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星の物語-Novel-
File No.7 追憶と推測
啓二の死からもうすぐ一週間になる。

警察は事故と事件、そして自殺の線で調べてるらしいけど、あいつは自殺なんてしないし、事故なんて起きる訳はない。

結局あの時の電話の事を話さず仕舞いで捜査は難航していた。

「どうすればいいんだろうなぁ…」
俺はベッドに横たわり、ただただ天井を見つめていた。
「春奈さん…俺はどうすればいい…?啓二…俺は…お前を助ける事は出来たのか…?」

返事は返ってくる事はなく、時間だけが無情にも過ぎていった。

「…ん…?あれ?」
小鳥達のさえずり、窓から差し込む光で目が覚めた。
「俺…寝てたのか…。…でも、あれは夢じゃないんだよな…」
自分に言い聞かせるようにつぶやきながら、おもむろにテレビをつける。
『今朝のニュースをお伝えします。明朝6時頃、XX高等学校にて新たな遺体が発見されました。』
「…は?」
俺は一瞬耳を疑った。
「…ありえねぇ…」
『遺体が発見された場所は校庭に男子高校生、ゴミ焼却所付近に女子高校生が発見されており…』
「……結構ヤバいな……」
『尚、今回の遺体には切傷等があり、殺人の方向で捜査をするということです』
「殺人…か。犯人は…やっぱり科学教師の…アイツか…?」
一人推測を始めた俺は机の引き出しをあさった。
「春奈さん…俺が必ず仇を討つから…」
一枚の写真に向かい、俺は呟いた。
その時
トゥルルルル…
「ん?…電話か…」
正直電話に出るのは面倒だった。
だけど、アイツの頭が必要になるかもしれない…
「もしもし?」
「神崎ですけど…早乙女くん?」
「あぁ」
案の定、電話は神崎からだった。
「事件…また起きたね」
「そうだな」
「…変な行動起こさないでよ?」
「はは…どうだかな」
「こっちは真面目に話てるのよ?!真面目に答えてよ!」
「…俺は真面目に答えてるんだ。」
「…」
少し冷たく言い過ぎたか…神崎が黙ってしまった
「なぁ、神崎…」
「なによ」
「飯…食いに行かないか?」
「なに?こんな時にデートのお誘い?あんた正気?」
「あぁ。」
「な…」
予想外の答えだったのか神崎は電話ごしでもわかるくらいに動揺していた。
「…わかったわ。何処に行けばいいの?」
「そうだな…駅前の喫茶店に13時で。」
「それじゃ…また後でね」
「あぁ、また後で」
そこで電話は終わった
「…あ」
俺はふと考えた。
「あいつ…何の用だったんだ?」
一方的に話したからあいつの言いたい事がよくわからなかった
「…後で聞くか。」

そして、待ち合わせの時間。
「…おせぇな…」
少し早めに来たせいで少しの遅れが長く感じた。
「お待たせ。」
「…似合ってるな…」
「え?いきなり何よ」
「…」
しまった…つい思ってた事を口に出しちまった…
「いや…あの…な?」
「さっさと行きましょ?何か話があるんでしょ?」
「え?あ、あぁ…」
さすが神崎…よくわかってる

「いらっしゃいませ〜」
「二人で。出来れば奥のほうの席お願いします」
「かしこまりました。」
店員に案内され、俺と神崎は一番奥の席に座った
「とりあえずコーヒーお願いします。ブラックで。」
「あ、私もコーヒーで。…ちょっと甘めで。」
「かしこまりました。」
…こいつ…甘いのが好きなのか…
「で?話があるんでしょ?」
「まぁま、コーヒーがきてからでいいだろ?」
「わかったわよ」
程なくしてコーヒーがきた。
店員が下がったのを確認して、俺は切り出した。
「…今回の学校で起きてる事件なんだが…」
「うん」
「科学教師の…小早川って知ってるか?」
「あのひょろひょろした変態っぽい人よね」
「そうそう」
…まだ編入したばかりなのにコイツは…
「で、ソイツが関係してるんじゃないかと思うんだ。」
「なんでそう思うの?何か根拠でも?」
「あぁ…思い当たる事は…ある!」
語尾を少し強くして言い放つ。
「…ホントなの?」
「アイツは昔…人を殺してるんだ。」
「え…」
「世間では自殺とされたその事件は、実際は小早川のせいで起きた事件なんだ。」
「なんで警察は自殺で終らせたの?」
「アイツの親父が権力をもった奴なんだよ。それもかなり上の方のお偉いさんらしい。」
「それで事件を揉み消した…と?」
「あぁ。被害者の名前は…春奈。早乙女春奈って言うんだ。」
俺は少しうつむいていた。
「…早乙女…春奈…。春奈先輩…?」
「知ってるのか?姉さんを…」
「えぇ。私のいた学校出身なの。生徒会長務めてたって。」
「そうか…春奈さん…いや、姉さんは小早川に目をつけられて…」
「どうなったの?」
「監禁されたんだ。」
「…!」
「どういう事をされたかなんて容易に想像出来るだろ?それで死ぬ前に電話があったんだ」
「…な…なんて…?」
「私は汚れてしまった。このまま生きる事なんて出来ない。さよなら…そして…」
「…そして?」
「幸せになってね、ってな…」
「…」
「今回もアイツが絡んでる気がしてしょうがないんだ。」
「確かにね…絡んでいてもおかしくはないわね」
「あぁ。それで、だ。本題はここからなんだ」
「…うん」
「俺はアイツにとられた物を奪い返す為に…アイツの近辺を探るつもりなんだ」
「?!何考えてるのよ!」
神崎が叫んだから周りの客の視線が集まってしまった
「叫ぶなよ。周りに迷惑だろ」
「…。それで?」
「お前に頼みがある。」
「もしもの時は、とか言ったら私は全力で貴方を止めるわよ?」
…さすが…わかっていたみたいだ…。
「…恐らくアイツはまた殺しをする…多分標的は…千春。お前だ」
「え?」
名前で呼ばれた事と思いもよらない事に動揺する神崎
「小早川は標的を捕らえるまでは何かしらするんだ。…今回の事件は少し不可解だけどな。共犯でもいるんだろう」
「…それで…?私にどうしろっていうの?」
「少しでもおかしい事があったら教えてほしいんだ。それだけ。」
「…わかったわ。」
「ありがとう。」
これで準備は整った。
「じゃ、出るか。」
「…ケーキ」
「ん?」
「ケーキ食べたいな…」
「…」
上目づかいとか卑怯だろ…
「わかったわかった。」
「やった♪」
「…はぁ。」
なんだかな、と思いつつも俺もケーキを頼んだ。
「ん〜…デ〜リシャス♪」
「はは…。」
凄い幸せそうな神崎を見ながら…俺は小早川に対する思いを決めた。

『何があってもアイツを地獄へ落とす』、と。

そして一日は終わった。

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あきゅろす。
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