6
悟史はぷかっと紫煙を吐く。
自分も例に漏れず、南沢には近付かなかった。話しかける勇気もなかったし、それで冷たい目で見られるのも嫌だったからだ。
ただ…そう、もう一つ。
きっと学校中の誰もが知らない、あの南沢の姿を知っていて…それで、話しかけたいけれど、というモヤモヤを抱えたまま2年間を過ごしたような気もする。
「ねぇ」
「ほわっ!?」
いきなり回想から引き戻される。
窓の桟に寄りかかり、あの時より背ばかり伸びたような南沢が、悟史を見ていた。
「な、なに…」
「シャワー借りていい?」
「あ…あぁ、どぞ…」
悟史は避けた南沢の脇を通り過ぎ、台所の隣にある風呂場を開ける。
「お湯…出るから。あ、タオル…これ」
「アリガト」
欠片も笑わない南沢はまったく遠慮せず、悟史の目の前でシャツを脱ぎ出した。
「うぅあっ!」
「は?」
「ああぁっ」
ぶんぶんと頭を降って、怪訝な顔をする南沢と自分とを確立するためのドアを思い切り閉める。
女でもなしに、何をビビってんだ!
しかし叱責する心とは別に、心臓はバクバクと鳴っていた。
「ごゆっくり!!」
叫んで悟史は部屋に逃げ帰った。
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