東方僧侶録
逆行せし僧侶
「ここは・・・何処だ?」
私は山に篭もって修行をしていたはず・・・・それが何故森の中に居る?
「・・・あの霧か」
突如私を包んだあの霧・・・それが私を此処に連れて来たのだろう。
そしてこの森に生えている木々や草、そして異常に澄んだ空気を鑑みた結果、私は自分が居た時代よりも、遥か以前の時代に飛ばされたと見ていい。
気配からして、恐竜でも居るのだろう。
恐らく、まだ人間は存在すまい。
何故私が、この時代に飛ばされたかは解らない。
だがどのような場所に居ようと、私のやる事に変わりはない。
この命が尽きるまで、追求し続けよう。
『救世とは何なのか』を・・・
・・・そして私がこの時代に飛ばされて500年の時が流れた。
この500年間の内に何が有ったかを伝えよう。
最初の10年はこの地の地理を調べるのに費やした。
その過程で分かった事なのだが、どうやら私の身体は前に比べて強化されているようだ。
その証に、私の体は殆ど疲れなくなった。
ありがたい事だ。
そして100年経つと、私は更に驚かされた。
私は不死になっていたのだ。
修行に集中していたあまり、今の今まで気付かなかったが・・・
この身が朽ちる事の無い身体になったと言うならば、更なる修行に打ち込めよう。
更に300年経つと、私は霊力と法力を手に入れた。
まだ微弱な物であったが・・・鍛え続ければきっと強力な物になっていくだろう。
後の400年、500年はひたすらに霊力と法力の鍛錬に打ち込んだ。
その結果、霊力と法力は十分過ぎる程に成長し、自在に操る事が出来るようになった。
勿論、それを戦闘に使用する事も可能になったが・・・これはその時にお見せしよう。
そして私が更なる修行に打ち込んでいると、悲鳴が聞こえた。
私がその場に駆け付けると、おぞましい姿をした化け物が子供を喰らおうとしていた。
「待て」
「シュアア・・・」
「・・・えっ?」
「その子を離せ。そしてすぐに立ち去るが良い」
「シャアアァァ!!」
どうやら言葉は通じん様だな。
ならば見せてやろう・・・この500年で会得した、新たな技を。
「無重の極み(むえのきわみ)」
ッボン!!
これぞ、私が500年掛けて生み出した技の一つ・・・無重の極み。
霊力を拳に集め、打ち出す技だ。
威力は二重の極みと変わりはないから、当然当たれば塵と化す。
目の前に居た化け物の様に。
「大丈夫か?」
「は、はい!助けて下さってありがとうございます!!」
「この辺りは安全とは言えない。あまりうろつかない方が良い。ではな」
私は立ち去ろうとするが・・・
「待って!私は八意永琳って言います!貴方の名前を教えて下さい!!」
助けた子供に呼び止められた。
「乾隆寺永治だ」
「お礼がしたいので、家に来てくれませんか?」
「ううむ・・・私はそんなつもりで助けた訳ではないのだが・・・」
「お願いです!!」
・・・人の好意を無下には出来んか。
「分かった。君の家に行こう」
「ありがとうございます!こっちです、付いてきてください!」
この後、永琳について行った私の前には、目を疑う光景が広がっていた。
それは次の機会に話すとしよう・・・
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