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星の物語-Novel-
絶望への階段
ジェイドの死がファイゼル達に知らされたのは数日後の事
アイリスをはじめ、皆悲しみにひたる毎日であった。

しかしファイゼルには悲しみにひたる余裕がなかった。
ジェイドが任務に就いた日からイングリッドと連絡がとれなくなったのだ
「…まだ通じないか…どこへ行ったんだアイツは…」
「兄さんは…あの人が好きなの?」
部屋の扉越しにシャーロットが話しかけてきた
「いつからそこにいたんだ?」
「さっき…何か最近悩んでるみたいだから入りずらくて…」
「そうか…入っても構わないよ」
「ううん、このままでいい…泣き顔見られたくないもの…」
「そうか…。…シャーロット。私の頼み、聞いてくれるか?」
「私の質問の答えを言ったら聞いてあげる。」
「…ずるい奴だな。…アイツが好きかどうか、ってやつか?」
「…うん」
「そうだな…私はイングリッドが好きだよ。」
「そうなんだ…」
「どうしてそんな事聞いたんだ?」
「ちょっとね…やな夢見ちゃったから…。ってそんな事はいいよね!それで、頼みって?」
「おかしな奴だな…。まぁいいか。頼みというのはな…」
言いながらファイゼルは部屋の扉を開ける。
「母さん達に伝えてほしい。出掛ける時はくれぐれも気を付けてほしい、と。」
「気をつけるのは当然じゃない?」
「命を狙われる可能性がある、という事だ」
「そうなの?…わかった、伝えておくね。夕飯はどうするの?」
「いや、少しやる事があるから、適当にすませるよ」
「そう…無理しないでね?ノイアが凄く心配してるんだから…」
「あぁ…。では頼んだぞ?」
「うん。」
そしてファイゼルはまた部屋の奥へと消えていった



-数日後-
タクトから連絡を受けるファイゼル
「こんな時に…なんなんだ…」
惑星モトゥブの一角…砂漠に囲まれた人の気配もしない場所…。
「アイツめ…何故こんなとこに…」
少し歩くと岩場に佇む人影が見えた。
「…。おいタクト…」
「…」
話かけるがタクトは返事をしない
「こんな所で何の用事なんだ?」
「…お前の…」
「…何?」
「お前の父の前で…」
言いながらタクトはファイゼルの方へ振り返る
「…!その目は…」
「お前の父の前で…お前を試すんだよ。この目は自らへの戒めだ…」
「試す…だと?」
「あぁそうさ!お前は…貴様は何をしていたんだ!」
「…っ!?」
豹変したタクトを見て動揺する
「貴様は自分の悩みに明け暮れあの人の様子が違う事に気付かなかった!」
「…!」
「…口で語るのも無意味だ。剣をとれファイゼル」
そう言いながらタクトは剣を取り出す
「お前と戦う意味はなんだ?私は理由もなしに友と戦うつもりは…」
「軟弱なる者に聞く口はない!」
そう言いながらタクトは一気に詰め寄る。
「ち…っ!」
斬り上げを間一髪で受け止める。
「本気か…タクト…」
「貴様は父の墓前で死ぬんだよ!死にたくなければ本気でこい!」
タクトの猛攻は止まる事はなかった
「修羅の目を使ってまで本気なら…仕方ないな」
「やっとやる気になったか?」
「仕方ないだろう…?私はまだ死ぬ訳にはいかないんだ…」
剣を持ち変えるファイゼル。
フォトンを使用する剣ではなく、実剣である
「まだ本気ではないだろう!?闇を使ってみろ!」
「…何を馬鹿な」
「イングリッドから聞いたぞ?貴様は闇の力を持つ人間だとな。それ故に…」
「…黙れタクト。デタラメを言っても私には…」
「貴様は何も知らないんだ!あの女が何なのか!」
「…っ!」
「な…」
一瞬の間にタクトの背後にまわり、首筋に刃をつきつける。
「…少しは落ち着いたか?」
タクトの目が元に戻る「…あぁ」
「お前らしくもない…どうしたんだ?」
「何でもない…何でも…」
うつむきながら廃虚に目を向けるタクト
「あれが父さんの最後の任務地なのか…」
「あぁ…」
「…私はお前の言う通り、自分の悩みだけに気をとられていた…」
「…私は見ていられなかったんだ。お前の妹達の泣く姿をな…」
「…私は駄目な人間だ…。…そういえばさっきイングリッドと言っていたな?」
「あぁ…アイツが此所を教えてくれたんだ。」
「アイツが…?」
「あぁ…ジェイドさんに聞いてないか?イングリッドについて…」
「気を付けろ…とだけ言われたが…」
「そうか…代わりに話した方がよさそうだな」


……


「何を根拠に…そんな…」
「事実なんだ。恐らくイングリッドという名も偽名だろう」
「…そんな…」
「落ち込む暇はないぞ?シャーロット達が危ないかもしれん」
「あぁ…戻ろうか…」
誰が見てもわかる落ち込んだ目をしてファイゼル達はコロニーへ帰還していった。

予想していた悪夢が待っているとも知らずに…

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あきゅろす。
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