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「マスター。彼、おれのお客さんなんだ。いいよね?」

「もちろん」


マスターが頷く。南沢はにっこり笑った。


「じゃ、こっち。そっちの彼女もどうぞ」

「ごめんなさい。決して冷やかしじゃないのよ、藤井君が一人じゃ不安だって言って…」

「ふふ。藤井らしいな」


南沢はそう言って悟史を見上げて口角を上げた。
ソファの一つに案内される。小さめのメニューが置いてあり、南沢が二人に渡す。


「とりあえずお酒、入れてね。悪いけど彼女も」

「高橋よ。藤井君の会社の同僚です」

「あ、そうなの。おれてっきり藤井の恋人かと」

「そ、そんな人と一緒にこんな店、来ないって!」

「いや、どんな関係だろうと、女連れて来る客はなかなかいないけど?」


高橋と南沢が肩を揺らす。笑われている。
悟史はさっとメニューの裏に隠れた。


「それにしても…びっくりした。すごい美人なのね、ナオさんって。こんな男の人居るんだってくらい。妬けるわ」

「触りますか?」

「遠慮しときます」


高橋はクスッと笑って「私生中。藤井君は?」と隣の悟史の方を見る。悟史が「同じので」と言うと南沢は頷いた。


「マスター。生2とジンロックね」


マスターが頷くのを見ながら高橋が「渋いわねぇ」と笑っている。すぐに出てきたビールを一息で呷ると、空のジョッキをテーブルに置いて南沢を見る。


「こういう制度のお店よね」

「…よくご存知ですね」


南沢はびっくりしたように目を丸くしてコクンッと頷いた。




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