ちょっとマズイ人と出会ったかと「幽霊じゃなかった!」と恥ずかしいことを口走るハリスをどついて黙らせ、サークは「あのう……」と下手に出る。
やっと出会えた人である。ここで逃したら朝までさ迷うことになりそうだ。
ずるずると少年を引きずり、通り過ぎようとする彼は「なんだ」と怪訝そうな顔をする。眼光が鋭い。
「ニワトリの105号室って何階かわかる…イエ、わかります?」
いっそう怪訝そうにサークの差し出した紙切れを受け取り、「確か六階だな。なあ?」と頭を垂れたぼさぼさ頭の方の見えるように手を下げた。ぼさ頭はぼそりと呟く。
「……唐揚げ……」
「そりゃテメーが食いたいもんだろうが」
不良風は呆れ顔だ。そしてこちらを向いてにやりと笑う。
「お前ら、肝試しだな?」
「は?」「え?」
肝試し? サークとハリスは思わず顔を見合わせる。
「あれ、違うのか?……って、ああ!」
不良風はぱっと顔を明るくしてサークとハリスの旅行カバンを指差した。夜の階段に声が響き、迷惑になるのではないかとこっちが慌てる。
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