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音のない世界で(本編)
…[2]


▼鈴side




 おなかすいたなぁ……。

 どれくらい歩いたのかな。

 こうやって考えている間も歩き続けている。


 今まで一人きりでこんなに遠くまで来たことがないから不安。


 まわりを見ても知らない風景。


 ここ、どこなんだろ……?

 どこまで行こう……。


 僕は、どうしたらいいんだろう。

 これからどうやって生きていけばいいのかな……。


 何も分からない。



 夕やけ空が、赤くて、さっき見た僕の家みたい。

 きれい……。

 そして前を向いたら、公園が見えた。


 あそこに向かってもう少し歩いてみて、
 公園についたら休もう。











 公園について、ベンチに座った。


 わんこといっしょに人がいる。
 このかっこなのは僕だけみたい。



 つかれた……。

 家、どうなっただろう。
 みんな燃えちゃったかな。
 みんな死んじゃったかな?


 僕はほんとうにひとりぼっちになっちゃったんだ。たぶん。

 学校のかばんをベンチにおいて、服の上からうでをなでた。ここには、養母さんと養父さんから受けたきずが残っている。

 これがなくなるまでは、ひとりじゃない気がした。





 僕はベンチに座って、ただじかんがすぎていくのを感じていた。夕やけ空が、暗くなっていくのをながめて、体にあたる風がつめたくなっていくのを。







「こんな時間にひとりで何してるの?」


 ユサユサ……


「……?」
「こんなとこで寝てたら風邪引くよ?」


 体がゆれて、目がさめたら男の人がいた。
 知らないうちに寝ちゃってたんだ。


「体冷えてるじゃん。家出でもしたの?君、学生でしょ」


 この人だれ……?


「行くとこないなら俺んちくる?」


 ??

 あかり街灯のことで、うっすら見える男の人のくちを必死でよもうとした。この人の声が届かない僕は、くちの動きが頼りだからだ。

 でも暗くて分からない。


「こんなとこでひとりでいたら危ないよ。行こっ」
「っ??」

 手をにぎられてひっぱられて、起こされる。
 びっくりして起き上がるときに、男の人にしがみついてしまった。


「……なんか君ふわふわしてるね。手冷たいよ」
「……ぁ……ゃ……さわ、な……て」


 手をにぎにぎされて、こわい……。


「可愛いね。俺んち行こ?」


 男の人は僕をつれて歩き出す。
 ついて行っていいのかな。
 何で。どこ行くの。そう言えたらいいんだけど。


 僕は耳がきこえないし、しゃべることもうまくできない。

 だからだまって……歩いた。






2017,4,14
2018,5,22…改訂
2018,9,22…改訂


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あきゅろす。
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