3
「だからこの男所帯でも、働かせてもらえてるのよ。男扱いで構わないって社長に言ってるから」
「はい。実はそこが問題なのではなくてですね…」
悟史の言葉に高橋が物珍しげな視線を向ける。
「えっと…これを…とりあえず」
「なに?…名刺?」
悟史が渡した紙を見て、高橋は眉を顰める。裏表を確認し、じっと眺める。
「………これが?」
「それ、俺の…友人、いや、知り合い?あんまり仲良くはないけど、何ていうか…昔の同級生のなんです」
「はぁ」
名刺を返しながら頷く。
「あの、高橋さんって、二丁目とか行ったことありますか…」
「………あるわね」
「そういうとこで働いてる人って、みんな同性愛者の方なんですか?」
「うーん…みんな、とは限らないかもしれないけど。多いんじゃない?」
「ですよね…って、じゃあもう…一体これは…」
「………あの、何の話なの?」
悟史は顔を上げる。高橋が怪訝な顔をしていた。
「すみません…あの、その同級生に…その名刺もらって。それって来いってことですかね?」
「さぁ…。まぁ、来るなって意味ではないでしょうけど」
「でも同級生、男で。俺、確かにまた会いたい気持ちはあるんだけど、ホモではないからそういう相手は出来ないというか…ていうか何で誘われたんだ?」
「藤井君、考えがまとまらないうちに人に悩みを打ち明けてはダメよ」
高橋の冷静な声がピシャリと場を打った。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!