▼鈴side
家に帰ると、僕の家は燃えていた。
どうしてかは分からなかった。
たくさんの人が、僕の家に、燃えている家に集まっていた。
こんなのは、たぶん、テレビでしか見たことがない。火がこんなに高くなるんだと、ぼんやりみていた。
僕と関わる人たちは、みんな不幸になるんだなって、思った。
僕を産んでくれた母さん。
りこんしても僕のためにいっしょうけんめいに働いてくれた母さん。
母さんはとつぜん僕の前からいなくなって、新しい母さんになった人はたぶん火の中にいると思う。
僕をいじめていた父さんといっしょに。
もし二人ともこの中にいるのなら、
さようなら……。
どうか、天国にいけますように。
ふり返らずに行くんだ。だってもう、帰るところがないから……。
僕はここから逃げ出したかった。だからこれからさがすんだ。新しい僕のいばしょを。
まっかな家に背中を向けて、ひたすら歩いた。
歩き続けていた。
2017,4,14
2018,5,22…改訂
2018,9,22…改訂