小話(リボーン)
甘い戦争(バレンタイン/獄総受け風味ギャグ)
「隼人が、ハート型のチョコレートを買っていた」
あらゆる情報を司る財団のトップ、雲雀恭弥の一言により、ボンゴレの主要メンバー(獄寺とリボーンを除く)は会議に集まった。
「雲雀さん、細かな情報をお願いします」
そう言うのは、トップの座に君臨する、ボンゴレ十代目、沢田綱吉。
「隼人が部下の為にチョコレートを買うのは前から。それは小さなチョコレートが入った袋をいくつか買って、小分けして配るやり方をしている。その中にハート型のチョコレートが混じっているのも、まぁ仕方ない」
「じれったいですね。それはもう知っています。そして数年前、それは妥協すると決めたでしょう」
イライラした面持ちで話すのは、神出鬼没なくせに獄寺の事となると必ず会議に出席する六道骸である。
雲雀はそんな骸を睨みながら、それでもそのまま話を続けた。
「そう。でも今回のチョコレートは違う」
「違う?」
「それはどういう事だ」
山本と了平が、恐ろしいほど真剣に聞いている。
「隼人が買ったチョコレートは、袋詰めなんかじゃない、大きなハートのチョコレートだった」
『!?』
会議室に大きなどよめきが起こった。
ランボが目を見開く。
「しかも、そのパッケージを可愛らしいピンク色の包装紙でラッピングし、さらにこれまた可愛らしい袋に入れていたんだよ!!」
「ち、チョコレートにはなにか書いてあったのか!?」
了平の問いに、雲雀は眉間にシワを寄せた。
「……スイート、という文字は確認出来たよ…店の防犯カメラだから、細かい事は分からなかったけれど」
「でも、その単語って…」
「隼人君からのチョコレートに『スイートラブv』とか書いてあったら……あったら…!!」
骸が意味の分からない単語を、気持ち悪い裏声で言った。
それに対して雲雀は冷静にトンファーを投げるが、本心では似たような事を考えていた。
そんな、隼人から可愛らしいチョコレートなんか貰った日には………!!
「くっ、今日の獄寺君の予定は、同盟マフィアとの会議だよ!!まさかそのマフィアの中に……!?」
綱吉が鼻血を垂らしながら叫ぶ。
雲雀と同じ妄想をし、自爆したに違いない。
「いや、もしかしたら小僧かもしんねーぜ…獄寺と一緒に行ったからな…」
山本は今までにない厳しい表情で言った。
山本の言う小僧とは、リボーンの事である。
いつも面倒だとイベント事をスルーしてきたリボーンだが、今日だけは文句も言わずに獄寺について行ったのだ。
怪しすぎる。
「というか、なぜあのアルコバレーノと隼人君を一緒に行かしたのですか!?隼人君が危ない!!」
変態的妄想で悲鳴を上げた骸は、そのまま煙と化して消えた。
「ちっ、先を越された!!」
雲雀もすぐさま窓から会議室をあとにし、用意していた車の上に着地、即座に草壁が車を出発させた。
ちなみに、会議室は3階であるが、もちろん雲雀は無傷である。
「うおおおおぉぉ獄寺あああああぁぁぁぁぁあ!!!!」
了平は雄叫びをあげながらドアを突き破った。
「ランボ、来い!!」
「う、うん!!」
山本は優しさに溢れ、ランボを連れて壊れたドアから出て行った。
多分車で向かうのだろう。
そして、我らが十代目は。
「獄寺…今行くぞ…!!」
全く必要とされていないにも関わらず、なぜかやる気満々…殺る気満々で、窓から飛び立った。
「獄寺、その袋はなんだ」
同盟マフィアとの会議の場にて、オレは気になっていた物を指差し聞いた。
会議は順調に終わり、オレ達は廊下に出て内容の確認をしていた。
が、帰宅するマフィアが多い中、それでも一向に手をつけられない袋が、いい加減気になったのだ。
「え、あぁ、チョコレートですよ」
獄寺は照れたように言う。
やはりなと思う反面、それが自分宛ではないことに少し落ち込んだ。
まぁ、獄寺からは“敬愛”としてのチョコレートを既に貰っているので、何も言えないのだが。
「ふぅん。誰にやるんだ」
「それはですね…あ、」
その時、会議室の部屋のドアが開いた。
中からはいくつかのファミリーのマフィアが出てくる。
その中に…γがいた。
「よぉ、待たせたな」
γは手を上げ、爽やかに挨拶してくる。
昔は何かと突っかかっていたが、今では両者ともボスの右腕として、よく酒を飲んだり、話をしていると聞く。
まさかもしや。
「いや、こっちも今まとめが終わったところだ」
獄寺が微笑みながらγに近付く。
あの袋を持って。
「おい、ごくで」
「隼人君!!」
「隼人!!」
「獄寺ああぁぁ!!!!」
「獄寺!!」
「獄寺氏!!」
「獄寺君!!」
「な、お前らッ!?」
オレが獄寺を呼ぼうとした、まさにその瞬間。
突如現れた骸、雲雀、了平、山本、ランボ、ツナが、同じように獄寺を呼んだ。
その気配が読めなかった事に面食らう内に、獄寺は更にγに近付く。
「これ…」
周りの叫びを気にせず、獄寺はしゃがみながら声をかけ…
…しゃがみながら?
「ユニに、バレンタインのチョコレートな」
『…ん?』
「あ、ありがとうございます!!」
γの後ろからひょこりと顔を出した少女に、獄寺はあの袋を渡した。
その場に、空気が抜けたような声が響く。
「あの、γ、開けても良いですか?」
「えぇ」
γの了解を得た少女…ユニは、袋から包装された箱を取り出し、丁寧に包装紙をはがした。
そして中身を見て、顔を綻ばせる。
そこには、『スイートプキュア』と書かれた、キャラクターものの絵柄と、ハート型の大きなチョコレートがあった。
「私が好きなの、知ってたのですね!!ありがとうございます!!」
きゃっきゃっと喜ぶユニは、年相応…少し幼いぐらいの、可愛い女の子だ。
しっかりした性格のおかげで忘れていたが、彼女は幼い女の子なのだ。
こういうキャラクターを好んだって、おかしくない。
そしてこういうキャラクターもののチョコレートには、ハート型のものもある。
「悪いな、わざわざ」
「いや。合ってて良かったぜ」
にこやかに会話する二人から見て、多分γからアニメの情報を聞いたのだろう。
そして獄寺が、そのチョコレートを用意したのだ。
スイート、というのは、アニメのタイトルの一部。
骸や雲雀他が想像した意味は、全く無い。
「…え、十代目?」
今更に状況を把握した獄寺が驚く。
それに対し、周りのメンバーは腑抜けたように苦笑いした。
「えー…まぁ、相手がユニで、良かったって事で?」
「?」
こうして、渦中の獄寺を置いてきぼりにしながら、彼らのバレンタインは幕を閉じた。
++++++++++++
幕を閉じたってか、1日遅れたorz
ユニちゃんがプリュアとか見てたら可愛いなぁと。
あえてスイートなのは、一番新しいのを全く知らないからです(^^;
ちなみに、みんな事前にチョコレート貰ってますよ。
でも本命じゃないので、怪しいチョコレートは全て監視するのです(笑)
てかタイトルの注意書きながいなー
20110215
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