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「悪いね」
全く悪びれてません、という涼しい顔をした南沢は、濡れた髪を手櫛で解かしながら部屋に戻ってきた。
「ボイラー切っといたから」
「あ、ありがと…」
テーブルに煙草の箱を置き、悟史はベッドを背に床のラグに座ったまま固まる。
南沢は近くないが、その隣に勝手に座った。
「マイセン?」
「あ、吸う?」
「ううん、いい」
また会話が途切れる。
全く知らないわけではないが親しくもない、という最高に微妙な二人の沈黙ほど気まずいものはなかった。
まぁ、南沢はそんな素振りは見せないが。
しばらくしてからチラッと視線を上げると、南沢とばっちり目が合ってしまった。
ボッと顔に血が上るのがわかる。
そこではじめて南沢が笑った。
「よくおれのこと、わかったね。けっこう雰囲気変わったかなぁって思うんだけど」
南沢が前髪をよけながら言う。
「変わってないよ。南沢、全然変わらない。中学の時そのまま、時間だけ過ぎたみたいだ」
悟史はそう答えた。
実際、背がいくらか伸びた以外、ほとんど変わっていない気がする。
南沢は立てた膝の上で腕を組み、その上に顎を乗せて笑っていた。
はじめて見る笑顔だった。
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