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音のない世界で(本編)
…[8]


▼鈴side



 目が覚めて、知らない部屋に寝かされていることに気がついた。


 さっきまで僕は……。

 頭がぐるぐるまわってきもちわるい……。


 ふとんをひっぱって、きもちわるいのをがまんした。

 このふとんは誰がかけてくれたんだろうって、少しずつまわりのことが気になり始めて、ゆっくりと体を起こすことにした。


 誰もいないのかな……。

 ここって……。


 さっきまでのことを思いだそうとすると
 あたたかい何かにつつまれていたことが……まだ体に残っている気がした。



──────……

▲鈴side end

▼勇翔side




 野良猫じゃあるまいし。

 そう零したのは少し前。

 と言ってもあれからバタバタとしていてだいぶ時間が経ったように思う。


 俺は夜更けにコンビニへと向かい、散歩がてらに近くの河原で紙パックのジュースを飲んでいた。

 そこで野良猫……人間を拾った。
 そいつは思うに自殺志願者で、俺の目の前で死のうとしたもんだから、気が動転して服も着たまま……なぜか俺まで水に浸かっていた。


 人命救助なんて初めてして
 人間を拾ったのも生まれて初めてだった。

 当たり前だ。人なんてそう拾うもんじゃねぇし。

 ……野良猫じゃあるまいしは、その捨て人間を負ぶさって家まで持ち帰る道すがらで呟いた言葉だった。




 拾っちまったもんはしょうがない。
 けど冷静になりたかった俺は野良人間を置き去りにして家を出た。


 夜風に当たろうが、近所を徘徊しようが、はっきりしたことは一つだった。


 身元不明の人間を保護してしまった。

 それだけだ。


 今になって怖気付いて、家に帰るのも億劫になっている……自分ちなのに。







 けどよく考えろ……。

 家に自殺志願者を置き去りにしてきたってことは。


「やっべぇ……!」


 もっと早くに気づけよ……。


 俺は全速で走った。






2018,8,9


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あきゅろす。
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