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御幸薫と言う男。〜待ち合わせ〜


今日学校は午前中まで。
なので午後から人見先輩と遊ぶ事に。
待ち合わせは、3時30分(15:30)に○○公園噴水前。
○○公園までは10分ちょい歩けば着く。
時間が余って、待ち遠しい。

時間まで何していようか。
漫画でも読んでいようか。それともアニメでも見ようか。それとも自作漫画の続きでも描こうか。
よし、漫画を描こう。
そうとなれば富永に電話だ。
これは誰にも秘密だけど、俺は幼馴染みの富永と一緒に漫画を描いている。富永がストーリーを、俺が作画を。
これは某ジャンプ漫画に影響されて始めたものだ。

「もしもし?今から少し行っていい?」
『いいとも〜』
「漫画持ってく」
『いいとも〜』
「来週も来てくれるかな?」
『いいとも〜』
「じゃ、お待ちしてます」

○○公園には富永の家から直接行こう。
富永の家は直ぐそこだから出る時間は変わらない。
着替えて、遊び行く準備して、ノートに筆箱も持って…、出発。



「早っ。もう来たんかい」
「今から行くって言った」
「確かに!てかどこまで描けてんの?」
「んー…こんな感じ」

鞄からノートを出して富永に見せる。

「前言った所までできてんじゃん。お前すげー」
「こんな感じでいい?」
「いいよいいよ。漫画みたい」
「漫画だよ。ネームだけど」
「俺ら漫画家になれるんじゃね?」
「…」
「え、なに、照れてんの?」
「っ照れてない!…で、次どうする?」
「んー…最終的に悪魔をチビキャラにしてペット化させたいから、そろそろバトルさせたい所だな。一応これに途中まで書いたから読んでみてよ」
「わかった」

富永のノートには台本みたいにストーリーが書かれている。(本物の台本見たことないからどんなか知らないけど)

話の流れは、突然現れた悪魔に取り付かれた主人公が、悪魔の所為で色々な事をしでかし始める。
この辺までは描いた。
そして主人公は遂に悪魔を払おうと、悪魔に決戦を挑む…
その方法は、叩いて被ってジャンケンポン…のようだ。

「これ…バトルじゃないじゃん。なんか他にないの?」
「バカ言え。ギャグも入れとかねーとダメだろ」
「まあ、そもそもこれギャグ漫画だけど。だからこそ、この場面は格好いいバトルで絞めた方がいい」
「バカか!ここが笑い所なんだよ!ここで本格バトルさせて何がギャグ漫画だ!馬鹿馬鹿しい事を大真面目にする!それがギャグ漫画だろ!」
「………そうだな。なんか、俺もそんな気がしてきた」
「んじゃ、この流れでざっと描いてみて」
「やってみる」

なんかよく分からんが、面白い物が作れる気がしてきた。
富永のストーリーを読み返しながら、かなり雑にネームっぽいものを描き始める。
が、2ページ目で詰まった。
どう描こうか頭を悩ませる。1ページ目からの流れが悪いのかもしれない。やり直そう。


ーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーーー

〜♪〜♪〜
あ、携帯鳴ってる。
鞄の中から携帯を出して、名前を確認しながら通話ボタンに指を…

あ、人見先輩だ。
3時30分に待ち合わせしてるのになんだろ。
…あれ、…今、何時位なんだろ……もしかして…

「いっ、今何時っ!?」
「は?え?ええっと…3時42分だけど?」

やばい。過ぎてた。
とりあえず、この電話には出ないでおこう。
落ち着いてから掛け直すと言うことで。

「携帯、出ないんか?」
「…うん」

言い訳、言い訳を先ず考えよう。
嫌われない言い訳。何かないか。
体調不良…駄目だ。昼寝で寝坊…嫌だ。犬が病気で…駄目だ。
姉に用事を頼まれた…は、どうだ。
今日丁度ねーちゃんいないし、絶対バレないぞ。
でも何を頼まれた事にしよう。
…生理用品!!
前に一度、本当に頼まれて買いに行かされた事があった。
この辺は薬局までちょっと遠いから丁度いい。
携帯は急いでて忘れてた事にしよう。

「ノートとか預かってて。行ってきます」
「お、おう。急だなお前。行ってらっしゃい」

富永の家を出て直ぐ人見先輩に電話をかける。
と同時に小走り。

「あ、人見先輩っ…はぁ…はぁ…遅れてごめんなさいっ…はぁ…はぁ」

わざと息を切らす。

『あとどん位?』
「はぁ…はぁ…直ぐ、ですっ」
『あそ、早く来いよ』

ブツっと切られてしまった。
確実に怒っている。
はぁ…
小走りをやめて、とぼとぼと歩く。
ちょっと小走りしたら疲れた。もう走るのやめよ。今走ってもどうせ人見先輩には分からないんだし。
…あーあ、怒られるかな?許してくれるかな?嫌われてないかな?
なんか会いに行くの恐くなってきた。行くの嫌だな。

○○公園が見えてきた。
公園の入り口に人が一人立っているのが見える。
…げっ!人見先輩だ!
まだこっちに気付いてない。よかった、走ってないの見られてなくて。
気付かれる前に走ろう。
そしてこの姿を見て。急いで走ってくる姿を。
だからどうか怒らないで。許して。嫌わないで。

あ、こっち見た。
…全身から不機嫌オーラが出ている。
怖い。けど、格好いい。
できるだけ申し訳なさそうに人見先輩に駆け寄る。

「はぁ…はぁ…人見先輩っ。…遅れて…はぁ…ごめんなさい。…はぁっはぁ…急な用事で、携帯も忘れてしまってて…ごめんなさいっ」

大袈裟に息を乱しながら、考えてきた言い訳を言う。
怒らないでほしい。嫌わないでほしい。

「先輩を待たすとはいい度胸してるよ、御幸」
「…ご、ごめんなさいっ」
「…キスしたら許してやる」
「え…」
「俺はしてやったろ」
「…はい」

人見先輩は、どういうつもりでそんな事を言うのだろう。
俺は、どうして人見先輩にキスしてしまうのだろう。
ただの先輩なのに…。

「…口にしろとは言わなかったけど?」
「えっ!」
「まぁ、いいけどな」


                     終



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