星の物語-Novel- 対峙、武藤慎也 「さて、どうするかなぁ・・・。」 自分一人で会いに行くとは言ったものの、正直どうするかは迷う。 問い詰める? それもいいだろうけど、今まで嘘をついていた人間だ。そう簡単に真実を、俺の求める答えを言うとは到底思えない。 力づくで聞き出す? それもありかもしれないが、力づくは最後になるだろう。 「やっぱり聞き出すしか、ないよなぁ・・・。」 「結局迷ってるんじゃないの。」 「は?」 声のしたほうを向くと、そこには神崎がいた。 「なんでここにいるんだ?」 「それは、あんたといれば祐に会えるかもしれないからじゃないの。」 「・・・・。生憎だが会わせてやることはできないぞ?」 「どうせ方法とかがわからないんでしょ?別にそこまで期待はしてないわよ。ただ、貴方がいれば祐と話せる可能性はある、ということ。それだけよ。」 「好きにすればいいさ・・・。」 とりあえずオマケがついてしまったが、問題はないだろう。 「会って何を聞くの?」 「とりあえずぶん殴る。」 「・・・話を聞くんじゃないんだね・・・。」 苦笑いしながら言う神崎。 「まぁ・・・なんとかなるだろ。」 「ふーん。なんとかね。とりあえず行きましょ?たってるだけでは問題は解決しないし。」 「あ、あぁ・・。」 こんな奴と早乙女祐は対等に話していたのか。 自分のペースは崩さないわ、気づいたら仕切ってるわ・・・。 どんな女なんだ、こいつは・・・。 そんなことを考えながら歩いてる内に、武藤が事務所を持つ場所へついた。 「ここなの?」 「あぁ。たしかここだ。正直記憶力に自信はないが。」 「・・・・。」 呆れただろうか。 本当のことなんだから仕方ない。 「でも、間違ってはいないようね。」 「ん?」 神崎が見据えているほうを向くと、そこには武藤本人がいた。 「久しぶりだね、加賀。」 「別に会いたいわけじゃあない。あんたには聞きたいことがあるだけだ。」 正直聞きたい事をこいつに聞けるか心配だった。 何事もなかったかのように、以前と同じように接してくる武藤に俺は苛立ちを覚えていた。 「それで、聞きたいことってなにかな?」 「まず俺のことだ。あんたが俺に殺しの方法とかを教えたのか?」 「なんだ、そんなことか。それは全て知っているんだろう?何故今更聞くんだい?」 どうやら真実らしい。 正直言ってこの時点でこいつに聞くことはもうなくなったと言っていいだろう。 「そうか・・・・。ならとりあえず殴らせてもらおうか。」 「理由もなしに君に殴られる筋合いはないんだけどね。」 「理由ならいくらでもつけられるさ。」 言うなり俺は武藤に殴りかかった。 が。 「やれやれ・・・。君はもっと賢い人間だと思っていたけど、思い違いだったみたいだ・・・。 ひらりと身をかわす武藤。 避け際に横から蹴られる。 「ぐっ・・。」 「加賀さん!」 大きく飛ばされた俺に神崎が駆け寄る。 「君は・・・神崎千春、だよね。沈黙の夜、悲劇の少女。」 「・・っ!」 「正直君という存在は邪魔だった。消せたと思ったんだけど、生き残っちゃうとはね。非常に頭を悩ませる要因だよ。」 こいつは何を言ってるんだ? 「あんたが何を考えているかは興味ないわ。罪を犯した者が平然とここにいるのが気に食わない。それだけよ。」 「罪・・・か。罪とは何を指すのか。罪を犯した者を罰する事は罪にはならないのか。生きているだけで罪とされる事もあるんじゃないのか。考えたことはあるかい?」 「・・・興味ないな。だが、最後に一つ聞きたい事がある。」 「ふむ。何かな?」 「あんたは何がしたいんだ?目的はなんだ?」 「私がすることは・・・。この社会を正すことだよ。そのためならどんな犠牲もいとわない。」 「とんだ神様気取りなのね。あんたなんかに社会を変えれるわけないじゃないの。」 今にも飛び出しそうな勢いで神崎が言う。 「待てよ・・神崎。そいつとは俺がケリをつける。」 「ふん。たった一撃で落ちるような人がいうことかしら?あんたは暫く休んでなさい。」 「・・・言いやがって。大体これは俺のもんだ・・・いっ?!」 俺が言い終わる前に神崎は俺の首めがけて手刀をうつ。 「な…なにを…」 そこで俺の意識は途切れた。 [*前へ] [戻る] |