。そして数人の男性達と一緒に国際便のゲートに向かって行ったのだった。彼からもらった指輪が今も薬指で小さく輝いた。そっと夜空へかざす。この世界の何処かでまだこの指輪をしてくれているのかな…。
だめだ、考えだすとぐるぐるとたくさんの言葉が頭の中を巡っていく。

「会いたいよ…花京院くん…」
気がつくと声にでていた言葉。そしてその言葉が突然私の中で大きく重く落ちてきた。

会いたい

会いたいよ

彼の名前を叫びたかった。

苦しいよ、もう一度名前を呼んでほしい、
もう一度、もう一度

その場に泣き崩れて彼の名前を呼び続けた

「花京院くん…」

もし、もう一度彼に会えるならちゃんと言おう。
「ずっと、愛しています」と。

でも、その言葉はもう彼に届くことはないと私はまだ知る由もなかった。



あきゅろす。
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