長編 彼女のコト 商店街で謎の女の子と遭遇してからおよそ30分後。 彼女は今、俺のベッドの上で安らかな寝息を立てている。 獄寺くんはしばらくその寝顔を見詰めていたが、やがて俺に向かい合った。 「十代目、ご迷惑をお掛けして…申し訳ありません。」 俺に頭を下げる獄寺くん。 俺が声を掛けようとしたら、ヤツに先を越されてしまった。 「そんな事はどうでも良い。とにかく俺が知りてーのは、こいつがどこの誰かって事だ。」 騒ぎを聞き付けて俺の部屋に乗り込んで来たリボーンだった。 『お前が言うな!』とツッコんでやりたかったが、そこは堪える。 リボーンだけじゃなく、俺も、そして山本もそれが気になっているからだ。 獄寺くんは頷くと、ゆっくり話し出した。 「こいつの名前は菜月…俺の幼なじみです。」 …バリバリ日本人っぽい名前だ。 でも、イタリアにいた獄寺くんの幼なじみ…? その疑問が多分顔に出たんだろう。 獄寺くんは補足した。 「菜月は純日本人です。ただ、こいつの親父がマフィアの幹部なんで、産まれも育ちもイタリアですが。」 うわ…またそっちの世界の人来たよ…。 「そういえば、カンティナファミリーにっつーのがいたな。こいつは、あの『狩人』の娘だったか…。」 リボーンの言葉に獄寺くんが頷く。 なんかお父さんメチャメチャ強そうだし!! …何で俺の所にはそういう人しか来ないんだろう…? 「菜月と俺は歳が同じで城も近くだったんで、アネキと3人でよく遊んでました…俺達が6歳になってからは2人でしたけど。」 そうか…そういえば、その頃にビアンキの料理を初めて食べたんだっけ。 「でも…俺はやがて城を出ました。それから6年間、連絡さえ取って無かったのに…。何で菜月がここに来たのか、俺も解らないんです。」 獄寺くんはそう言うと、再び菜月の寝顔を見詰めた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |