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星の物語-Novel-
踏み入る暗き世界
先日言われた通り、指定の倉庫へと向かった俺はこの世界へ足を踏み入れる事になる。

人一人の為に、もう戻る事は許されない。

「人を殺す事は罪になるのか。はてさて、俺は罪人なのかねぇ…。」

俺は空を見上げ、呟いた
足元には、ところせましと転がる骸の山。

この倉庫でした事は、ある組織を潰せ。という命令に従ったまでのこと。
それがこの世界へ入る条件だった。

意に反する事とはいえ、俺も自分の目的がある為、簡単に殺される訳にはいかない。

無論、相手にした組織も抵抗はした。
が、俺の体は人殺しに慣れているかのように動いていた。

振るうナイフは人の首を簡単に裂き、銃は心の臓を射ぬく。

辺りは瞬く間に血の海になり、また、血しぶきも飛ぶ。

降り注ぐ赤い雨の中、襲いかかってくる組織の人間を返り討ちにしていた。

しかし、慣れているはずの彼等をも簡単に殺していた自分に恐怖を覚えながらも、この上ない快楽を覚えていたのも事実であった。

「終ったのか?加賀とやら。」
「あぁ、あとコイツだけさね。」
俺は地に伏せっている男の頭を踏みながら答える。
「本当に全て殺すとはな。化物か?」
「化物…ねぇ。俺は記憶のないただの人間ですよ。そこんとこよろしく!」
「では、さっさとソイツに止めを刺して我が組織に行くとしようか。」
「あいよ。」
俺は足元の男に銃を向ける。
「ま、まて!金ならいくらでも払う!だから…!」
「や〜よ。悪いねおっさん。死んでやってくんな」
「ま…!」
命ごいなんて、俺には聞こえなかった。
「終りましたよ、だ〜んな。」
「ふん。いいだろう、外へ出ろ。」
「あ、ちょっとタンマ!」
「どうした。」
「外へ出た瞬間銃殺なんてしたらや〜よ?」
そう、こんな殺しが日常茶飯事な裏社会ではきっと裏切りもよくある事だと思ったのだ。
「ほう。読みも深い、か。合格だ。行くとしよう。」
「合格ねぇ…あながち嘘じゃなかったって事かい…」
俺は帽子を直し、男の後についていった。

外には車が止まっていて、言われるがままに俺は乗った。

どれだけ走ったかはわからない。
暫くして、廃ビルに到着した。

「ここがおたくらの本拠地かい?」
「そうだ。中でボスがお待ちだ。」
「そかそか。んじゃま、行きますかね」
俺はとある一室に入った。
「君が加賀君かな?」
奥に座っていた男がこっちへ歩きながら声をかけてきた。
「あぁ、どうも。加賀亮介です」
「緊張、というものを知らないんだね君は。実に自然体なようだ。」
「なはは…すんません…」
「いやいや、実に面白い人物だよ君は。」
「そうっすか?」
「あぁ、実に面白い。」
男は俺の周りを歩きながら淡々と語り始める
「加賀亮介、生後から現在に至るまでの一切の経歴が不明。神崎千春を探す為にこの世界へ入る事を決意。武藤慎也なる人物に接しこの世界に入る。こんなところかな。」
「はは…細かい事まで調べてますねぇ…」
「すまないね。これがしきたり、というか常識なんだ。」
「構わないですよ。俺はアイツが見つかるならそれでいいんです。」
「ふむ。君が私達に協力してくれるのなら、その神崎千春を全力で探そう。どうだい?」
「ん〜…」

実に理にかなった条件だった。
見返りを求めるならば、それ相応のリスクは覚悟しなきゃならない。
「いいっすよ。ただし、適当な事を言ったら即殺します」
「はは…飼い犬に噛まれたくはないね。いいだろう、約束しよう。」
「そりゃどうも。」
「そういえば…帽子をとってはくれないのかな?」
「これは俺のトレードマークなんで。」
「そうか…それは残念だね」
「すんませんね。あ、俺からも聞きたい事があるんすけど…」
「何かな?」
男は椅子に座り、こちらを見据えて答える。
「二つあるすけど…まず一つ目。名前はなんつうんすかね?」
「名前?」
全くの予想外だった質問らしく、男は苦笑いしていた。
「はは…名前を聞いてくるとはね。私は北条時春(ほうじょう ときはる)。好きなように呼ぶといい。」
「北条さんっすか。んじゃ、次の質問。なんでこんな人が少ないんすかね?」
そう、ずっと気になっていた。
『組織』なのに人が全然いないからだ。
「あぁ…そうか、まだ話していなかったね。」
その場の空気が変わったのがわかった
「『夜』に殺られたんだよ。」
「夜?」
「あぁ。夜、というのは呼び名でね。実際はどんな人物かはわかっていないんだ。」
「ふ〜ん。んで、何で夜?」
「正確には『沈黙の夜』。普段よりも静かな夜に殺しを行う事から呼ばれるようになったんだよ。まぁ、出会う事はまずないだろうけど気を付けた方がいいだろう。」
「ふむ…まぁ覚えておきますわ」
「そうしたまえ。今日は自由にするといい。」
「うい〜っす」
俺はその部屋を出て、街を適当にぶらつく事にした。

「な〜んかいまいち実感わかないよなぁ〜」

晴れて裏社会にはいったというのに、全然実感がわかない。
「ま、いっか〜。今日は適当に過ごすかね」

『沈黙の夜』という言葉が頭から離れない

それでも、いつかアイツを見つけられる。
そんな予感がしていた。

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