東方僧侶録 怒りと別れ 「救世神様!」 「どうした?そんなに慌てて」 私が大陸から戻ってくると、佐保姫が慌てた表情で駆け寄ってきた。 何か有ったのか? 「八坂神様がお見えに!」 「・・・何?」 八坂神と言えば大和側の神ではないか。 一体何の用が有って・・・ 「既に中にお通ししていますが・・・如何しますか?」 「・・・私が相手をしよう。お前は待っていなさい」 何か厄介な事にならなければ良いが・・・ 「お初にお目にかかります。私は八坂加奈子と申します」 「救世神だ・・・それで、こんな所に何用かな?」 「実は貴方様のお力を、お借りしたいのです」 「力?」 「これから数日後に、我々と土着神との大きな戦が起きます。貴方様にはその際に、土着神達を殲滅して欲しいのです」 「・・・」 「如何でしょうか?」 「・・・くだらぬ。私が求めるのは、民の安寧のみ。勢力争いに興味は無い」 「民など、いくらでも替えが利くではありませんか」 「!」 なんと・・・愚かな!! この者は民を駒としか見ておらんのか!? 「救世神様とあろう者が、たかが民如きを大事になさっては、いけまs「・・・もう良い」は?」 「もう良いと言うたのだ!この戯けが!!」 ミシッ!! 「ぐうっ!?」 怒りのあまり・・・自らから溢れ出る神力を抑えきれん!! 「民無くして、神は存在出来ぬ!それも解らぬ童が!!」 メキッ!! 「ガハッ・・・!!」 「貴様らには失望したわ・・・私は力など貸さん!それが不服なれば、私が領地に攻め込むが良い!貴様らを皆殺しにしてくれる!!」 ズン!! 「ぐっ・・・お、お許しを!」 「貴様に話す舌は持たぬ!疾く去ね、下郎!!」 ドゴォ!! 「かはっ・・・」 怒りのままに蹴り上げてしまったな・・・ 「・・・私は・・・これで」 だが、まだ意識は有った様だな。 八坂神はボロボロになりながらも去っていった。 「救世神!」 「おお・・・佐保姫か」 「怒鳴り声や大きな物音が聞こえた後、八坂神がボロボロになって帰られたので・・・」 やれやれ・・・どうやら心配を掛けた様だな。 「なに、少しもめてな・・・恐らくこの地に、二度と大和の神々立ち入る事は有るまい」 「そうですか・・・安心しました。ここが戦火に巻き込まれるのではと・・・」 優しい子だ。 この子になら、任せられよう。 「佐保姫・・・一つ話が有る」 「はい?なんでしょうか?」 「私は・・・此処から出ようと思う」 「えっ!?」 「此処にはお前が居る。私はもはや必要あるまいよ」 「そんな・・・」 「お前が生まれてから20年・・・お前を娘の様に思っていたぞ」 「私もです・・・父様」 「達者でな」 さて、行くとしよう。 かねてから行くつもりであった、彼の場所へ・・・ [*前へ][次へ#] |