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歩き始めてすぐ、会計様が誰かに電話をかけた。
相手はたぶん生徒会役員の誰かだ。
内容は、提出書類を一部忘れたから代わりに提出してきてほしい。とかそんな感じだ。
それを聞いて僕は少し不安になった。
これを頼まれたのが彼氏だったら、行き違いになって会えないかもしれない。
僕は(どうか彼氏と会えますように)そう祈りながら生徒会室に向かった。


僕の祈りが通じたのか、生徒会室には彼氏と副会長様がいた。
彼氏と久々に会えた。
それだけで僕の心臓は踊って、ドキドキと早鐘を打つ。
彼氏を見つめていると、彼氏はすぐに僕の存在に気が付いて、驚いた風に眉を歪めた。

「おい、どういう事だ。…勇馬、こっちへ来い」
「はぁ?なんでだよ。昇いやらしい事するから嫌だし」

彼氏と会えて嬉しい気持ちが、田中勇馬の所為で瞬時に怒りに変わる。

「しねーから早く来い」
「絶対だからなっ!」

渋々と言った風に彼氏の元へ向かう田中勇馬を、後ろから刺し殺してやりたい。
彼氏もいくら脅されてるからって、久し振りに会った恋人を差し置いてこんな奴を呼ぶなんて酷いよ。

「随分遅いお帰りで、と詰まろうと思ってましたが、…その前に、どうして彼がここに?」

副会長様が会計様に僕の事を聞いているけど、僕の目は田中勇馬を抱き締める彼氏に縫い止められていた。
脅されてるから仕方ないのかもしれないけど、彼氏の態度が悲しくて辛い。
流れそうになる涙を、田中勇馬に対する怒りで打ち消す。

「勇馬苛めとったからに決まっとるやろ」
「へーえ、…彼には、じっくりと話しを聞く必要がありそうですね」

副会長様がそう言ったころ、彼氏が恐い顔をしてこっちへ向かって来た。
どうして怒っているのか分からないけど、僕の所へ来てくれるのは凄く嬉しい。

「会長様…」

目の前まで来た彼氏を見上げると、(えっ?)と思った。
そしてそれを口にする前に頭に衝撃が走って、僕は床にお尻をついていた。
グラグラと揺れる視界で彼氏を見上げる。
どうして殴るの?どうして怒ってるの?

「ちょ、ちょっと昇!?おま、こんな美少女…じゃねーや、こんなチビッ子に何してんだよっ」
「自分を苛めた奴を庇うのか?」
「はあ?苛められてないって。このチビッ子は啓史と一緒に後から来たんだもん」

彼氏が僕を睨む。
僕は殴られた所為で現状を上手く把握出来ずにいる。
頭に浮かぶのは、彼氏に殴られた事に対する疑問だけだ。
ぐらつく視界で彼氏の鋭い瞳を見つめていると、不意にその視線が僕から外れた。
その視線の先には会計様がいる。
彼氏の視線を受けた会計様は、アメリカ人さながらの仕種で肩を上げて手を広げた。

「確かにそうやけど、近くでこっそり覗き見してたんよ彼。彼の仕業やろ」
「ええ。間違いないですね。どうせ指示だけして、自身は高みの見物でもしていたんでしょう。親衛隊のいつものやり口です」
「ええっ!?そうなのか!?」
「吐かせれば分かる事だ」

彼氏の鋭い視線が僕に戻ってきた。

「お前俺の親衛隊長だったな」

僕は頷いた。
今さらどうしてそんな事を聞くんだろう。

「お前が指示を出したな」

今は思考が鈍っているし、グラグラと頭が揺れている。
だけど鈍った頭を働かせて、僕は「違います」と口にした。

「言い逃れが通じる相手かどうか、分からん訳でもないだろう?俺をなめるなよ」

言葉と共に彼氏の足が顔に飛んできた。
加減のないその衝撃に、体が勢いよく横に倒れる。

「わっ!なんっつー事すんだ!やめろ!」

田中勇馬が煩く喚いているが、もう僕には何がなんだか分からない。
この現状も、彼氏が何を考えてるかも、何も分からない。
ただ、頭が朦朧としている。

「ああ、こらあかん。気絶してもうた」
「吐かせてもいないのにやり過ぎでは?」
「これで目が覚めりゃ吐きたくもなってるだろ。勇馬を傷つけたんだ、後でたっぷりと罰してやる。奥の部屋に投げとけ」





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