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小話(リボーン)
これでも任務中。B
「…………まじかー」

めんどくささ全開に言った言葉に、雲雀もあからさまなため息を溢す。
だが、それも仕方ないだろう。
先ほどまで車なんていなかったのに、いつの間にか前後左右に黒い車が止まっていて囲まれていれば、めんどくさくもため息も出る。
だが、更なるため息の元は多分俺の目の前につきつけられた銃だ。

「…クリフ、お前もか」

なんてブルータス風に冗談が出てしまったぜ。

「獄寺隼人、グズグズしねぇでさっさとそのスーツケースを渡せ!」

クリフは本物だ。
どんなに発達した変装をされても、雲雀か俺、どちらかは必ず分かる。
本物なのにこの行動。
つまり、クリフは裏切り者という事だ。
薬の力に魅入られた輩が裏切りを画策している、なんて噂もあったが…まさかここで起こるとは。
しかしまぁ、なんて汚い口調。
今のボンゴレは発展する事を主とするよりも、民間人を守るマフィアとして成長してきた。
十代目がそうされた。
だから民間人を怖がらせない為に見た目も派手にする事はなく(俺の髪の毛は地毛なので別)、口調も大人しいものになるよう(俺のはギリセーフ)教育していたのだが。
この支部がいけないのか、彼がいけないのか。
今度調査せねばなるまい。
まぁ、そんな事を考えている場合じゃないか。

「ワーコワイ。タスケテヒバリー」

「………君、本当に良い性格になったよね」

俺は銃口を見つめ、その先にあるクリフの目を見つめながらおどけて言った。
雲雀はその様子に、今までで一番大きなため息をついた。

「おい、黙らねぇと本当に撃つぞ!怖くねぇのか!」

クリフが銃を向けられてもふざけている俺と、隣で組んだ足を解こうともしない雲雀に痺れを切らしてキンキン叫ぶ。
どんなに言おうとも、目の中に見える俺達への恐怖が丸分かりだ。
「君、僕達より自分の心配したら?」

「なッ…!?」

うるさいクリフに飽きたのか、雲雀はつまらなそうに言った。
更に怒ったクリフが声をあげようとして、それから自分の異変に驚く。
クリフの服から、にょきにょきと針ネズミのトゲが付いた丸い球体が膨らんできたのだ。
多分腹に刺さったのだろうトゲに、クリフが悲鳴をあげた。
その隙に手首を叩いて銃を落とす。
ついでに雲雀はクリフの両腕を掴んで、後部座席に引きずり込んだ。
はい、終わり。

「最初からロールを仕込んでいたの、気付いてなかった?」

「お前が運転席の窓を開けた時に、一匹流し込んでやったんだ」

「…くそっ」

俺はスーツケースを片手に、雲雀はクリフを掴んでそれぞれ車を降りる。
周りはすでに人相の悪い連中に包囲されていた。

「………ワーコワ」

「もういいよ」

「あ、そう?んじゃお願い雲雀。俺接近戦苦手だし」

「よく言う。この僕を護衛のようにアゴで使うなんて、生意気になったね」

「良いじゃねぇか。俺を守って無事に帰ったらご褒美やるぜ」

「………へぇ」

「そうだな…お医者さんごっこなんてどうだ?」

まさに四面楚歌な状態で、俺達は平然と話し続ける。
数としては優位なはずである敵の困惑した表情が楽しい。
どいつもあんまり強くなさそうだし、数が多いだけならマジで雲雀に全部押し付けるかな。

「………やだ。メイドにしてよ」

「お前も好きだよなそういうの」

「隼人が似合うからいけないんだよ…そこ、今想像して鼻の下伸ばしたね。咬み殺す」

目の前の奴が一人、微かに赤い顔をしていた。
それが雲雀の殺気でみるみる青に変わる。
ヒッチハイクした時と同じだ。

「良いじゃんか想像ぐらい。本物はお前にしかあげねぇんだから」

昔は二人っきりの時ですら言えなかった台詞を、人前で軽々吐けるようになったのはいつ頃からだろうか。

「良いわけないでしょ。僕の隼人が汚される

「あのなぁ」

俺のこんな成長を、嬉しくも恥じらいがなくなったと嘆いていた雲雀は、独占欲が強くなったように思う。

「さっきから勝手に話しやがって!!」

一人が我慢出来ず俺に突進してきた。
手に持つナイフをがむしゃらに振りながら突進する様は、無謀としか言えない。
お先にフレイムアローでもかまそうかと思って匣を持つが、横からクリフを投げつけた雲雀が、そのままトンファーで勢いよくクリフごと殴り飛ばした。

「帰ったら、僕だけのメイドだから」

クリフと大柄な男が地上に落ちる。
その光景と雲雀の台詞のミスマッチ感は爆笑ものだ。
どうやら本当に守ってくれるらしい。
だが、その言葉に反応するように、俺の腰にあるシィステーマC.A.Iの匣が小さく揺れた。
多分瓜が出たがっているのだろう。

「ひばりー、瓜も戦いてぇってー」

さっきの奴を皮切りに、バタバタと敵を倒していく雲雀に声をかける。

「………構わないよ。僕の方が強いからね」

雲雀はちらりとこっちを向いて、そんな事を言いつつまた一人ひれ伏させた。

「じゃ、瓜出てこい」

俺は車のドアに背中を預けながら、匣にリングの炎を入れる。
中からは瞬時に瓜が飛び出し、続けて数個の匣兵器が腰に巻かれた。

「にょおん!」

「瓜、お前おっきくなりてぇ?」

「にょ!」

肩の上で肯定の鳴き声を出す瓜に、晴れのリングを近付ける。
匣から出した嵐猫の瓜に、リングから晴れの炎を舐めさせる事で、嵐豹に成長させる事が出来るようになったのだ。
毎回漢我流に頼むわけにはいかないと、芝生頭のトレーニングを一緒に行い、晴れの炎を出す訓練をした成果である。
あのボクシング馬鹿の特訓はアホみたいにきつかった…というか、あれが出来るのはまさに芝生頭だけだと思う。
俺がやったのはあれの簡略版に過ぎない。
まぁ、目標は達成したから良いのだが。

「グルル…」

なんて考えている間に、瓜は成長し、大きな尻尾を揺らしてこちらを見ては合図を待っていた。
その頭を撫で、

「頼んだぞ」

そう言ってやる。
そうすれば瓜は嬉しそうな顔をして、雲雀を後ろか攻撃しようとした敵を蹴散らしに行った。
さて、瓜も加勢して、あとどれぐらいで終わるだろうか。
見るのも良いが、ちょっぴり退屈でもある。
最近書類の締め切りも重なってたし、昨日は雲雀と二人でまともに寝れるわけないし。
結構寝てないんだよな。
考えたら急に欠伸がきて、つい手をあてて大きな口を開いてしまった。

その瞬間、もう片手にあったスーツケースを奪い取られた。


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