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画鋲はわかりにくいよう、爪先の方に貼り付けてあったらしい。
朝、教室にいつもと変わらない様子で入ってきた南沢を、一派が取り囲む。

彼らは教室のど真ん中で南沢を押さえつけて、それから上履きと靴下を脱がせた。
南沢の足裏にはくっきりと、画鋲を踏んだとわかる赤い傷があった。


『見ろよ、南沢もマヌケな所があるんだなぁ!』


彼らが南沢の足を踏みつける。
ちょっとやり過ぎ、という嫌な空気が教室を支配していた。

一派が笑っていたその時、両腕を後ろから掴まれ羽交い締めにされていた南沢が、足だけでリーダーの少年の腹を蹴りつけた。

その威力がすごかったのかふいをつかれたからか、リーダーはひっくり返って机をなぎ倒した。
彼は顔をぶつけたのか、鼻血を垂らして激昂する。

南沢は涼しい顔で笑っていた。


『お互い様じゃない?こっちだって怪我してんだ』


プラプラと足を揺らす南沢は、中学生にしては冷めていて、だからそれが同級生には怖かったのかもしれない。

この事件以降、南沢は以前にも増して腫れ物のような扱いを受けるようになった。

目の覚めるような美少年だったが、そういう冷たい面もあって、みんな南沢へは羨望と畏怖の入り混じった感情を持っていただろう。




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