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音のない世界で(パラレル)
…[2]

▼勇翔side


 売春宿なんて興味ねーのに友人に誘われるまま来てしまった。誘った本人はさっさと目当ての女のところに行ってしまうし。
 俺は軋む廊下を歩いていた。こんな小汚いところすぐに潰れるんじゃないかと思ったが、客は案外入っているようで。歩いて行く先で行為中の声が聴こえていた。

「……」

 けど、どうにも気になる。
 男の声に重なる声が女じゃない?


 俺はここがよくある売春宿だとばかり思っていた。



「一人で帰ろっかな」


 友人を置き去りにして行こうかなと
 方向転換したとき、やたら目を奪う子供が、俯いて泣いているのを見てしまった。

 なんでこんなに目が離せないんだと不思議で。思うよりも素直に足はその子の元へと向かって行く。


 近くまで寄ると、それは捨て犬か捨て猫か、あまりに頼りない生き物に見えて
 俺は戸惑った。

 こんな危うい存在がこの場所に何の用があって?

「こんばんわ?」


 気になることがありすぎて、声をかけていた。

 俯いていた顔が上げられて
 涙でぐしゃぐしゃになった顔を見たとき
 俺の心臓は鷲掴みにされたみたいになって、思わず……手が。

 小さく震えている体を抱きしめそうになって、我に返った。


「ぁ……ぅ……う、……ぐすっ……」

「どう……した?」

「ぅ、う、」


 首を振るだけで何も言わない。まさかここで働いてるんじゃないよな、けどこの子、男?……かどうか判別し難い顔をしている。

 可愛い、顔してる。
 可愛くもあり、綺麗、で。


 思わず手が出そうになるくらいには。

 何で泣いているのか、どこから来たのか質問してもまともな言葉が返ってこなかったから、おいで、と手を繋いでみたら素直に握り返してきた。


「とりあえず、こっち。俺、ほんとは帰ろうかと思ったんだけど。……ちょっと付き合って」

 どう見ても客ではないだろうし。
 もし、ここで働いてるんだったら
 何でって思ったから。




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