[携帯モード] [URL送信]
7


「悪いね」


全く悪びれてません、という涼しい顔をした南沢は、濡れた髪を手櫛で解かしながら部屋に戻ってきた。


「ボイラー切っといたから」

「あ、ありがと…」


テーブルに煙草の箱を置き、悟史はベッドを背に床のラグに座ったまま固まる。
南沢は近くないが、その隣に勝手に座った。


「マイセン?」

「あ、吸う?」

「ううん、いい」


また会話が途切れる。

全く知らないわけではないが親しくもない、という最高に微妙な二人の沈黙ほど気まずいものはなかった。
まぁ、南沢はそんな素振りは見せないが。

しばらくしてからチラッと視線を上げると、南沢とばっちり目が合ってしまった。
ボッと顔に血が上るのがわかる。

そこではじめて南沢が笑った。


「よくおれのこと、わかったね。けっこう雰囲気変わったかなぁって思うんだけど」


南沢が前髪をよけながら言う。


「変わってないよ。南沢、全然変わらない。中学の時そのまま、時間だけ過ぎたみたいだ」


悟史はそう答えた。
実際、背がいくらか伸びた以外、ほとんど変わっていない気がする。

南沢は立てた膝の上で腕を組み、その上に顎を乗せて笑っていた。

はじめて見る笑顔だった。




[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!