人見隆明と言う男。〜待ち合わせ〜 12時に○○公園噴水前集合。 で、只今の時刻9:10。 ○○公園までは大体30分もあれば着く。 余裕だ。シャワーでも浴びてくるか。 俺の家はちょっとしたもんで、一階と二階に風呂がある。 俺達子供は二階の風呂へ入る事が多い。 熱めのシャワーを頭から浴びる。 ああー…目ぇ覚めるわー。 「あれ?誰か入ってる?亜弥?紗良?」 真ん中の姉貴の佳奈が脱衣場に入ってきたようだ。 因みに亜弥が長女で、紗良が三女だ。 「どっちでもねー」 「なんだ、隆か」 そのまま出ていったかと思えば、なんのことはない、中にまで入ってきやがった。裸で。 「はぁ…俺が出るまで待てねーのかよ」 「そんな時間ないし」 言っても無駄なことは知ってる。 「てか、胸。押し付けんな。気持ち悪ぃ」 「気持ち悪くない。気持ちー」 「まじキモい」 「生意気な。何回このおっぱいでイかせてあげたと思ってんの」 「だからキモいっつってんのが分かんねーのかよ?」 「そんな事言う悪い子はお姉ちゃんのおっぱい舐めなさい!」 「きしょ。つか時間ねーんじゃなかったのかよ」 「そうなの、お姉ちゃん隆と遊んでる時間なんてないの。シャンプーシャンプー」 女なんて気色の悪い化け物だ。 なんて思っちゃいないけど、軽蔑している。一生かけても解りあえる気がしないし、好きになれる気もしない。 さっさと風呂場を出て、冷蔵庫からミネラルウォーターをくすねて自室へ。 テレビをつけるとメジャーの試合がやっていた。 俺の部屋のテレビのチャンネルは、大抵スポーツチャンネルにしている。 好きなんだ、スポーツ全般。やるのも見るのも。 つっても、おれ自身は運動部に入ってる訳でもないけどな。つか帰宅部。 おっと、今何時だ? 9:30ちょい前か。あと2時間もあんじゃん。 ゆっくり見よ。 ーー ーーーーー ーーーーーーーーー あ〜やっぱイチローはすげーな。 日本の宝だわ。 おっと、今何時だ? 12:25。 ……げっ!既に25分過ぎてんじゃん!やば! 今日楽しみにしてたのに! てか携帯。電話きてなかったのかよ。 チェックしてみれば、着信一件、メール一件。 おい、俺、なんで音消したまんまなんだよ。ざけんな。 ーーーー 遅れるなら先にメールください ーーーー これは怒ってんだよな… まだ待っててくれてんのか? ーーーー わり。直ぐ行くから待ってろ ーーーー 絶対遅れないように余裕もって起きたっつーのに!くそっ! とりあえずなんでもいいから着替えて、ダッシュで行くしかねぇ。 待っててくれよ。 家から駅まで歩いて大体15分。 走るしかねぇ。これ以上待たせられるか。 ノンストップで駅まで走りぬいて、へとへとになりながら改札へ。 そこへタイミングよく電車が止まる音が聞こえるじゃねぇか。 いや、やっぱタイミング微妙。ギリギリ乗り遅れそうだ。やばい。 へとへとだけど猛ダッシュ。 はぁ…はぁ… なんとか乗れた。 ○○駅に着くまで大体10分。 その間ちょっと休憩。 あちぃー。真夏じゃなくてよかった。真夏だったら死んでたな。 そう言えば(待ってろ)ってメールしたけど、返信来てねぇ。 あいつ、怒って帰っちまったか…? せっかく今日楽しみにしてたのに…ちくしょう。 ただ電車に揺られる事しかできない10分が歯痒い。駆けつけたいのに。 やっと○○駅に着いた。 一番に電車を降りて、急いで改札を抜ける。 まださっきのダッシュの疲れが残っているけど、再びダッシュ。 ○○公園は直ぐそこだ。 公園の中に入り、噴水の所へ。 あいつは… いた。ちゃんと待っていた。 少し退屈そうにしながらベンチに座っている。 よかった。 あいつから死角になる所で、散々乱れた呼吸を整える。 汗を拭って、Tシャツの胸元を摘まんでパタパタ。 汗だくになりながら走って来た。なんて格好悪い所は知られたくない。 ふぅ… 深呼吸して完全に息を整える。 さて、行こう。 できるだけ余裕ぶった振る舞いで。 「御幸、わりぃ遅れた」 「あ、人見先輩…」 あれ?割りと怒ってない…? むしろ機嫌良さそうじゃないか? 「…時間。一時間近く遅刻ですよ」 そんなことなかったか。 むすっとした顔しはじめたわ。 「あ〜わりぃ」 「…」 むすっとした顔でそっぽを向いている御幸が可愛くて、頬っぺたにキスをした。 ただの後輩なのに…。 御幸はこんな俺をどう思っただろう。 分からないけど、ただ、驚いた顔をしている。 「飯いくぞ。好きなの頼めよ」 「…はい」 終 [次へ#] [戻る] |