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小説
初めての…(「黒キ妖ト赤キ華」転生後/オリジナル)


「…今日も何も変わらない、か」


縁側に座って整えられた庭を観ながら私はそう呟くと小さくため息をついた。

別に今の暮らしに文句があるわけではない。
純和風の大きな屋敷に住み、不景気を感じさせない豪華な料理を食べ、学校でも優秀な生徒として先生に扱われている。
おそらく皆が憧れる生活だろう。

だが、私は金や才能なんていらなかった。
他の奴らから見れば贅沢な話だろう。
だが、私はそんなものいらないのだ。


「…憂鬱だな」


庭から地面に視線を移し、今度はわざとらしいくらい大きなため息をついた瞬間―――。


「いっ、……ったぁ!」


近くで若い男の叫び声があがった。
方向からして玄関からしたのだろう。


…出来れば関わりたくないな。


私の代わりに誰か見て来てくれないかとも思ったりしたが、あいにく今この無駄に広い屋敷の中には私独りしかいないの思い出し今日3度目のため息をついた。


「…しょうがない。行くか」









玄関まで来た私は、目の前の様子を見て唖然とした。
目の前には、おそらく今さっき叫び声をあげただろう20歳前後の男がうつ伏せに倒れていたのだが、なぜかその男の頭にはお菓子の箱が文字通りに刺さっていた。
おそらく転けた拍子に手に持っていたお菓子の箱が頭に刺さったのだろう。
普通じゃありえないが。


変な奴が来たものだな。
頭にお菓子の箱が刺さっているのも変だが、まず私の家に来る自体変だ。


「…おい。貴様ここで何してる」


とりあえず話しかけてはみたが、こいつ生きているのか?


「え?あ、…えーと、君この家の人?」


生きていた。
起き上がってもこいつの頭のお菓子の箱は落ちずに刺さっているが…どれだけ深く刺さっているんだろうか?疑問だ。
まぁ、そんなことはどうでもよいか。
さっさと本題に入ろう。

「あぁ、そうだが。貴様、金を返しにきたのか?それとも借りにきたのか?」


「へ?」


目の前の男は言ってる意味がわからないのか間抜けな顔で間抜けな声を出した。


「それ以外でこんな所来ないだろう?ヤクザの家なんかに。」


「ぇ…、ここ…ヤクザの、家?君……ヤクザ?」


どうやら何も知らずに家に来たらしい。


「私は違う、親がそうだがな。とりあえず、迷い込んだなら早く立ち去った方がいい。今は誰もいないが、そのうち若い奴らが帰ってくる」


「……え、あ…あの!これ、どうぞ!」


ヤクザの家だと知ればすぐにでも帰ると思っていたが、こいつは帰るどころか何か突き出してきた。


「お菓子?」


「えーっと俺、今日隣に引っ越してきたんだ。だから、ちょっと挨拶をしようと思って」



突き出してきたものは、こいつの頭に刺さっていたお菓子の箱。だが…普通頭に刺さっていた物を人にあげるか?
まぁ、渡された物を受け取らないわけにはいかないが。


「あ、これからよろしくね!」


「ぇ…?」


今度は私が間抜け面になる番だ。


何を言ってるんだ?こいつは。
私と関わって良いことなんてないはず…。
恐くないのか?私が。


そんな気持ちを知ってか知らずか、男は情けなくヘラっと笑った。
私は男から手元にあるお菓子に視線を移して小さく呟いた。


「…こちらこそよろしく頼む。」


私の顔はいつの間にか微笑んでいた。


久しぶりに笑った気がする…。
だけど、変な話だ。
笑った記憶なんて一つもないのに…久しぶりなんて。

本当に、変な奴だ。
こいつも私も。








「あと、俺と友達になってくれない??年も近いことだし。」

「…お菓子貰ったことだし、特別になってやる。」

「え!?本当!あ、俺の名前は――――…。」













お互い惹かれ会うのは何故だろう。
偶然か、必然か?

        end.

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あきゅろす。
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