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星の物語-Novel-
プロローグ-裏社会へと入る男-
あの殺人事件が起こってからはや数年。
この国の警察は全くもって役に立たず、結局犯人は見つからなかった。
そして、事件は迷宮入りとして、捜査は打ち切られた。
後に、警察という機構はなくなり、犯罪が溢れる国へとなっていく。

近年、強盗や殺人等が頻繁に起きるようになる。
これは後で知ったことだが、「裏社会」と呼ばれるものらしい。
今まで表舞台には姿を現さなかったものの、警察機構が解体されたことをいいことに、国を支配しようとでもいわんばかりにやりたい放題やっている。
しかし、もともと裏の世界に生きているものらしく、世界に対する情報量はとてつもないらしい。

『利用できるものはなんでも利用する』
その考えの元に、また一人裏社会へとはいっていく人物がいた。

全身を黒一色で固め、黒い帽子を被り、黒いコートをなびかせる。
男の名は加賀 亮介(かが りょうすけ)。
裏社会へとはいる理由は、人探しのため。
今までの経歴は一切不明。
謎に包まれた人物である。
「さて、この辺でいいはずなんだけどなぁ。」
コイツは…俺の事をまったくもって相手にしていない。
「おい加賀。少しは俺の存在にきづかんか?」
「誰だっけあんた?最近物忘れ激しくてねぇ。自己紹介からよろしく。」
「…。貴様…。いっぺん死ぬか?」
「やーね。男に殺される趣味なんてもってませーんよ。」
「…。死ね。今すぐ死ね。」
「わー。こわーい。」
加賀め。仕方なく裏社会へ入る方法を探してやったこの「恩人」相手にこれはないだろう。
せっかくあの事件から現在に至るまでのおおまかな流れを教えてやったというのに。
「んで?いい加減向こうもきてもいいんじゃないの?もしかしてだまされたんとちゃうの?むーちゃん。」
「…むーちゃんはやめろって言っただろ。」
「むーむーむーちゃん。顔もむっとしてるー。」
「コロス!!」
「そう怒りなさんなって。暇なんだからしゃあないでしょ。」
「というか物忘れ激しい割にはちゃんと俺の名前覚えてるじゃないか。えぇ?」
「あ。」
加賀はしまった。と言わんばかりの顔をしていた。
「…。思ったんだが。おまえ、時計ずれてるぞ?」
「え?」
「俺の時計とお前の時計、時間が5時間もずれてるが。」
「うっそーん!」
「…。無駄な時間を過ごしたな。今すぐ楽にしてやる。」
「たんまたんま!飯奢るから許してー。」
「…。」
コイツはまじめなのかふざけてるのか、いまいちわかりにくい。
少なくとも、俺に頼んできたときは真面目だったのだろう。
断ればすぐにでも殺す。そんな感じだった。
「んじゃまぁ、俺はここで待つわ。あんがとな、むー。」
「人が嫌がる事をして楽しいか?加賀。」
「まーったく。」
「そうか。」
「ま、冗談だよ、武藤さん。感謝してる。」
「ん。」
申し遅れました。俺の名は武藤 慎也(むとう しんや)。
色々とまぁ、やってるわけだが…基本的には裏社会への入り方、とかデータハッキングとかで生計をたててる。
「武藤さんよ。俺はここで一人待つから、あんたは帰っていいぜ?」
「ん。そうか。じゃあ帰って寝る。」
「さんきゅーね。あんたにはほんと感謝してるよ。またいつかね。」
「ん。あぁ。」
裏路地での会話を終え、加賀と別れた俺はふと気になった。
奴の裏社会へ入る理由。「人探し」についてだ。
「おい加賀。人探しって…。」
俺は振り返り、奴に聞こうとした。
が、そこに加賀の姿はなかった。
「…。どこいったんだ?」
裏路地の出口は俺が立っているここしかない。
だが奴の姿はない。
「やっぱり謎な奴だなぁ。…少し調べてみますか。」
俺はさっさとそこを離れ、自宅へと戻った。

まさか、加賀の正体をすぐに知ってしまうとは、この時はまだ、知るよしもなかった。

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あきゅろす。
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