[携帯モード] [URL送信]

短編
Oh,my SWEET GIRL!
「ただいま。」

…返事がない。

仕事で外に出る前には、確かに僕の部屋にいた。

自分の部屋より集中出来るから、と僕の机の上に散らかされた書類はそのままなのに。

菜月だけがいない。

さてどこへ行ったのか、と思案していると、どこからか漂ってきた香ばしい匂い。

その匂いにつられてキッチンに向かうと、菜月の後ろ姿が見えた。

「菜月。」

『あ、お帰り恭弥!』

近寄って菜月の手元を見る。

そこには、たくさんの調理器具や材料が並んでいた。

『書類ばっか見てたら疲れちゃったからね。気分転換にケーキでも作ってみました。』

菜月が指差す先を見ると、オーブンの中でケーキがこんがりと焼けている。

あの匂いの元はこれだ。

「あとどれくらい掛かるのかい?」

『うーん…スポンジ焼けてから粗熱とらないといけないから…あと30分くらい、かな?』

「ふぅん。」

『ま、気長に待ってて?』

そう言うと、菜月は生クリームを泡立て始めた。

ガシャガシャ、菜月が器具を振るう度に少しずつ生クリームが固まっていく。

「へぇ…。」

『そんな見なくても、面白いモンじゃないでしょ?』

「いや、初めて見たから珍しい。」

『え、そうなんだ!』

そんな会話をしていたら、あっという間に出来上がった生クリーム。

菜月の手際の良さに感服した。

『恭弥も食べるよね?ケーキ。』

「勿論。」

菜月が作った物を僕が食べないはずがない。

『一応甘さ控えめにしてみたんだけど、どうかな?』

そう言うと菜月は、

『はい、味見してみて!』

生クリームを指で掬って、僕の口元に持ってきた。

突然の菜月の行動に、思わずフリーズする。

『…あれ?恭弥って生クリーム苦手だったっけ?』

僕を見上げながら首を傾げる、その仕種の驚異を菜月は解っているのだろうか。

「…いや。」

ぱくり、目の前の指をくわえる。

口いっぱいに甘ったるさが広がった。

生クリームが溶けて、残った菜月の指の感触が、舌にリアルに伝わる。

ちゅぽん、と口から引き抜かれるのが名残惜しかった。

『どお?』

「…甘い…。」

『えー、そんなに砂糖使ってないんだけど…。』

「じゃあ試してみるかい?」

『え?』

ポカンとする菜月の後頭部に手をやり、抱き寄せて口付けた。

しばらく口内を堪能してから解放すると、菜月は放心状態だった。

「甘かった、だろう?」

最後の仕上げに、菜月の唇に付いた生クリームを舐め取ると、菜月はやっと我に返った。

『…ちょ…何、してんの急に…!』

そして、真っ赤になってふるふる震え出す。

そんな純情な反応を示す菜月が、どうしようもなく愛しかった。

思わず抱きしめて、耳元で囁く。

「可愛い。」






君を表すのに、これ以上ぴったりな言葉があるだろうか。



僕がこの言葉を囁くのは、



僕にとって世界にひとりの、甘い甘い、君にだけ。

















〜あとがき〜

設定としては大人雲雀さん。

果たしてこれは甘になってるんでしょうか。

もう知ーらない!

では、ここらへんで。

またどーぞ!

寧音

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!