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フェイトステイナイト〜verアイス
夜の一時
地球 日本国内 東京に有る高級料亭

「≪※今回の話の場合のみ、ジャニックの言葉は英語で再生をお勧めする≫・・・うむ。日本特有の『和食』はよい物だな」

「えっと・・・今、なんて?」

「和食が美味いってよ」

「あ、ありがとうございます・・・」

夜も深くなった東京、その中に有る高級料亭では大人物同士が対面していた。

一人はジャニックである。

そしてもう一人は日本の総理大臣である佐倉翔太だ。

そして両者の両側に控える人物も特別であった。

佐倉総理の場合、右に白髪に髭をたくわえた二木官房長官、左にボサボサの黒い長髪と不精髭が特徴的な三枝主席秘書官といった感じである。

しかしジャニックの場合、両側に控えているのは身体を完全に覆い隠せる程に巨大な真紅マントを纏った西洋の甲冑に似た銀色のパワードスーツを装着した『マーウォルス・ジェネラル』であった。

マーウォルス・ジェネラルは名前通り、准将〜中将までの将官のみで構成されている。

マーウォルス・ジェネラルは主にチルノや元帥職に就いていた高官の護衛を任務としている所謂『親衛隊』であるが、場合によっては軍を率いて分離主義勢力と戦う事や、式典等に駆り出される事も少なくなかった。

アーマーの形状は一概に同じであるが、意匠や装飾に差異が存在する。

戦闘力は間違いなくマーウォルス最強で、中にはグリーヴァス将軍やドゥークー伯爵を捕らえた者も存在した(もっとも、マーウォルス・ジェネラルは大戦末期に方々に駆り出され行方知れずになった者も多いのだが)。

「・・・さて、本題に入るとしよう。銀河統合軍は日本に軍への人員の出向と基地設営の為の領土の譲渡を要求する。ミスター佐倉、返答は如何に?」

「な・・・なんて無茶苦茶な要求だ!!」

「彼はなんて?」

「・・・日本に出兵して、基地を造る為の領土を寄越せとよ」

「それは・・・断らないと」

「総理、ここは私が・・・ジャニック司令、貴方は我が国の憲法をご存知ないようだ。我が国は未来永劫戦争行為に加担する事は・・・」

「そのような事、既に知っておるわ。儂はミスター佐倉に聞いておるのだ、黙っておれ老害が」

「・・・なんという侮辱!これが交渉する態度か!!」

「あの・・・三枝さん。なんで二木さんあんなに怒ってるんですか?」

「要するにな、俺は総理に聞いてるんだから割り込んでくるんじゃねぇバーカって事だ」

「あー成程・・・って、本当にそう言っていたんですか?」

ジャニックと対面している翔太は32歳という異例の若さで総理となった。

端麗な容姿と実直な性格が国民から強く支持されている翔太だが、実権は官房長官の二木の傀儡であるというのが各国の見解でありジャニックもそう判断していた。

それと言うのも、翔太を政治の世界に引き入れたのは二木であり、選挙においても色々と汚い手段を使い総理に押し上げた。

共和国時代から腐敗官僚の粛清などを行なっていたジャニックはそれに感づき、二木を老害と呼んだのだ。

「三枝さん、通訳お願いします」

「分かった」

「ジャニックさん日本は出兵を了承する事は出来ません」

「・・・理由は?」

「日本は戦争に耐えられる国じゃないんです。防衛組織である自衛隊も実践経験が全く有りませんし、人員だって日本をギリギリ守れるかどうかなんですよ。それに、僕は国民の皆さんを戦争に駆り出したくはないんです」

「・・・私事で兵を出さぬと仰るか」

「はい」

「(ほう・・・真っ直ぐな良い目をしている。それに儂に睨まれても身じろぎしない肝の強さ・・・傀儡という評価は改めねばならんな)成程・・・貴国の人員の危機的な少なさは理解した。では、せめて領地の譲渡だけでもお願いしたい」

「分かりました。譲渡するわけにはいかないので、貸すという形になりますがいいですか?」

「総理!?何を仰るのです!!これは憲法に・・・」

「二木さん、これは国民の皆さんを戦争に巻き込む事にはなりえませんよ。逆に彼等が居る御陰で日本を守る力が向上するんです。そうですね、ジャニックさん?」

「可能な限り、手を尽くそう」

「ね?聞いたでしょう」

「・・・ッ」

「では、交渉成立で宜しいか?」

「はい!」

「そうか・・・では、これからよろしく頼む」

「こちらこそ」

ギュ・・・

『『・・・!』』

翔太は三枝の通訳に助けられながらジャニックとの交渉を終えた。

最初は何時も通りの険しい表情で望んでいたジャニックも、この青年が暗愚な傀儡ではなく強い意志を持った有能な政治家であると認識し表情も和らいでいった。

そして交渉を終え、友好の証として握手を行なった時衝撃的な事が起こった。

仏頂面や険しい表情しか見せないジャニックが、穏やかな笑みを浮かべていたのだ。

これには控えていたマーウォルス・ジェネラルも驚きを隠せなかった。

「日を改めてまた伺おう・・・今度は仕事抜きでな。ミスター佐倉は何か好きな物は有るかね?」

「好きな物ですか・・・甘い物、ですね」

「では、用意させよう・・・それでは失礼する」

どうやら翔太を気に入ったらしいジャニックは好きな物は何かと聞いてくる。

そして翔太の好みを知ると満足げに頷きその場を去っていった。

「閣下、お車に乗られる前に、重要なお話が」

宿泊を予約しているホテルに向かう為に車に乗ろうとした時、白髪の坊主頭に常人よりも高い鼻、目には丸眼鏡型のサングラスをかけた白スーツの男に引き止められる。

彼の名はヴァイス。

共和国時代からのジャニックの副官であり銀河でも極めて稀な『天使』である。

「モスクワでテロでも起きたか?」

「いえ・・・それよりも重要です。『あの御方』から連絡が有りました」

「・・・『アレ』からか。確かに車に乗ったままでは話せんな。良いだろう、電話を回せ」

ヴァイスが『あの御方』と呼んだ人物との通話を始めさせる。

『あの御方』・・・それはコルサント星系軍に所属していた者なら絶対に知っている人物であった。

それから遡る事数時間前、冬木の衛宮邸では・・・

「はい、クリームシチュー一丁あがりィ!ステーキもすぐ出来るから、もう少し待ってね!」

チルノ(服装はまんまスパロボZのセツコ・オハラだがいつも通り黒のオーバーニーソを穿いている。尚、チルノはミニスカート以外はほぼ穿かないというこだわりが有る)が士郎達に料理を振舞っていた(誰の手も借りず、一人で作った)。

因みに、フェンリルとセレナについては、士郎には『円卓騎士』、士郎以外には『一緒に日本に来ていたたが別行動を取っていた友人とその護衛』と説明した。

「そうそう、護衛の人達の分も作ったから皆で食べてね!」

「「「おー!」」」

チルノは作った料理を全員(護衛の連中は自分で準備した)を渡し準備を整えてた。

「それじゃあ・・・いただきまーす!」

「「「「「いただきます!」」」」」

そしてチルノの言葉を合図として食べ始めた。

「う・・・美味い!こんな味のクリームシチューは今まで食べた事はない!!」

「・・・素晴らしい味です」

「先輩、このステーキも美味しいです。特にこのかけられたソースがまた・・・」

「ど〜よ!料理は得意技の一つなんだから!今のだんn・・・もとい、婚約者もこれで落としたようなものなんだから!あ、因みに料理には秘密のレシピを使用してるから普通にやったらこの味は出せないよ!」

「洋食じゃ絶対に勝てないな・・・だが、和食なら俺に分がある筈だ」

「・・・チルノさん、その秘密のレシピを教えていただけませんか?」

「いいよ〜。シロ君はダメだけど」

「なんでさ・・・」

「こういうのは女の子同士でやるもんなの♪」

「えー」

「ガフッ、ヴァフッ!」

「品が無いですわね〜。もう少し落ち着いてお食べなさいな〜」

「男には品なんて無用の長物なんだよ!」

「普通の殿方はもう少し上品に食べますわ〜」

「んなもん個人差だろうが・・・何だよ?」

「マスク被ってるのに普通に食べられて凄いなーって」

「はぁ?」

「どうやって食べてるの?ねえねえ教えて!」

「うおおっ、何をするだ〜!!」

「あらあら〜」

「・・・うむ、美味いが、年寄りにはちとキツイな」

「ん〜・・・おいおい、俺達の大半は亡霊だぜ?それに・・・」

「おお・・・主よ、この身に食事を与えたもうた事を感謝いたします・・・」

「老け具合で言えばどっこいどっこいのヴラドがあれなんだぞ?」

「・・・そうだな」

「「「「美味い!」」」」

チルノの作った食事を各々様々な事を話しながら食べ、30分もすれば全員が食べ終わり、セイバー、セレナ、フェンリルは道場へ、その他の騎士は用事が有ると出掛けていき、護衛は警備に戻り、残ったのはいつもの3人とチルノだけになった。

「さて・・・食事も終わった事だし!サクラ、行くよ!」

「・・・はい!」

「どこ行くんだ?」

「ちょっとね〜」

「士郎〜デザートでも作って〜」

「あーはいはい・・・チルノ逹の分も作っておくからな」

「オッケー」

そして遂にチルノは桜に声をかけ、蟲を摘出するために自分の部屋に移動する。

数分後・・・

「オカエリッスドクター」

「ソノ子ガ患者デスカ?イヤー別嬪サンデスネー」

「準備ハ出来テマス。後ハ患者ヲ寝カセルダケデス」

「ありがと。それじゃあサクラ、あのカプセルの中に寝てね。すぐに眠っちゃうけど身体に害はないから安心して」

「それはは解ったのですが・・・あの、彼等(?)は?」

「B2バトルドロイド改ね。出所は秘密だけど、元々は軍と敵対していた組織のロボット兵器を、軍が拿捕してお手伝い用に改良した物だよ。元が兵器だからガードマンにもなるんだ」

「そうなんですか・・・やっぱり宇宙人の人達は凄いですねぇ・・・あ、すぐに横になりますね。服は脱いだほうがいいですか?」

「うん・・・アンタ達はゲームでもしてなさい!」

「ヘーイ」

「モンハンデモヤロウゼー」

「オー」

チルノの部屋に着くと、3機のロボットが2人を迎える。

彼等は所謂小間使いロボットで、チルノがどこからか仕入れたのだ(入手ルートはトップシークレット)。

ある程度の説明をすると桜は理解し、カプセルの中に横になる。

「それじゃあ始めるよ」

『・・・お願いします』

「絶対に大丈夫だから、ゆっくり眠ってて」

『はい・・・』

「・・・始めるよ!」

桜が横になると、チルノは端末の操作を始める。

かつて『銀河一の天才科学者』と呼ばれたチルノの真価が今発揮される。

その頃道場へでは、セイバーとセレナが向かい合って対峙していた(フェンリルは座ってそれを見ている)。

事の発端は食事後にセイバーがセレナに手合わせを申し込んだのが始まりで、フェンリルはその見届け役となった。

その為道場で対峙しているのであって、別に2人がケンカした訳ではない。

尚、セレナが道場に防音の結界を張った為問題は起きない筈である。

ヒュン・・・

「手合わせの前に自己紹介させて頂きますわ〜。元神界王宮警護軍指揮官『守護大天使』兼、王宮剣術指南役・・・現円卓騎士『堕天聖母』セレナ・ヘヴンズウェルですわ〜」

フォン・・・

「・・・成程。では此方も名を名乗りましょう。我が名はセイバー。剣士のサーヴァントです」

対峙した2人は互いに剣を抜いて(セレナはドレスを摘んで礼をしてから剣を抜いた)自己紹介する。

見えない剣を持ったセイバーとは対照的に、セレナの剣はしっかりと姿を現していた。

剣・・・エンジェリウスの形状は所謂『レイピア』であるが、通常の物よりも1・5倍程長く、刀身はやや太めで両刃、刀身の色は血の色の如く真紅に染まっている。

又、柄、鍔、護拳、握り、果ては鞘に至るまで様々な宝石が散りばめられ、金細工が施されており、極めて高価な代物である事が伺えた。

「・・・レイピアを使った王宮剣術ですか。面白い、見せて貰いましょうか」

スッ・・・

「そちらは聖剣ですのね〜。私、その手の相手には慣れていますの〜」

挨拶を終えた二人は互いに構えを取る。

セイバーは標準的な構えであったが、逆にセレナは独特で、左手を後ろに回し右手で持ったエンジェリウスの切っ先を真っ直ぐセイバーに向けるという物であった。

「・・・流石は元神族。この剣が見えますか」

「うふふ〜・・・いらっしゃいな、楽しませて貰いますわ〜」

「言われなくとも!・・・はッ!!」

ヒュン!

「速さと重さを兼ね備えた良い攻撃ですわ。でも・・・」

ギャリイィン!

「!?」

「それ故に、受け流されると酷く脆い。ま、当たり前の事ですわね」

スパッ

「くっ!(これだけで分かる・・・彼女は、強い!)」

セイバーが切り掛った事により、手合わせが始まった。

その一撃はまさに一撃必殺であったが、セレナはエンジェリウスを用いてそれを完全に受け流し、返す刃でセイバーの左腕を切り付ける(なお、セレナの口調が幾らか変わっており、間延びした感じでは無くなった)

「もっと嵐のように切り掛ってきなさいな。貴方なら可能でしょう?」

「では、要望通りに・・・でやああぁぁ!!」

ヒュヒュヒュヒュヒュン!!

キィンギリィ、タン、クルン

一度の攻撃だけでは終わるわけも無く、セレナに促される形でセイバーは凄まじい勢いで連続で切り掛る。

それをセレナ受け流し、ダンスを踊るようなステップで避け、回転して避ける等、行動の端々に上品さや美しさが滲み出ていた。

無骨な剣術に美しさと上品さを組み込んだ物・・・それがセレナの使う王宮剣術であった。

「流石聖剣を持つ者。一発一発が素晴らしい。でも・・・」

ヒュッ

ドドズゥ!!

「がっ!?(甲冑を貫いた上に両腿を一瞬で!)」

「防御が雑過ぎますわ。型はしっかり出来ているのに、これでは宝の持ち腐れでしてよ?」

「ッ・・・はぁ!!」

フォン!!

「それにに両腿を傷付けられた状態で大振りな剣戟もいけませんわ。それを今教えて差し上げます」

クルン

ヴウウゥン・・・

「消えた!?」

シュウウゥン・・・

「どこを見てますの?この程度を感じ取る事が出来ないんなんて・・・未熟ですわね」

「・・・!!(後ろ!?全く感じ取れなかった・・・だが!)防いでみせる!」

ズキッ!

「うあっ・・・足が!」

「これで終わりですわ。セブンスヘヴン」

「しまっ・・・」

ヒュン!

ズバババババッ!!

「ぐはっ・・・」

セイバーとセレナの手合わせ・・・それはとても手合わせといえる物ではなかった。

セイバーは英霊とはいえ元は人間である。

対してセレナは堕天したとはいえ純然たる高位の神族であり、そもそもの能力差が有り過ぎるのだ。

そして両者が扱う剣術もそれに拍車を掛けた。

セイバーの剣術は、西洋ではありふれたパワー重視の物・・・

逆にセレナの王宮剣術は攻撃を受け流し、強烈なカウンターを打ち込むのを得意とする防御重視の物で、相性的にも最悪なのだ。

元々教える立場に居た事も有り、教え子に物を教える様な形でセイバーを圧倒していた。

そして手合わせも終わる時が来る。

セレナがその場て一回転し、風景に溶け込むように姿を消す。

セイバーはすぐにセレナを探すが、何故か直感が働かなかった。

それから少しして、セレナがセイバーの後方やや後ろに現れ、エンジェリウスを構える。

セイバーは振り返り来るであろう攻撃に備えようとするが、刺し貫かれた両腿が痛み、動きが鈍くなる。

それが命取りとなりセレナが放った白色の斬波を食らう事になる。

斬波が命中したセイバーはまるで何度も斬り付けられたような傷が身体に刻まれ、膝を突いた。

「・・・私の、完敗です」

「ふう・・・お疲れ様ですわ〜♪」

「流石神族。まるで歯が立ちませんでした」

「貴方も十分強かったですわよ〜。あ、今傷を治しますわ〜」

ポウ・・・

「・・・ありがとうございます。もう、十分に動けるみたいです」

手合わせが終わると、先程までの剣呑な空気は霧散し普通に声を掛け合う。

セレナも元の口調に戻っており、回復魔法でセイバーを治療、全快させた。

「また、手合わせしていただけませんか?貴方からは学べる事が多く有るので」

「いいですわよ〜時間が空いている時に限られますけど〜」

「構いません。・・・そういえば、見届け人の人狼ですが・・・」

「ZZZ・・・」

「・・・寝てますよ?」

「見届け人の意味が有りませんわね〜。ほら起きなさいなフェンリル、こんな所で寝たら風邪を引きますわよ〜」

「・・・んおぉ、終わったのか。どっちが勝ったんだ・・・って、聞くまでもねぇか」

「困った人ですわね〜。見届け人が寝てしまったら意味が有りませんしわよ〜?」

「元々俺にそんな役は無理だってわかってただろうに・・・」

「クスッ、それもそうですわね〜。さあ戻りますわよ〜。セイバーも行きましょう〜?」

「分かった・・・あ〜眠ぃ」

「あ、はい!」

セイバーは満足に動けるようになると、終始寝ていて見届け人として一切役に立っていないフェンリルについて指摘する。

セレナは苦笑しながらフェンリルに近付き、軽く揺すりながら声を掛けるとフェンリルは目を覚ます。

二人のとても親しげな様子を見て、セイバーは只の同僚ではないと薄々感じながら、共に母屋に戻っていった。


「・・・ふぅ、摘出完了っと!まさか神経に食い込んでる奴が居るとはね〜。こりゃ、地球の医療レベルじゃ手の施しようが無いね」

キチキチ・・・

「うう、最高にキモい!殺虫剤をぶっかけたり焼却とかしたい・・・でも」

カチャ・・・

「何だって金属片が入ってたんだろ?なんか嫌な魔力を感じるし・・・桜に聞いて見ようかな?」

「アアアアァァァァ!!ラオ〇ャンロン強エエェェ!!」

「馬鹿、頭ヲ狙エ!」

「M・AYAKOヲ見ロ!安全ナ場所カラ弓を射ッテイルダロウ?」

「ソンナ事言ッテモ・・・ギャアアアアア!!」

「うっさ〜い!ゲームやるならやるで、もっと静かにやりなさ〜い!」

「「「ヘーイ」」」

セイバーとセレナの手合わせが終わった頃、チルノは桜の身体から蟲と謎の金属片を摘出する(蟲は一箇所に集めている)。

チルノがチルノが金属片調べながらうるさいドロイド逹に文句を言っていると、桜が目を覚まし起き上がる。

「おはよ〜!気分はどう?痛いところは無い?」

「・・・はい。何だかとても身体が軽いです」

「そりゃ良かった!特殊な技術を使ったから傷は無いし、蟲が食い荒らしてた神経や細胞は再生用の薬品を投与しといたから、すぐに良くなるはず!」

「何から何までありがとうございます。この恩は一生忘れません」

「気にしないで、アタシが好きでやった事だから!・・・そういえば、体からこんなのが出てきたんだけど、サクラはこれが何か解る?」

「これは前の聖杯戦争で用いられた聖杯のかけらです。お爺様は私にこれを埋め込み、聖杯にするつもりだったんでしょう」

「・・・それ、肉体が持たないんじゃない?」

「ええ。聖杯はアインツベルンの人造人間(ホムンクルス)が倒されたサーヴァントの魂を吸収し、ホムンクルスその物を犠牲にして完成される物です。ですからチルノさんに摘出してもらわなかったら・・・」

「成程ね〜・・・さて、難しい話はこれまで!シロ君がデザートを作って待ってるだろうから行こう・・・って、言いたい所だけど。ちょっとやらなきゃいけないから先に行ってて」

「分かりました」

起き上がり、服を着終わった桜にチルノは色々と話を聞く。

その結果解った事に頷きつつ、チルノは桜を先に行かせる。

「さ〜て、と。アンタ達!そこの虫を始末しておいて!アタシはちょっと電話するから」

「ウィッスー」

「ヒャッハー!汚物ハ消毒ダァー!!」

「バーナーグライシカ無イケドナー」

「え〜と・・・番号はっと・・・あ、繋がった。お久しぶりヴァイス。チルノだけど、ジャニックに代わってくれない?」

そしてチルノはドロイド逹に蟲の始末を命じ、自身は元部下であり友人のジャニックに連絡を取る。

「お・・・おおぉぉ・・・」

それから数分後の間桐邸の地下では老人が呻いていた。

彼は間桐臓硯。

桜に蟲と聖杯のかけらを埋め込んだ張本人である。

「儂の半身が・・・焼けていく!おのれ小娘、儂の計画をよくも!!」

臓硯が苦しむ理由・・・それは桜の心臓に寄生していた蟲である。

臓硯は既に数百年生きている為、肉体の殆どを蟲で構成している。

又、核となる蟲は二匹居り、一匹は自身の心臓辺りに、もう一匹は桜に寄生していた。

その内の一匹が始末されたのだ、苦しみは壮絶な物だろう。

「このままでは済まさん・・・!!」

搾り出すように発っされた臓硯の言葉は、闇に消えていった。

ガロロロ・・・

それと同時刻、柳洞寺へ続く長い階段をバイクが爆走していた。

バイクに乗っているのはパチュリーである。

「・・・(流石メディアの根城。魔力の質が段違いだわ)」

パチュリーが階段を爆走している理由、それは8割が下見、2割が追撃である。

「・・・ん?」

ギャギャギャギャギャッ!!

長い階段が終わりを迎えかけた時、山門に人影を確認したパチュリーは踊り場でバイク横滑りさせながら止め、バイクから降り、ヘルメットを脱ぐ。

ガシャッ

「山門に門番・・・成程、使い魔ね?」

「いかにも。アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎だ。このような夜更けに何用かな?」

山門の人影・・・佐々木小次郎と名乗った男の姿は、端麗な容姿に長大な太刀を背負った武士であった。

気が合いそうだ・・・何故かパチュリーはそう感じた。

「・・・サーヴァントが自分から真名を教えるなんてね。マスターが怒るんじゃない?」

「なに、私は正規のマスターに召喚された訳ではないからな。それに礼儀という物が有ろう?」

「律儀ねぇ・・・正規のマスターに召喚された訳ではない?どういう事?」

「女狐・・・キャスターに違法に召喚されてな。山門に縛り付けられ、門番をやらされているという訳だ」

「成程・・・門にマスター権を写してるのね・・・ねえ、もし自由に動けるようになったら私の使い魔にならない?」

「む?」

「理由は・・・気に入った、それだけで十分でしょ?」

「ふっ・・・はっはっは!気に入ったというだけで味方に引き入れようとは!良いだろう、自由になったあかつきにはそなたの従者になろう!!」

小次郎から経緯を知らされたパチュリーは、自由にしたら自分の使い魔にならないかと持ちかける。

小次郎は一瞬唖然とし、心底楽しそうに笑ってこの提案を受け入れた。

「それじゃあ行くわよ!」

パキュン!

「・・・おお!私を縛っていた物が消えたぞ!」

「山門のマスター権を破壊したわ。急がないと貴方が消えちゃうから契約を済ませるわよ」

「うむ!」

「佐々木小次郎・・・私、パチュリー・ノーレッジの使い魔となりなさい!」

「承知した!この佐々木小次郎、そなたの為に永劫仕えよう!!」

キィン!!

小次郎が提案を受け入れるや否や、パチュリーはレッド9を取り出し、特殊な弾丸を装填して山門の中心辺りに撃ち込む。

すると小次郎を縛っていた物が無くなり、目に見えて動きが軽くなった。

そのままパチュリーは魔術刻印を用いて小次郎と契約し、小次郎は正式にパチュリーのサーヴァント(使い魔)になった。

「これで完了ね。これからよろしく、小次郎」

「こちらこそよろしく頼むぞ主よ」

「取り敢えず拠点に戻ろうと思うけど、小次郎はついて来れるの?」

「安心しろ、足には自身がある」

「そう。それじゃあ「小次郎」」

契約が完了し、パチュリーはバイクで、小次郎は自分の足でこの場から離れようとすると、後ろから声を掛けられる。

「オルギュス殿・・・」

後ろを振り向くと、白髪混じりの黒髪の長髪に口髭と長い顎鬚、黒色の着物を来た腰に刀を差した男が立っていた。

「行くのか」

「ええ。オルギュス殿との手合わせは、まさに至高の時でした。今まで、ありがとうございました!」

「いずれ会う。近い内にな」

男・・・オルギュスは小次郎を止める気は無いようで、二、三言言葉を交わすと背を向けて去っていった(小次郎はオルギュスの姿が見えなくなるまで頭を下げ続けていた)。

「・・・オルギュス殿は、私のの師と言っても良い人でな。彼からは多くの事を学んだ」

「そうなの・・・続きは戻ってからにしましょ、ここじゃゆっくり話も出来ないし」

「承知した」

ガオン!!

敵地に居るのは得策ではないと、二人は柳洞寺を後にしていく。

これにより門番が居なくなり、防御が幾らか手薄になるものの、この地に集まる膨大すぎる魔力を警戒してこれから数日間は攻められる事は無かった。


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あきゅろす。
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