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星の物語-Novel-
武藤慎也、その正体
神崎の家で電話した先。
それは武藤慎也だった。

俺がこの社会に入れたのも彼のおかげであるし、なにより情報通ということが大きい。
何かわかるかもしれない。
しかし、何度かけても電話に出る気配はない。

「おかしいな。なんででねえんだ・・・?」

「ちょっと。まだ電話かけてるの?」

神崎が降りてきた。

「ん?あぁ、でねえんだよ、これが。」
「その人、裏社会へのつながりをもってたとしたらもう・・・。」
「どうだかね。逆に手駒にほしいと思われるだろうけど。」
「その人の名前は?」
「ん?武藤慎也って言うんだが・・。」
その名前を聞いた瞬間、神崎の顔が変わる。
「武藤慎也?!なんで貴方がアイツと知り合いな訳?!だいたいなんでアイツが生きてるのよ?!」
「お・・おい。落ち着けって。アイツがなんかしたのか?」
「知らないの?!アイツは自分の快楽の為だけに殺人を行った奴なのよ?!刑務所にはいってたはずなのに・・・。」
どうやら神埼は完璧に記憶を取り戻しているらしい。
「それって、マジ?」
『あぁ、本当だよ、加賀。』
「な・・?!」
「どうしたの?加賀さん。」
いつの間にか電話は繋がっていた。

そして、肯定の答えがくる。
このとき話していたことは、武藤慎也がどのような人物なのか、について。
本人から答えがかえってくる、ということは、真実ということ。
「おい、あんたまさか俺を利用したとかいうんじゃねえだろうな?!」
『利用?何を言ってるんだい、加賀。いや、記憶のない名無しの人形。』
「どう・・・どういうことだ。」
俺が聞くと武藤は淡々と語り始めた。
『加賀、いいかい?君は俺と同じ刑務所にいたんだ。それで、俺たちは協力して脱獄しようとしてた。でもな、脱獄中にお前は見つかり、海に飛び込んだんだ。そしてそのショックで記憶を失い、名前すらもわからんくなった。そこで、この俺が全て教え込んだのさ。お前の殺人に関しての能力は凄かったからね。』
「な・・・。」
俺は言葉を失った。
今まで使っていた名前。
これがうそであるということ・・・。
記憶全てがうそだということ・・・。
全て武藤の仕組んだ事だということ・・・。
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「お、落ち着いてよ加賀さん!」
『じゃあな、人形。もしもう一度真実が聞きたくなったのなら、北条のいる場所へ来い。いつでもはなしてやる。』
武藤はそう言った後、電話を切った。
「全て・・・嘘、か。そうか、全て嘘なのか・・・。」
「ちょっと!急にどうしたのよ!!」

ただ呆然と立ちすくむ俺、それを揺さぶる神埼。
そして、同じ音を発し続ける受話器。

本当の自分は、一体何者なのか。
今はただ、それだけが知りたい・・・。

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