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音のない世界で(パラレル)
…[1]

▼鈴side


 住む家も、家族も亡くした日。


 何もなくてどうしていいか分からなくて
 ただひたすら歩いていた。

 知らない人に声をかけられた。
 行く宛もないから付いて行った。
 大きな屋根の家に着いたら、今日からここが僕の家なのだと言われた。


 今日からここが僕の家。

 だけどそれは何もせずにご飯が食べられるわけじゃなかった。

 僕は朝から晩まで働くことになった。

 自分の身体を売って、人に買ってもらい
 満足させることが、僕の仕事になった。


 何も分からないことだらけ……。
 知らない人ばかり。
 何もない僕が生きていくには人の役に立つことをしなくちゃ。


 だから頑張ろうと思ったんだけど。


「ほくは、耳が、ひこえません」

「ああ? 耳が何だって? おまえ声が聴き取り辛いんだよ」


 初めて僕を買った人は、最初から怒っていた。それは僕が耳が聴こえないから。ここの偉い人は、そのことを伝えていなかった。

 僕は口の動きを見れば、読み取れる。

 けど今みたいに、怒っている人や早口な人の言葉は分からない。


 だから……悲しくて
 黙り込んだ。僕の悪い癖。


 こうしたら人はもっと怒るのに。



「なんだ、何してる?」

「おこらへ……」

「あん? 勝手に抜け出してきたのか。今日から客取るって教えたな? ちんぽ奉仕して跨って腰振りゃいいんだ。そんな簡単なことできんだろ」

「んーんー、……」

「戻れ! ツンボ!」


 つんぼは嫌だからって
 代わりの子を呼んで来いって言われたから戻ってきたのにな……。

 戻ってもきっと怒られる。
 戻らなきゃもっと怒られる。


 僕はどこに行けばいいの?



▲鈴side end


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あきゅろす。
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